子供の教育
「はい、もし僕に恨みを持っていたなら
その場で僕を殺しにかかるはずです。
それを車内に入れると言う事は誘拐。
そうなる僕を誘拐して絵理子さんから
身代金を取る可能性があるんです」
「身代金?亮の身代金ならお父様から
取った方がいいんじゃない」
「それが絵理子さんじゃなくちゃダメみたいです」
「やっぱり分からない後で聞かせて」
「はい、ただもう1つ気になる事が・・・
そちらを確かめてから報告します」
亮は五島商事の24階の会議室に案内されると
内村が待っていた。
「お疲れ様、甲山六助とは話がついたか?」
「はい、甲山さんは絵理子さんたちの後見人だったので
絵理子さんに同席してもらいました」
「うんうん、そうなるだろうと思っていた」
「それで黒崎正一郎を蹴落として甲山さんに
社長になってもらう計画を立てたのですが如何ですか?」
「なんだって!」
内村は驚きの声を上げた。
「絵理子さんと祐希さんの持ち株を合わせると
黒崎ホールディングの25%ありますから
甲山さんを推挙すれば可能です。
甲山さんではまずいですか?」
「いいや、親友に社長になってもらう方が
何かと都合がいいから問題ない。
しかし、取締役会をどうコントロールするかが問題だ」
「簡単です。甲山さんに実績を上げてもらえばいいんです。
アラスカドライアイス計画2期工事予定地を
黒崎グループが所有してプロジェクトチームに
参画すれば多くの利権が入ってきます」
「おいおい、もう2期工事の話しか?
どうやってその土地を買うんだ?」
「はい、2期工事の土地はランド不動産がすでに
取得しています。第3期のカナダの土地も」
「おい、この計画は何年続くんだ?」
「3期終了までに15年」
「なるほど、壮大な計画だな」
「それで六助の会社はどれくらい儲かる?」
「そうですね、アラスカの不動産では
60億円ほどプロジェクト関連で100億円
国内不動産関連で200億円、ただ
ドライアイスプロジェクト、ランド不動産との
提携によるグループ全体の信用が高まりますので
株価は20ポイントアップを見込んでいます」
「亮、六助が社長に席を奪い取ったら
色々なビジネス紹介したらどうだ。
もっと売上が上がるはずだ、
あのグループには石油会社、鉄鋼会社もある」
「いいんですか?五島商事の売り上げになりませんよ」
「構わんよ、元々六助の方が私より優秀だった。
ただ運が悪かっただけだ」
「わかりました、直ぐに甲山さんと話をします」
「うんうん」
内村は穏やかの顔で頷いた。
「はい」
「さて、四菱さんが来るぞ」
「はい、16時30分に待ち合わせがあるのでよろしく」
「おいおい、せっかく経産省との
話しができるのにそんなものか?」
「すみません、八ツ橋を渡さなくちゃならないので」
「しょうがないなあ、挨拶だけで後でゆっくりとだな」
内村が話をしていると亮が八ツ橋を内村の前につきだした。
「私にか?」
「はい、この八ツ橋粒あんが美味しいですよ。
理恵さんと食べてください」
「あ、ありがとう」
亮は隣の秘書室の葉子にも八ツ橋を渡してきた。
「亮君、頼むから向こうの前ではもっと
堂々としていてくれないか?アメリカのスタッフなんだから」
「堂々ですか・・・分かりました」
亮は内村に叱られているような気がして落ち込んでいた。
「君は御尊祖父や御父上に帝王学を
学んでいるんだ、わかっているだろう」
「はい、帝王学ってなんでしょう。
あの製紙会社の息子の会長が100億円も
ギャンブルで使ってしまっているんです。
某鉄道会社の会長は株を偽名で持っていたり
帝王学は支配ではありません」
「確かに帝王学と言えば一族支配の為の教育と思われがちだが
あれは間違った教育だ」
「ええ、大きな会社の従業員は社長と直接話すことができません。
それどころか姿すら見る事ができないんです。
だから従業員は会社の意向を感じ取るしかないんです」
「では、社長はどうするべきだ?」
「社長が専務に専務は常務に常務は部長に
意思を伝えていくものだと思います」
「では部下の苦しみを社長はどうやって感じ取る?」
「対話しかありません」
「では嘘をついたら?」
「忠誠心を持った部下を持ちます」
「その忠誠心は会社へか?社長へか?」
「もちろん社長へです」
「今から会社を作っていく人間には人づくりと言う
夢が有って羨ましいよ。うちの会社のように
五万人も従業人がいるとそれが出来なくなっている。
たとえどんなに優秀な人材が居たとしても
出身校で篩に掛けて落としてしまっている」
「きっと僕も採用に落ちたかもしれませんね。担当官と喧嘩して」
「あはは、確かに君のような優秀すぎる人材は嫌われる。
うぶな新入社員はきっと同期の君をリーダーと
崇め奉るだろう。そうなれば組織は崩壊する」
「その為には新卒者採用のスタイルを
変えなければなりませんね。もっとインターシップ
制度(学生の就職のための社内研修制度)を
広げるべきです。どのみち学生はアルバイトを
しているのですから、1年生からだって早すぎる事はありません。
雇用の約束があれば
就職活動の必要がありませんから努力するはずです」
「なるほど」
「例えば今回のショッピングモールも学生の
インターシップを使えば
色々なアイディアが生まれてくると思います。
問題になっている無給は
止めてしっかり給与は払うべきです」
「その通りだ、就職活動での無駄な時間そして
新卒者の就職浪人を
減らすことができる。亮君が受けた教育はどんなものだった?」
「うちの家庭は中学になると毎年元旦にお年玉として
1年分のお小遣いをもらいます。
それを増やしてもよし、12等分してもよし
それは自由です」
「それで」
自分の孫を溺愛している内村はとても気になった。
「うちの姉たちはそれぞれの特技を利用して
長女の美沙江は彫金の商品を美宝堂で委託販売、
次女の千沙子は高校時代には自分のブランドを
立ち上げていました。
二人とも美宝堂のバーゲン品をオークションで
売って儲けていました」
「君は?」
「僕は中学の時父の口座を使って株の
トレーディング、DUN製薬の株を買って
配当を貰っていました。大学の時にはすでに
株の配当で十分小遣いはまかなえましたので
DUN製薬の研究室で思う存分研究ができました。
そして、年末の美宝堂ではお店に立って
ブランド品を売っていました」
「まるでロックフェラー一族の教育だな」




