智子への不信
「ええ、お陰様で亮のアイディアの女性だけの治療院は
マスコミにも取り上げられて大人気よ。
それにランジェリーショップと併設で
治療院をやるアイディアも最高!」
直子の経営する治療院は大手町、新橋、
品川の三店舗、ランジェリーショップとの
併設は新宿、渋谷、池袋の三店舗
で繁盛していた。
「良かった・・・では行きましょうか?」
「売り上げを見てくれた?」
「もちろんです。もう少しスタッフを増やさないと
いけませんね」
「ええ、希望者は多いんだけど研修に時間が
かかるの」
「では研修所を作ります。
候補地は今探しています」
「本当?」
「温泉ですけど・・・」
亮はダイエットホテルの女性客の
フットマッサージの実務を研修と共に
行う予定でいた。
亮と直子が待ち合わせの喫茶へ行くと
智子が入って来た。
「久しぶりですね三人が揃うの」
「ええ」
亮が智子に八ツ橋2つと漬物2つを渡すと
智子が嬉しそうに笑った。
「智子さん、彼が出来たんですってね」
「はい」
智子は直子の質問に嬉しそうに答えた。
「ねえねえ、どんな人?」
「二井物産の商社マン」
「わあ、素敵!よかったね」
直子は智子に変な男性ではなく一流商社の
彼が出来た事を心から喜んで手を握った、
そして亮も同じ意味で喜んでいた。
「ねえどこで知り合ったの?」
直子は女同士、遠慮なく智子を質問攻めにした。
「恵比寿で飲んでいたら声をかけられて・・・」
智子はそう言って亮を恨めしそうな顔で見たが
亮は智子のその意味も分からず話を聞いていた。
「いいなあ私失敗したから」
直子はDUN製薬買収事件が解決した後
お台場のマンションを出て新橋病院の
医師と同棲したことが有ったが1ヶ月ほどで別離した。
「そうだったね・・・」
「どうしても亮と比べちゃって・・・」
智子は直子をなんと言って
慰めていいか解らなかった。
「ねえ、どんな人。写真ある?」
「うん」
智子は嬉しそうに亮と直子に男の写真を見せた。
「うふふ、イケメンじゃない」
「はい、イケメンです」
「でしょう。仕事が石油部門担当なんだって」
「そうですか、じゃあ忙しいですね」
「ええ、今日も首長国連邦に出張しているの」
亮が言うと智子が自慢げに答えた。
「あっ!」
亮は首長国連邦と聞いてバイオ燃料の話を聞いてきた
ラスベガスで知り合ったアサド王子を思い出した。
「ねえ、名前はなんと言うの?」
「鈴木聡、33歳」
「そうだ、智子さん。僕の事を心配して何度も
葉子さんの所に電話してくれたそうですね」
「う、うん。葉子さん亮の情報を一番知っていると思って。
ハワイで怪我したって聞いたけど連絡が取れなかったでしょう」
智子の返事は歯切れが悪かった。
「あはは、すみません。かなり怪我がひどかったので」
「そうなの?」
「ずっと車椅子でした」
心配する直子の質問に亮が答えた。
「無理しちゃダメよ。亮」
直子は智子の手を握って目に涙を浮かべた。
「智子さん、今度彼が帰ってきたら
みんなで食事しませんか?」
「うん、そうしよう。何か無いとみんな集まらないから」
直子は亮の提案が嬉しかった。
「うん、彼に話をしておくわ」
「ちょっと」
亮は立ち上がって森の所に電話をかけた。
「森さん、二井物産の石油部門に
鈴木聡33歳が在職しているか
確認してください」
「誰だ?その男」
「智子さんの彼らしいんですけど・・・」
「なんだ、智子ちゃんの彼を疑っているのか?
それともヤキモチか?」
「いいえ、そういう訳ではないんですけど何か怪しくて
気になるんです」
「分かった、でも恋路を邪魔するなよ。
お前一人で何人ものの女性を独り占めは
できないんだぞ」
「わかっていますよ」
「了解。それから知念はあれから部屋に戻っていない」
「はい、警察が国城の自供で知念を
手配すると思いますので早苗さん
は、今夜限りで戻ってもらってください」
「わかった、部屋を貸してくれた
ジュディには礼を言っておいてくれ」
「わかっています」
亮は席に戻るとなに事も無かったように智子と話した。
「そう言えば芽衣さんへの新薬の投与で
副反応が出なかったのでこのまま
継続使用する事になったわ」
「良かった。あの薬の効果が出れば
芽衣さんの体が良くなってきます」
「双子の兄妹ってそんなに深い愛情なのかしら?」
「ええ、2卵性双生児と外見と性別は
別ですけどDNAが一緒ですからね
深い何かがあるんでしょう」
亮が芽衣に対して過剰に親切にしたのは
国城は必ず亮に恩義を感じ心を開くと思っていたからだった。
「いいなあ、私は弟と1年中
喧嘩しどうしだわ。亮のところは?」
「亮の姉弟はとても仲がいいわよね、
家族が1本に纏めてあるポニーテールみたい」
直子は姉二人の誘拐を、命を掛けて救った亮を思いだし
智子に対して面白い表現をした。
「亮はこれからどんな仕事をするの?」
「ご存知のようにアメリカが行っている
ドライアイスプロジェクトを遂行していく」
「ううん、今何の仕事をしているか聞きたいの。
でも石油話しなら彼と気が合いそうね」
「はい、ぜひ会いましょう」
智子が亮に話し終えると森からメールが送られてきた。
『鈴木聡は石油事業部に在籍していない。
二井物産にいる鈴木聡は定年間近の
おっさん一人だ。海外支社の在籍者は確認中』
『ありがとうございます』
亮は智子が鈴木聡に勤め先を嘘つかれているのが
わかったが、鈴木が決して悪い男ではなく、
智子に見栄を張っただけかもしれなかった。
「今僕がやっている仕事は、
智子さんの知っている薬の開発、
スタジオD、スポーツクラブマッスルカーブ、
証券会社、レコード会社、バイオ燃料かな・・・」
「いつの間にか仕事が増えたのね。
他に始める事業はあるの?」
智子の質問は製薬会社の係長の聞く内容に思えなかった。




