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18-3 思惑 3

 魔道具の明かりを頼りに、真っ暗な廃迷宮へと踏み込んだ。

 前回は、迷宮の外に出ることだけを考えて、無我夢中で前に進んだため分からなかったが、不死神の王の廃迷宮は、思っていた以上に深い迷宮だった。


 ボクとオンドレイだけなら休憩なしに寝ないでも動けるのだが、普通の人間である冒険者のエバンスと学者であるクラウスさんはそうはいかない。

 地図にある目的の場所は深部にあり、結局一日では辿り着けず、途中何度か交代で仮眠をとりながら進むことになった。

 本来迷宮内で遭遇するであろう生き物がいなくなったのも幸いしたのだろう、何度か躓くも順調に進み、予定より早く目的地に到着した。


 そこは、見覚えのある場所だった。

 地図にあった目印は、ボクが閉じ込められていた牢屋へと続く、壁に穴が開いていたあの場所だったのだ。

 迷宮が自己修復したのか、壁の穴は塞がっていた。

 よくよく見ると、壁には微かなヒビがあり、軽い気持ちで扉をノックでもするように叩いてしまう。

 次の瞬間、大きな音と共に壁が崩れて、穴が開いた。

 急に出現した横穴に、クラウスさんは興奮を隠せない。


「フィヨルさん、この横穴は大発見ですよ!流石は超級冒険者です」


「クラウスさん、この横穴はボクが見つけたわけじゃないんです」


 元々横穴が開いていたことを知るボクは、すぐさまそれを否定したが、クラウスさんは話を聞かずに、横穴の中へと駆け出していった。

 しかも、勢いのまま通信用魔道具を取り出して、学者組合に〝フィヨルさんが新しい横穴を発見しましたー!大発見です〟とまくしたてる。

 何度も、この横穴を最初に見つけたのは、自分じゃないと繰り返すも、クラウスさんは聞く耳を持たない。


 次第に、この横穴を最初に見つけたのは、本当に人間だったのだろうかと不安になってきた。

 あの時のボクには目が無く、牢屋の中に入ってきた生き物の姿も見ていない。

 牢の扉の鍵を器用に開けたことから、人間だろうと決めつけていた。

 それに、ボクの体から吹き出した高温の蒸気を浴びて死んだ可能性だってある。


 ボクの話し待たずにクラウスさんは、興奮したまま夢中で横穴の調査をはじめてしまった。

 学者という人種は、こうなると手が付けられない。

 気疲れしたボクは、クラウスさんの護衛をオンドレイとエバンスの二人に押し付け、気分転換を兼ねて廃迷宮を一人散策することにした。


 横穴から十分距離が離れたのを確認すると、魔道具の明かりを決して『暗視』の異能を使う。

 魔道具の明かりでは見落としていた、壁際にたまった小さな生き物の骨の破片を見つける。

 迷宮に比べて大きな制限を受ける廃迷宮だけに、生物の死体の吸収が追いついていないのだろう、よくよく見ると通路の至る所に、ボクから噴き出した高温の蒸気で焼かれて死んだ、生き物の骨が散乱していた。

 骨は道の真ん中ではなく、どれも壁際へと寄っている。

 骨が壁際に寄るのも迷宮の仕業なんだろう。

 そのまま落とし物を探すように、ボクは下を見ながら歩いた。


 それに気が付いたのは、不死神の王の廃迷宮でも最深部に近い広場へと入った時だ。

 松明の明かりや魔道具の明かりでは、生き物の骨同様見落としていただろう。

 広場の壁際の地面に掘り起こされた跡があった。

 人の手が入ったというよりも、迷宮自体が死体や落とし物を取り込もうとして、自ら動いた感じだ。

 そのまま地面を掘り起こそうと試みるも、手では時間がかかり中々進まない。結局、地面の土や石をひとまとめに異能で『合成』し、大きなレンガを作って運ぶことにした。


 深さにして一メートル近くは掘っただろうか、土の下にあったのは、迷宮が吸収しきれずに残された、大きな生き物の骨だった。

 廃迷宮になる以前に産まれた、力のある魔物の骨だろう。

 魔物の骨は、通常の生き物に比べて堅いモノが多く、力を失った廃迷宮では吸収が思うように進まない、普通であれば通りがかった冒険者に持ち去られてしまうのだが、土に埋もれたことで今日まで生き延びたんだろう。

 そのまま骨を集め山積みにすると、異能を使い『生命の種の品種』へと登録する。

 長い歳月、吸収されずに残った骨だ。登録は失敗を繰り返しどんどん灰へと変わっていく。

 骨よりは灰の方が迷宮も吸収しやすいだろうと、結果オーライであると前向きに考えた。

 三つ目の広場でようやく成功した。


 品種:『クリソベルドラゴンモドキの種』


 ドラゴンモドキとは、その名の通り竜に似たトカゲである。

 大きさは種類によってまちまちだが、二メートル前後のものから大きいものだと六、七メートルにまで成長する種類もいる。

 竜のような翼を持つものは確認されておらず、炎の息といった特殊攻撃(ブレス)を使うものもいない。

 ただ、革は丈夫で、牙や骨も堅く、武器や防具の材料としては人気のある魔物だ。

 長い尻尾を利用した攻撃も強烈で、竜には及ばないが強い魔物であることには間違いない。

 その後も、迷宮を移動しながら怪しい地面を見つけては、骨を掘り集めた。


 本日の成果――。

 『クリソベルドラゴンモドキの種』×二

 『ルベライトドラゴンモドキの種』×一

 『ジェットドラゴンモドキの種』×一

 『オレンジスフェーンドラゴンモドキの種』×三


 四色のドラゴンモドキの種の登録に成功した。


 不死神の王の廃迷宮は、廃迷宮になる前はドラゴンモドキが多く湧く迷宮だったのだろう。

 魔物の骨探しに夢中になったボクは、完全に時間を忘れていたようだ。

 横穴の前には、両腕を組み、怖い顔をするオンドレイが立っていた。

 当然のように石の床への正座を命じられ、一時間にも及ぶ説教が続いた。


 数日後――。

 廃迷宮から帰還したボクに待っていたのは、横穴の発見者の栄誉と、学者たちからの熱烈な歓迎と宴だった。

『クリソベルドラゴンモドキの種』緑

『ルベライトドラゴンモドキの種』赤

『ジェットドラゴンモドキの種』黒

『オレンジスフェーンドラゴンモドキの種』オレンジです。

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