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23-2 崩壊を止める 2

お知らせ◇この話が1章の最終話になります。

 神樹の翁のリクエストに応えようと、兵士たちの記憶が綴られた『知識の書』から武器を探す。

 旅好きの兵士の記憶から丁度良い武器を見つけた……薙刀という東の大陸の武器だ。

 槍の穂先の部分に曲刀が付いた独特な形状をした槍。早速、鉄と黒銅と魔物の骨と黒い木の巨人の素材を『合成』して薙刀を作り出す。

 『合成』は、似た物を作れば作るほど、少しずつ完成した物の質が上がっていく。もちろん、長年武器作りに携わる鍛冶職人の技に比べればまだまだだが、それなりの武器が作れるようになった。


「お爺ちゃん、出来たよ!」


 神樹の翁に向かって、完成したばかりの薙刀を放り投げる。神樹の翁は持っていた槍をボクに向かって投げると、空いた手で器用に薙刀を掴んだ。


「ふむふむ……これなら、あやつを倒せそうじゃな」


 その場で数度素振りを繰り返し、使い勝手を確認する。そのまま黒い瘴気を纏った妖樹へと一気に距離を詰める。

 ボクも神竜の王の横で、塩の効いた干し肉を齧りながら、神樹の翁と妖樹の戦いを観戦した。神樹の翁は、無数に伸びる人の腕にも似た木の枝を切り落としながら、更に間合いを詰めていく。


 『一閃』――。


 薙刀を腰に沿えると、東の大陸で使われてい刀という名の剣の技『居合切り』にも似た横薙ぎの型をなぞった。


 神樹の翁と神竜の王は、ボクの頭の中の『記憶の書庫』にある『知識の書』を自由に読むことが出来る。

 人間の体での戦いに慣れるために武器の使い方や技に関する記憶を読んでいたんだろう。


 空間ごと切り裂くかのような一撃は、見事妖樹の根元を切断した。


 切り離した根元は、穂とは逆、石突部分で何度も何度も繰り返し叩き砕いていく。妖樹はついに動きを止めた。


「ふー終わったぞ、待たせて悪かったの」


 思っていた以上に、あっけなく勝負はついた。


 ボクは倒れた妖樹のもとへと向かう。今もなお瘴気漂う枝や幹に口で触れるのは抵抗があったが、斬り落とされた全てに唇を触れ『竜の胃袋』へと放り込んでいく。

 元々は神竜の王が持っていた異能である『竜の胃袋』の中なら、そのうち瘴気も浄化されてなくなるだろう。


 体を失い。その場に残されたのは、人玉のような黒い火の玉だった。不死ノ神であった自分とも似た黒い塊。耳を澄ますと黒い火の玉は〝憎い……憎い……憎い……〟ひたすら怨嗟の言葉を繰り返している。


「この黒い塊は、様々な生物の恨みつらみを喰らい汚染された妖樹の魂のようなものじゃ、三百年という時間で、それなりの格を持った魂になったのじゃろう。小僧、こやつの魂も『合成』で取り込んでおけ、ワシと駄竜もおる、取り込んだとてこの程度の存在に体を奪われることはなかろう。精神的にはまだまだ未熟ではあるが、仮の肉体を与えてやれば盾代わりにはなるじゃろう」


 妖樹は素材として残し、妖樹の魂のための仮の肉体は、黒い木の巨人から作ることにした。『仮初めの生命の種』の能力の器に『成長の水』を注ぎレベルを上げる。能力は進化し『品種改良』が追加された。

 『仮初めの生命の種――品種改良』:登録済みの『生命の種の品種』を改良する能力。品種同士の交配も可能だが成功率は低い。

 『仮初めの生命の種』の異能が、ボクの持つ『合成』の影響を受けたのかもしれない。

 それならと、新しい品種を早速作る。成功率の低い交配はせずに、『黒い木の巨人の種』を思い描く形に改良する。

 イメージするのは目も鼻も口も耳もない木の人形だ。大きさは人間の子供程度に止める。目指すは、服を着てお面を着ければ町に紛れても違和感のない形。


 新しい種『黒い木の小人の種』が完成した。


 完成した新しい品種の種を土に埋めて、仮の肉体が育つのを待つ、最後は足の裏に付く根を斬り落とし、取り込んだ妖樹の魂を入れれば出来上がりだ。


■黒い木の小人――所持能力『再生』『怪力』、追加能力『熟練剣士』(隊長級兵士が所持していた能力)

特性:活動条件、日中(天候に関わらず日の出から日の入りまで)。

好物:赤錆山迷宮の土。腐葉土。水など。

合成した魂:三百年ものの妖樹の魂……名付け有『ヨジ・シュメルツァー』

その他:人間並みの知能。言語能力無し。

身長:百二十センチ。装備品:黒い木のローブ(布+黒い木の巨人の素材+妖樹の樹液)、骨剣(鉄+熊の魔物の骨+黒い木の巨人の素材)、犬の面(黒い木の巨人の素材+妖樹の樹液)


「キミの名前はヨジ……ヨジ・シュメルツァー、今日からキミもボクらの家族だ」


 こうしてボクたちに、新しい家族が増えた。


 この日赤錆山の迷宮の崩壊は止まり、魔物が迷宮の外に出ることはなくなった。


     ✿終話


 神聖国家エラトニアの国境付近、紋章が削り取られた黒塗りの豪華な馬車が複数台列をなしていた。

 客車の一つで、二人の男が向かい合い座る。


「ガリウス卿よくぞ決心してくださいました。あなた様のような偉大な司祭の到着を国民は歓迎するでしょう」


「もっと早くに決断すべきでした。息子は下々のためにその命を投げ出したというのに、欲のために国民を犠牲にした愚か者呼ばわりです。しかも、市街の者どもが私の屋敷の前まで来て叫ぶのです。八司教を辞めろと……どれほど私が国のために尽くしてきたか、あの者どもは何も分かっておらぬのだ」


「まーまーガリウス卿落ち着いてください。下々の者には、我ら上に立つ者の苦労が理解できぬのです。地位を傘に贅沢ばかりする大飯喰らいと陰口を叩く民など気に留めぬが一番。そういえば、面白い話をお持ちだとか……」


「ああ、そうでしたな。貴国への土産話になればいいのだが、幻覚作用や高い中毒性を持つ珍しい薬草が群生する土地があるのだ。少々厄介な生き物が棲みついていて調査は進んでいないのだが、研究成果でもある薬のレシピも持ってきておる」


「それは、大変興味深い話ですね。詳しい話を是非――」


 この日。元八司教の一人ガリウスは、家族と一部の供を連れ隣国へと亡命した。


23-2 崩壊を止める 2を最後まで読んでいただきありがとうございます。


自分がどんな話を書きたいのか?読んでくださる方が読んで楽しいと思ってくれるのか?……と、様々な感情の中、試行錯誤しております。

この話も、どの程度の長さの話にしようかと迷っていたんですが、二章完結を目標に書こうと思います。あくまで予定です。

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