亮の敵
「田中誠一、森田、一文字大介、山口厳介、
山田組、松川組
国際テロリストのジャック・モーガン、
殺し屋のエリック・ジョナサン、ボビー。そして
メキシコマフィアのエミリオ・ゴメス、
ドミンゴ・フラレス。だいぶ恨みを買っているな。あはは」
自分で呟いて思わず笑ってしまった。
「亮、何を笑っているの?」
絵里子は亮の顔をのぞき込んでいた。
「いいえ何でもありません」
「亮はこれから日本経済を背負って行く男。
危険なことをして無茶しちゃダメよ」
「はい、わかっています」
亮が心配する絵理子に頭を下げると美咲から電話が有った。
「亮、大丈夫?」
「はい、首にスタンガンを当てられただけです」
「今、槇島真司の件で麻実さんから連絡があったんだけど
槇島は出所後「アジアの子供を救う会」と言う
NPOに参加してアフガニスタン、パキスタン、
カンボジア、ミャンマー、ラオスに何度も行っているわ」
「いい事をしているじゃないですか」
「そう思う?」
亮は美咲に言われて日本人がテロリストの教育を
密かに受けて日本で活動している事を思い出した。
「はい、日本人がテロリストの教育を受けて
日本で活動しているとアイザックに聞きました、
槇島にその可能性が有ると?」
「さすがアイザックね。槇島は陸上自衛隊で
レンジャーの訓練を受けているからかなり現実的だわ」
「なるほど、可能性がありますね」
「でも、亮の行動を彼らが知っているという事は
大変なことよ。情報が漏れているか、
誰かがあなたを監視している」
「そうですね、どうして僕が京都に
行った事を知っているんですかね」
「私に聞いたってわからないわよ」
亮は首を伸ばして新幹線の中を見渡した。
そして、自分が京都に行く話をした場所はクラブ蝶と
美咲の家そして市ヶ谷国立病院で大原智子に話しただけだった。
「わかりませーん」
「ふざけていないで、お願い気をつけて」
「はい」
亮はふざけながらある事を思い浮かべて
智子に電話をかけた。
「智子さん、入院費のメールありがとうございました。
お土産の黒八橋いつ渡しますか?」
「いつでも良いわよ」
「15時30分に東京駅に着いて大手町の
五島商事に行きます。その後に直子さんの
所に行きますから、
16時30分に会いませんか?」
「はい」
智子は久しぶりに亮に誘われて嬉しかった。
亮は立ち上がりデッキに出てマギーに電話をかけ
昨夜の事件の話をした。
「亮、私を東京に置いていくからいけないのよ。
もし死んだらどうするの?」
「うん、そこでクラブ蝶のママ
絵理子さんをガードして欲しい」
「ママを?」
「ええ、蓮華、桃華とローテーションを
組んで一時も離れないように」
「ええっ!どうして?」
「とにかく命令だ。15時30分に東京駅に来てくれ」
「了解」
マギーは亮が危険なのに絵理子を護れという事に納得いかなかった。
亮はアイザックを新幹線のデッキに呼び出しロシア語で話した。
「アイザック、テロリストの教育はどこで
行われているか知っているか?」
「アフガニスタンかパキスタンか・・・」
「ミャンマーやラオスは?」
「あの辺りもアフガニスタンと同様、
タイを含めると麻薬三角地帯でとても危険な場所がある。
軍隊の1個中隊でも連れて行かないと命が危ない」
「中隊と言うと200人前後ですよね?」
「ああ、昔は世界の麻薬の90%を作っていたと
言われる時代には
軍隊並みの武器と兵士を持っていた。
そんな所ならマシンガンの撃ち方から
爆弾の取り扱いまで教えてくれる」
「詳しいですね」
「ロシアには隣国アフガニスタンから
国境を越えて来る麻薬の為に
麻薬患者が120万人も居るんだ。そしてそれが
ロシアマフィアの資金源になっている」
「怖いですね・・・」
亮は昔から麻薬の恐ろしさを知ってそれを何とかしたいと
ケシの花の実を成せない遺伝子を持った蝶の
研究をし続けそして、麻薬の主成分であるアヘンアルカロイドや
ジアセチルモルヒネを中和しワクチン化する
薬の研究をしていた。
しかし、命に関わる問題であるためにそれを
知っている者はいなかった。
「亮、正義感を振りかざして麻薬の生産を
止めようとするなよ。殺されるぞ」
アイザックは亮がアメリカの当局と組んで
メキシコマフィアを潰したことを知らなかった。
「わかっていますよ。命が惜しいですからね」
「うん」
アイザックは亮の肩をたたいて笑った。
「今回は亮と一緒に沖縄へは行けなかったがまた来た時行こう」
「わかりました」
亮はそのままデッキに残って重村に電話をかけた。
「助手席に座っていた男が判明しました。
槇島真司35歳元陸上自衛隊。傷害致死罪で
懲役5年の刑を受けています」
「了解しました」
「それから槇島は今大阪南港フェリー乗り場に停車しています」
「本当ですか!?」
「はい」
「直ぐに確認をしてください。それと殺された三人の関係は?」
「はい、三人のうち高田秀夫と朝日悟は地元の
暴走族仲間なんですが 田渕憲一は東京豊島区在住で
警視庁に捜査協力をお願いしています」
「まさか・・・東京R大じゃないでしょうね」
「そうです。東京R大です、私言いましたっけ」
「いいえ、また連絡をします」
亮は重村との電話を切って床をけった。
「そうか、そうだったのか!」
亮は田渕憲一と国城正章が面識であるのではないかと
考え、早く東京に着いて確かめたかった。
15時30分に東京駅に着く寸前に亮はデッキに出て
ドアの前に立ってドアが開くのを持っていた。
ドアが開くと亮はすぐにマギーを呼んだ。
「マギー、絵理子ママの持っている黒崎ホールディングスの
株を狙われているんだ。護ってくれ」
「了解、亮はどうするの?昨日襲われたんでしょ」
「それが狙われたのは僕じゃないかもしれない」
「えっ?」
亮はそう言い残し大手町の五島商事に向かいながら
美咲に電話をかけた。
「美咲さん、国城正章と京都で殺された
田渕憲一と同じ大学で知り合いだった
可能性があります、直ぐに国城を尋問してください」
「分かったわ」
「それと、昨日僕が襲われた原因は
黒崎絵理子さんかもしれません」
「えっ、ママが?どう言う事?」
「最初は通り魔的犯行だと思っていたのですが。
Nシステムで犯人の車の
動きを調べると1時間前から僕たちの打ち合わせ
場所の前に車を止めていたんです」
「それは計画的犯行ね」




