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2-3 魔法使いの屋敷 3

 背が低く、ぱっと見子供にしか見えないヨジではあるが、彼の異能『怪力』を使えば、大抵の物は持ち上げることが出来る。


 ヨジにお願いしてベッドの位置をずらしてもらった。

 おかしいな、物語り好きな兵士の記憶を信じるなら、幽霊の足元にはなんらかの手掛かりがあるのが定番なんだけど、諦めきれずにベッドが置かれていた床を叩く。

 明らかに音が違う箇所があった。思わず顔がニヤケてしまう。


「ヨジ、この辺りをガツンと叩いてくれないか」


 ヨジは〝コテン〟と頭を縦に揺らすと、床に拳を叩きつけた。正解(ビンゴ)だ。

 明らかに何かがありそうな階段が、床の下から顔を出す。

 躊躇なく先へと進んだ。

 魔法使いの名家と呼ばれるだけあり、地下に降りる階段も歳月を感じさせない。神樹の翁の言葉を借りるのなら、入口の門と同じ保存魔法の恩恵なのだろう。


 地下一階とでもいうんだろうか、階段の下にあった部屋は、天井こそ低いが、想像以上に広かった。

 部屋の広さとは不釣り合いに、部屋の中には本棚と小さな机と椅子、それぞれがひとつずつあるだけだ。


 地下に魔法使いの墓でもあればと期待したのだが、そう上手くはいかないらしい。この『人工迷宮』を創った能力者の亡骸であれば成功するしないは別として、『生命の種の品種』に登録を試したかった。


 本棚にある本を適当に取り出しページを捲る。こういう時は『速読』の能力が欲しくなる。

 それほど珍しい能力ではないと思うのだが、命の遣り取りがある戦場に出てくる人間が持つ能力ではないんだろう、未だに『速読』の能力所持者(死亡済み)には出会えていない。

 能力を得るのを目的に人を殺す気はない。人以外の生物にもこれは当てはまる。あくまで殺すのは、自分に対して敵対するモノだけだ。

 旨そうな肉だけは、その例外になるが……。


 本棚の奥に隠すように置かれていた一冊の本を見つけた。


 本には沢山の札が貼ってあり、開くだけでも呪われそうな明らかに怪しい見た目をしている。仮に本を持つ手が腐ろうが焼け落ちようが、不死ノ神の体は、何度でも再生する。

 ボクは札を破いて本を開けた。少し前に見た幽霊に近い気配が現われ、ボクの首を絞める。

 数分でその気配は消えた。

 首には沢山の人の手形をした内出血が浮かんでいることだろう、首の骨を折る勢いで絞められたんだ。普通の生物なら、その数分で死んでいたと思う。


 改めて本を開く。

 はじめのページには、家系図のようなものが書かれていた。

 他にも不死神の王の牢番、防人についての決まり事がつらつらと書かれている。

 防人は、先代の防人が亡くなった際に、二十九歳以下の魔法使いの中で、最も魔法に優れた者が選ばれる。同時に選ばれた者は、縁切りが為され家系から外されるようだ。

 いない者として扱われるわけだ。不死神の王の牢の防人は不名誉なことだったんだろう。

 防人の仕事は、この世界の半分を焼いた罪人を出した人族への罰で、他種族より無理矢理命じられた仕事だ。どれだけ苦痛だったことか、ボクが不死神の王本人であるとバレたなら、一族全員から呪われそうである。


 実際、本の中には防人たちの自由帳のような部分があったのだが、ボクに対する苦情や恨みつらみが寄せ書きの如く、びっしりと書き込んであった。

 正直、これ以上読みたくない。

 それでも、ボクはページを捲る手を止めなかった。オンドレイ・ドゥダのことが書かれている可能性のある本だ。最後まで読まなくては。

 ヨジに部屋を漁るのを任せて、ひたすら本を読むのに没頭する。自分の悪口を読み続けるのは苦痛でしかない、途中からは不死神の王は他人であると、自分に言い聞かせた。


 本の後半に地図を見つけた。

 この屋敷の周辺の地図だ。

 宝の地図……なわけはないと思うが、この場所に防人に関する何かがあるのだろう。なかったらなかったで、古代種探しはしなきゃいけないんだし、ついでにこの場所に行ってみるのもありだろう。


 ふと考える。


 この屋敷の中の物は、外に絶対持ち出すことが出来ないという話だが、『竜の胃袋』に放り込んでも無理なんだろうか、試しに『防人の手記』を『竜の胃袋』に放り込んでみることにした。


「ヨジ、そろそろ戻るよ」


 ヨジを連れて上へと戻る。

 迷宮なら床の穴も勝手に元に戻りそうだが、一応『合成』で塞いでおいた。

 ベッドの位置も元に戻し、部屋の外に出る。


 そこに、それはいた……。

 真っ黒の体をした人間に似た形のモノ。全身が黒一色で、爪だけが妙に長い。

 目の前の奇妙なモノが湧いたのが原因なのか、廊下の魔道具の明かりは灯らず真っ暗なままだ。


「ヨジ、お願い」


 ヨジは鞘から骨剣を抜き中段に構える。ヨジには隊長格の兵士が所持していた能力『熟練剣士』を追加してある。並みの魔物では相手にすらならないだろう。


 そう思ったのだが、黒い体をしたモノはヨジを圧倒した。

 床や壁や天井を自由自在に飛び回り、ヨジを切り裂いていく。爪はヨジの骨剣と打ち合っても折れる気配はない。

 黒い体をしたモノの爪が、ついにヨジの犬のお面を真っ二つに割り、そのまま頭に深く突き刺さる。

 黒い体をしたモノが、笑ったように見えた――勝負ありだ。


 爪が刺さった瞬間ヨジの頭は再生をはじめ、黒いモノがヨジを殴ろうが蹴ろうが、爪は頭から外れない。ヨジは自分の目の前にいる黒いモノをひたすら剣で突き刺した。

 最後は黒いモノは、黒い液体となり床に染みて消えた。

 魔法生物のようなものなんだろう。


 布の切れ端を取り出して、ヨジのローブに『合成』して新しいローブを創る。割れた犬のお面も『合成』して、新しいお面にした。


 部屋に戻ってから、起きたことを検証する。


 屋敷の中にある物が、ひとつ消えることで一体の黒いモノが産まれ落ちる。

 黒いモノが生成されると、明かりを含めた屋敷の中の魔道具は止まり、倒すことで魔道具の機能が回復する。恐らく一時的にすべての魔道具への魔力供給が止まるんだろう。

 黒いモノの攻撃目標は、物を盗んだ相手に限らず、屋敷の中にいるすべての生物。

 黒いモノは倒さなくても、屋敷の外に出てしまえば外までは追って来ない。

 ただ、正面玄関の扉は、黒いモノが産まれると同時に中からは開かなくなってしまうため、逃げる場合は各部屋にある窓等を利用しなくてはならない。


 検証結果は以上である。結果は全員に落とし込んだ。

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