お土産
「あら、早かったわね。私はまだ時間が有ったので
エレーナと西陣で着物を見ているわ。こっちへ来る?」
「はい、行きます。お土産を買いたいので」
亮は絵理子と合流し錦市場でお土産を
買って満足そうな顔をしていた。
「亮、楽しそうね、八ツ橋と漬物を20個も買って」
「足りなかったかな?」
「亮のその感覚、変!」
「何が変ですか?」
「年寄り臭いわよ。みんな若いんだから
もっと色々選んであげたら良いのに」
亮は絵理子の言っている意味が良くわかっていた。
しかし、ひとりひとりの好みを選んでいたら
途轍もない時間がかかるため
平等に同じものを選んでいた。
「そうですね、今度時間のある時にゆっくりと選びます」
「うふふ、亮ってキーホルダーやペナントを選びそう」
「まさか・・・あはは」
亮は絵理子に本当の事を言われてドキッとした。
※ペナントは1960~1980年まで旅行土産のアイテムで
三角形のフラッグで修学旅行生が買い込む姿が多く見られた。
また、女性はノンキャラクターのファンシーキーホルダーが流行した。
ちなみに、日本のプロ野球はペナントレースと言って
優勝チームは三角の旗ペナントが贈られる。
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その頃、東山署では問題が起こっていた。
「係長、車はニコイチでした。名義人の家には別な車が」
「わかった、Nシステムで追跡するしかないな。
鑑識さんからの凶器のナイフとピストルの
推定はまだできていないか?」
「まだです」
部下が重村に報告すると重村は肩を落として答えた。
「そうか」
重村は亮が解剖所見を見て即座に判断する能力に
改めて驚き
そして重村は亮に協力を頼むかどうか悩んでいた。
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帰りの新幹線の亮の元に内村から電話がかかってきた。
「亮君何時に東京に戻るかな?」
「15時30分です」
「時間があればうちの会社に寄ってくれないか?」
「どうしたんですか?」
「今日、四菱化学から連絡が有ってアンモニアのプレゼンを
したいそうだ」
「分かりました」
アンモニアはドライアイスを製造の必需品あるため、
価格と品質に興味があったがわざわざ、
会う必要があるのか疑問だった。
「社長にお任せしますよ」
「いや、先方は君と繋がりを作りたいんじゃないか。
それに経産省の人間が来るそうだ」
「そんなものですかね。それより甲山さんの話をしたいんですけど」
「ああ、そうだったな」
「ふう」
電話を切った
亮がため息をついた。
「亮、どうしたの?」
ため息をする亮に心配して絵里子が聞いた。
「東京に戻ったら四菱化学の人間と会うそうなんですが、
経産省人間も来るそうです」
「いいじゃない、たまには優秀な官僚と話を
してみるのも良いわよ。ほとんどが亮と同じ大学出身でしょう」
「そうですけど・・・僕と彼らは目指しているところが
違うような気がするんです」
「それは話して合ってみなくちゃわからないわよ。
本気で日本の未来を考えている人もるんだから、
どんな犬だって相手のお尻の匂いを嗅ぎ合って
お互いを確かめ合うんでしょ」
「あはは、尻の匂いか。絵理子さんの言葉とは思えません」
「あら下品だった。ごめんなさい。そうそう、
彼らはモテないから美女軍団を連れていけば
羨望の眼差しで見られるかも」
「分かりました。尻の匂いを嗅いできます」
亮は多くの男を見てきた絵理子の言った言葉を
身に染みて感じていた。
亮は覚悟を決め椅子に深く座って目を閉じると
自分が男達に襲われて時の事を思い出していた。
自分が襲われるに前に3m目の前を歩いていた男性が
50歳過ぎで恰幅がよく、間違いなく亮より金持ちに見えていた事
そして朝日悟と高田秀夫の会話を思い出した。
「やっぱり大金を持っていた。30万円持っていますよ」
「ああ、今の時間祇園を歩いている男は
お茶屋で使う金を持っているからな~」
亮が襲われたのは四条通りの北側で
もし金持ちを狙うならお茶屋の多い南側を
狙うのが当然のはずだった。
「おかしい?おかしいぞ」
亮は疑問で頭がいっぱいになり席を立ち、雪に電話をかけた。
「雪さん、僕を襲った車の19時01分より以前の
動きを調べてもらえますか?」
「了解です」
雪からは間もなく電話がかかってきた。
「亮、大変!あの車18時00分には
三条のイノダコーヒ本店の前にいたわ」
「つまり僕をつけていたんですね」
「おそらく」
「くっそ!雪さんありがとう」
亮は電話を切ると重村に電話をかけた。
「重村さん、團です」
「はい、例の車はニコイチでした」
重村は電話をするか悩んでいたところに
亮から電話がかかってきてホッとした。
「例の車は僕がいたイノダコーヒの前に
18時から止まっていたようです」
「じゃあ、奴らは團さんを狙っていて任務に失敗したから
殺されたという訳ですか?」
「おそらく・・・」
「なぜですか?」
重村は誘拐される警察キャリアの存在を聞いた事も
見た事もなく唖然としていた。
「色々と事情があって・・・重村さん直ぐに犯人の
行動の情報を送りますので調べてください。おねがいします」
「分かりました」
亮は電話を切ると席に戻り
パソコンを開いて麻実にイヤフォンマイクを
付けて連絡をした。
「麻実さん、警察庁の管理している30歳代の前科者で
3ヶ月以内に中東、アジアから日本に再入国した人と
のマッチングをさせてください」
「了解」
麻実は必死で入国管理局のデータベースの侵入し前科者と
マッチさせた。
「亮、マッチした人間は102人いるわよ、
共有ファイルから見て」
「了解」
亮にとって100人もの人間を選別することは
大した作業ではなかった。
「いた、槇島真司35歳元陸上自衛隊。7年前路上で
酔っ払いに絡まれた女性を助けるために
人を殴り殺して傷害致死罪で懲役5年の刑を受けています」
「了解です。美咲さんに連絡をして公安局のデータを送ってもらいます」
「お願いします。いったい誰が僕を狙っているんでしょう?」
「亮の命を狙っているわけじゃなくて身代金欲しさの
誘拐でしょう。命を狙っていたなら今こうして電話をしていないもの」
麻美が答えた。
「確かに・・・」
亮は麻実との電話を切ると今まで敵対
していた人間を思い浮かべた。




