同級生
内村が笑っていると亮が内村の耳元で囁いた。
「先日話した知念さんを警察が窃盗の
容疑で取り調べをすると思います」
「分かった、うちとピーエヌエーとの
やり取りを書類にまとめさせておく」
「はい、まだピーエヌエー本社が
関わっているとは断定していませんけど、
何か有ると困りますからね」
「そうか、わかった」
~~~~~
亮たち七人が四菱化学の待っている応接室の前に来た時
会議室には四菱化学の社長の小倉幸男と四菱銀行平田頭取
部下らしき男二人と栗田、
いかにも役人風の二人が座っていた。
「やあ、内村さん」
内村と亮を見つけた平田が
握手を求め名刺の交換を始めた。
経産省の審議官の名刺を渡され、
次に渡されたのは課長補佐の男だった。
「しばらくです。根岸さん」
「あっ、覚えていましたか?」
根岸が驚いていた。
「確か文IIですよね」
「はい、法学部でしたから」
「知り合いでしたか」
審議官の大和田が話しかけた。
「はい、大学が一緒なので」
「そうでしたか、これからもご指導よろしくお願いします」
大和田の言い方妙に丁寧だった。
そもそも役人は一般人より上と考えていて、
名刺を先に出すことも、頭を下げる事もしない。
「かしこまりました。新しい情報が入りましたら、
真っ先にお伝えします」
亮は先ずマギーを紹介した。
「私の妹で團マーガレット美宝堂で販売の仕事をしています」
どう見ても日本人に見えないマギーを
見てみんな様々な想像をしていた。
「こちらが黒崎祐希ハーバード大学経済学部に
留学中で夏休みを利用して弊社のインターンをしています」
全員がハーバード大学と聞いて目の色が変わった。
その様子を見て内村は先程の会話を思い出し笑っていた。
一恵は名刺交換をして紹介はされなかった。
小倉の部下が資料を全員に配った。
その時亮の目つきが変わった。
「すみません、液体アンモニア発電の研究は
どれくらい進んでいますか?」
「えっ!」
四菱化学の人間が目を見合わせた。
「そ、それは」
「そうですか、四菱工業との兼ね合いが
有りますよね。当社としてはD&Rのバイオ燃料と
液体アンモニアの混合燃料の研究をして
それのガスタービンの開発をしています」
「本当ですか?」
小倉の部下の清水部長が聞きなおした。
「液体アンモニア燃料の発電では
NOX(窒素酸化物)排出量調整の研究をしています」
「D&Rですか・・・」
清水はD&Rをよく知っていた。
「清水君、D&Rとは?」
「はい、植物由来のバイオ燃料を開発してメジャー
の協力でアメリカ全土に販売を始めた会社です」
「はい、D&Rはドライアイスを使った常温発電の
研究、開発もしております。情報交換して
共同開発いかがですか」
亮は微笑んだ。
「團さんのD&Rとの関係は?」
「私はその会社の創業者の一人です。
と言うか役職は・・・」
亮は頭を下げた。
「シニア・マネージング・ディレクター専務です」
一恵が答えた。
「専務!」
小倉が声を上げると一恵が立ち上がり
亮のD&Rの名刺を取り出し亮に渡した。
「すみません、日本ではこの名刺を
使わないものですから」
亮は全員に名刺を渡すと経産省の根岸は
大和田の指示を受けパットで調べ始め
それを大和田に見せた。
「なるほど」
大和田はそう言って亮の顔を見た。
「彼の経歴を調べてくれ」
「私が知っているだけですと、美宝堂の息子さんで
東大薬学部からハーバード大学に
留学MBAを取得しています」
「その5億ドルの資金はアメリカからか・・・」
「そのようですね」
「あれだけの人物が日本では無名とは不思議な話だ」
「そうですね、普通マスコミが話題にするのに」
根岸が首を傾げた。
亮は四菱化学にさまざまな提案をして
持ち帰り検討をする事になった。
「ところで、御社の株式会社プラウ資金状況は」
小倉はD&Rの専務と言えど株式会社プラウを
信用していなかった。
それを聞いた平田が亮の気分を害さないように
「團さん、早速5億ドルの預金ありがとうございます」
「いいえ」
「5億ドル!」
栗田以外の全員が亮の顔を見た。
「いやいや、團さん新規事業用に弊行に
預けてくれたんですよ、あはは」
平田は自慢げに笑った。
「栗田に聞いたんですが、ランド
不動産の社長とお知り合いだそうですね」
平田が口を開いた。
「はい、日本支社設立の件で近々来日の予定です」
「日本支社ですか・・・
その節はぜひご紹介をお願いします」
「分かりました、伝えておきます」
いとも簡単に答える亮に平田は少し苛立った。
「設立にご協力をお願いします」
亮が頭を下げると平田の渋い顔が消えた。
智子と待ち合わせをしていた亮は
挨拶もそこそこに、五島商事を出て行った。
「随分忙しい青年だね。彼は」
小倉は亮の後ろ姿を見ながら内村につぶやいた。
「ええ、寝る間もないくらいに」
「なるほど、若い者は夜遊ぶのに忙しいからね」
亮の事を何も知らない小倉は内村に嫌味を言った。
「あはは」
内村は笑いながら自分の心を落ち着けた。
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丸の内のビル5階の治療院に着いた亮は
受付の女性に声をかけた。
「池田先生いらっしゃいますか?」
「もうすぐ、治療が終わると思います」
直子に任せきりの治療院は亮の顔を知っている者おらず
亮は八ツ橋と漬物を持って待合室で周りを見渡していた。
「亮、久しぶりね」
「この前は三瓶さんの件ありがとうございます。
これお土産です」
直子が治療室から出てくると亮はお土産を渡した。
「ありがとう。美味しそう」
「順調そうですね」




