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14-4 赤錆山迷宮 4 報告

 ミーシャは小屋の外に出て、通信用魔道具を取り出し日課である定期報告を入れた。

 パーティー同行者は、本部のあるベースキャンプに、迷宮内での成果を毎日報告する決まりがある。

 これについても、聖地管理委員会はそれぞれのパーティーに説明しており、事前に了承ももらっていた。


 一日目、ミーシャの報告は聖地管理委員会の隊員たちを驚かせた。フィヨルたちは、六つのパーティーの中で最も少ない三人という人数で一番多くの魔物を倒したのだ。

 それも桁違いの数の魔物を……。


 ここに、ミーシャの言葉を疑う者はいない。出発前に同行者たちは、虚偽の報告をしないと神様に誓っているのだから。


     ✿クアリス・レイバの視点


 三日目の定期報告の後、ミーシャは別の通信用魔道具を取り出して連絡を入れた。


「やーミーシャ迷宮はどうだい、仕事は順調かな?」


「クアリス様、なんなんですにゃ、このパーティーは」


「落ち着いて、落ち着いてって、一体何があったんだい」


 ミーシャはこの数日で起きたことを順を追って説明した。僕はミーシャの話を、あふれ出そうになる笑いをこらえながら聞いた。

 アンドリュー・シュメルツァーという名の老騎士と、初代剣聖パライバ・クリュンターと瓜二つの容姿をしたダリューン・シュメルツァーの実力はいまだ未知数。

 彼らの戦う姿は、まだ見れていないという。


 見ることが出来たのは、フィヨル・シュメルツァーが持つ異能だけだ。それは実に愉快なものだった。


 木から一瞬で家を創り出す能力と、どこに入れて、どこから取り出しているのかも不明(なぞ)な、物を出し入れする能力。

 話を聞く限りどちらも『特殊系統』の能力だろう。


 能力は幾つかの系統に分類される。

 これについても僕たち人間が勝手に分類したものだが……『暗視』や『鑑定眼』や『真偽眼』といった能力は、『魔眼系統』に分類されており、『俊敏』や『怪力』は、『身体能力強化系統』。

 『直感』や『集中』は、『感覚変化系統』。

 『火の矢』や『風の刃』や『氷の礫』は『攻撃魔法系統』と、能力は様々な系統があり、その種類も多岐に渡る。


 能力は日々増えており、謎はどんどん深まるばかりだ。『特殊系統』とは、どの分類に入れていいのか、よく分からない能力のことである。

 

 強さが分からないというのは、ミーシャが寝ている間に魔物との戦闘がすべて終わっているからで、夜のうちに近くの魔物はすべて倒され枯れてしまい。日中はそれぞれが適当に好きなことをして過ごしているという。

 フィヨルくんは一日中家の模型を繰り返し作り、他の二人は本を読むと言って、ひたすら瞑想を続けている。

 夜、ミーシャが目を覚ましても、戦闘中に外に出ることは許されなかった。というより出れなかったみたいだ。

 ミーシャを含んだ四人は、ひとつのルールを作った。夜、外出するのは自由だが、外に出た者は、もし近くに魔物がいた場合、小屋の外にいる魔物を一人で全部倒さなくてはならないという無茶なルールである。

 一人で魔物を倒せないのなら。死にたくないなら。外に出るなという戦闘狂臭さえするルールだ。

 ミーシャは、三人の実力は少なく見積もっても上級冒険者以上であると評価した。


 前回のミーシャからの報告では、フィヨルくんが、他のパーティーのリーダーたちとの顔を合わせの席で〝どんな危険な場面でもお互い助けは求めない、手を差し伸べない、どちらが見捨てても恨みっこなし……〟と、神の名にかけて誓ったという話を、報告しながら、悲壮感すらある声色で〝自分はもう終わりです。死んだらクアリス様を恨みますにゃ〟と、僕に対しても非難轟々といった感じだったんだが……いまは、むしろ、彼らの助力が得られない他のパーティーの心配すら口にしている。

 たった数日で、彼女の評価がここまで大きく変わるのは、初めてだ。


 僕は知っている。彼女の目の確かさを、なんとも愉快ではないか、誰もが反対した新参者のパーティーの参加が、聖地奪還の要になるかもしれないのだ。


 僕は性格が良い方ではない。むしろ最悪だと自覚している。フィヨルくんたちの実力を知った時、迷宮に挑む他のライセンス持ちたちは、そして、無能な隊員たちは、一体どんな顔をするのだろう。想像するだけで楽しくなってしまう。


「ありがとうミーシャ、キミを行かせたのは正解だったみたいだ。僕も出来れば彼らと縁を結ぶために、すぐにでもそっちに向かいたいんだけど、書類の山が邪魔をするんだよ」


「また、そんなことを言ってますにゃ、だからクアリス様は副委員長なのに人望が無いんですにゃ」


「辛らつだなー。ま……人望はなくとも戦闘力ならこの国じゃ誰にも負けない自信はあるけどね。好き勝手にやったからといって、誰も僕を追い出すことはできないのさ、ワーハッハッハッハ」


 僕は高らかに笑った。


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