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3-1 ドゥダ家の秘密の森 1

 それから数日、ミーシャたちと一緒に雨の中森を歩き探索を続けた。


 ここに来てから、屋敷を囲むように空に浮かぶドーナツ状の雨雲は一度も晴れていない。

 森の中は毎日雨模様である。雨具に使えそうなカエルの魔物が多くいたのは運が良かった。


 カエルの魔物の皮と手持ちの素材を『合成』し、装備の上に来ても邪魔にならない雨具(レインコート)を創る。

 ミーシャたち、第二特殊部隊の面々はそれを見て何やら言いたげな表情(かお)をしていたが、そこはあえて無視をした。

 それと屋敷の周囲にある森が想像以上に広いことも分かった。

 古代種探しに本腰を入れるなら、まとまった日数を、あの森の中で過ごすための、別の拠点が必要だろう。


 新しく家を建てることは出来ないとの話だったので、完成品の小屋はどうなんだろうと、屋敷の前に小屋を放置してみたが問題なかった。

 五人分のベッドを急いで作り、元々ある小屋に木材を追加で投入し『合成』増築する。

 暫く屋敷を留守にすることから、馬と馬車は近くの村に預けることにした。


 村では、食糧なども多めに買い込み『竜の胃袋』に放り込む。

 力を隠そうという気持ちは既に失せていた。そんなボクをミーシャたち五人は〝また、はじまったか〟と言わんばかりに半ば呆れ顔で見守っている。この情報も恐らくミーシャからクアリスに報告が行き、大司教たちの知るところになるんだろう。

 これについても、神聖国家エラトニアを古代種探しの拠点にすると決めた時点で、神樹の翁と神竜の王と相談し、ボクの能力を少しずつ開示していこうと決めてあった。


 馬車を置いてきたこともあり、今度は雨の中歩いて屋敷を目指す。

 今日一日屋敷で休んだ後、朝早くに森の中に入るつもりだ。

 当面は森の中に小屋を出しての生活となる。


 『人工迷宮』には、朝と夜があるのだが、迷宮の中ということで、ヨジも活動制限を受けることはない。

 ボクらは、大広間に集まり明日からの予定を話し合うことにした。


 その時だ……。


「誰かが門を開けたみたいにゃ」


 ミーシャが、中央のテーブルの上に置かれた、明滅する水晶玉に気付き声を上げる。


「ガリウスは、やはりこの場所の予備の魔法の鍵(スペアキー)を隠し持っていたみたいですね」


 ブライアンが難しい顔をする。

 元八司教ガリウス・ベルジェが隣国レムノスへ亡命した話は、神聖国家エラトニアでも有名な話となっていた。

 その際、身内や家臣の他にも、多数の私財も持ち出しており、その中には、この場所、ドゥダ家の秘密の森に入るための予備の魔法の鍵(スペアキー)も含まれているのではと疑われていたのだ。

 現在の技術では複製の叶わないアイテムである。

 恐らく持っているとしても、残り一つか二つだとは思うが、その存在がはっきりしただけでも良かったんじゃないだろうか。

 持っていると分かってさえいれば、対策も立てやすい。


 鍵を使い侵入したのは、十中八九レムノスの手の者だろう。

 ガリウスから、この人工迷宮に魔物がいることも聞かされているはずだ。

 そう考えると、入ってきた者は戦い慣れた人間の可能性が高い。

 問題は、ボクらと争うつもりがあるかどうか。どんな目的であれ、ボクらは予定を大きく変更するつもりはない。


「ボクたちは、特に気にしなくてもいいんじゃないかな。少しだけ悪戯はするけどね」


「フィヨルくん……悪い顔してるにゃ」


 ミーシャとカーリーさんとビルギットさんの女子三人組は引いていたが、自分が思いついた悪戯を想像すると、思わず笑みが零れてしまう。


 翌朝――。

 最低限の荷物だけを背負い袋に移し、残りは全部『竜の胃袋』に放り込んだ。


 先にみんなに屋敷の外に出てもらい、一人残る。

 一階にある部屋の窓を開け、『竜の胃袋』の中に、屋敷から集めた物を手当たり次第放り込んだ。

 あの黒い変なのが湧いた状態で、玄関の扉から屋敷に入ることが出来るのも確認済みだ。玄関から外に出ることは出来ないけど……しかも、外にいる人間が中に入るまで、黒い変なのは息を潜め待ち続ける性質もあるようだ。さて……何人生き残れるだろう。


 悪い笑みを浮かべながら、みんなの後を追ってボクは森の奥へと歩き出した。


     ✿


 下見を兼ねた探索で、古代種の棲家と防人たちの謎の隠し場所についても、大よその見当がついた。

 先に向かうのは、宿泊人数が増えたことで、大きくなった小屋を置くのに丁度良いと選んだ森の中にある草原である。


 試しに小屋を出して見せた時には、ミーシャ以外の四人が腰を抜かす勢いで驚いていた。

 小屋の中の家具も、『合成』ですべて創り直し済みだ。

 熟練家具職人には、まだまだ及ばないが、座り心地と寝心地だけなら、そこいらの高級家具にも負けない自信がある。

 なにせ自分たちの体に合わせて、いくらでも作り直せるのだ。貴族御用達のオーダーメイド家具も真っ青である。


 前回はミーシャだけ、ベッドが足りずソファーだったが、今回は全員分のベッドを用意した。

 ボクと神樹の翁と神竜の王のベッドはダブルサイズで、ヨジやミーシャたちの分はシングルサイズと格差はあるが、寝心地は負けていないので安心してほしい。

 部屋数も増やした。

 以前は、キッチン完備のミーティングルームと寝室の間にも壁はなく、大きな一部屋だったのだが、新しい小屋は、ミーティングルームにボクと神樹の翁と神竜の王とヨジの合同寝室。ブライアンとイーサンさんの男性用の二人部屋に、ミーシャとカーリーさんとビルギットさんの女性用の三人部屋まである。

 四部屋だ!部屋の数は、以前の小屋の四倍である。

 ボクらの部屋に比べると、二組の寝室は狭めだが、ベッドには寝心地最高のものを準備したので、きっと満足するだろう。


 ボクは、出発前に五人からあるお願いをされていた。

 強くなりたい。五人はボクにそう願った。

 以前なら面倒だと一笑して断っていただろうが、ボクはその申し出を受けた。


 まあ修行をつけるでもなく、ひたすら小屋の近くで自由に魔物を狩らせるだけなのだが……魔物を狩るうちに成長の水も貯まるだろう、ヨジと一緒に五人で魔物を倒していれば自然と力は付くはずだ。

 本当は、ヨジと五人をこの場に残し、神樹の翁と神竜の王と一緒に古代種に会いにいくつもりでいたのだが、隣国レムノスの人間が『人口迷宮』に紛れ込んだため少しだけ予定を変えることにした。


 神樹の翁と神竜の王の二人にも小屋に残ってもらい、先にボク一人で防人の謎を片付ける。

 殺されても死なない体だ。

 古代種以外であれば、どうとでもなる。


 森の中に、用を足しにでも行く気軽さで〝行ってくるよ〟とだけ言い残し、ボクは一人で出発した。

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