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12 仮初めの器


「せっかく体を手に入れたというのに、今日も土ネズミの丸焼きとはのう……もう少し老人は大切にすべきじゃと思うぞ」


「そうは言っても、これは、この国で一番有名な将軍の体を選んだお爺ちゃんのせいでもあるんだよ!」


「この体が一番しっくりきたんじゃ、しょうがなかろう。名前くらいは変えるべきだとは思うがのう、何よりも好きな体を選んでいいと言ったのは小僧ではないか」


「そうだけど……」


 ボクは不満そうに口を尖らせた。


 第四鉱山にある要塞都市に単身乗り込んだボクは、そこで二千人近い兵士を殺した。

 そして、戦闘の後『神樹の翁』は、ビビビと来たという理由から、要塞都市に三人いた将軍の一人。司令官であるアンドリウス・サラビアの死体を器にしたいと言い出した。

 要塞都市の司令官の記憶だけに『知識の書』として残したかったんだけど……好きに選んでいいよと言ってしまった手前、神樹の翁の希望を優先して『生命の種の品種』として登録した。

 よりにもよって、まさか、ダッカス王国一の有名人を選ぶとは思いもしなかったよ。


 しかも、残りの二人の将軍も『知識の書』への合成は失敗……まー三人共『生命の種の品種』として登録出来たから良かったけど。


 少しは誤魔化そうと、五十三歳だった将軍の肉体年齢を六十二歳に変更した。

 身体的な特徴としては、白髪混じりの黒髪に赤銅色の肌、端正な顔立ちと細長の目。長身で、筋肉質ではあるもののよく体が引き締まっており着痩するタイプに見える。

 アンドリウス将軍だとバレないよう、鼻下に髭も追加する。見た感じは、老紳士といったところか、執事服を着たら様になりそうだ。

 大まかなイメージを頭の中に浮かべたら、あとはボクの血肉から『仮初めの生命の種:品種アンドリウス・サラビア』を創り出す。


 ダッカス王国にとって『将軍』は、兵士たちの中でも特に武勇に優れた『最高戦力』と呼ばれる強者にのみ与えらえる称号だ。


 身体能力だけでなく、将軍の名に相応しく彼は四つの能力を持っていた。『槍の達人』『直感』『俊敏』『属性付与(火)』。普通の人が一個か二個しか能力を持っていないことを考えると、かなり凄い。


 『仮初めの生命の種』を土に埋めて、育った仮初めの器には、もう一つだけ『合成』を使うことで能力の追加が可能である。

 後から追加した能力は、仮初めの器が枯れると一緒に消えてしまうため、追加の能力は慎重に考えよう。


 更にもう一人の困ったちゃんが……『神竜の王』が仮の器に選んだのが、ダッガス王国が生んだ世界的な有名人、初代剣聖パライバ・クリュンターである。

 アンドリウスと同じ赤銅色の肌に、二メートル超えの身長、獅子を彷彿させる燃えるような赤髪。

 剣聖パライバは、生前、大剣と呼ばれる両手剣を片手一本で軽々と振り回した怪力の剣豪だ。その剣技に惚れた神様が、十年周期で世界で最も強い剣士に『剣聖』という特別な能力を授けるようになった。

 『剣聖』の起源になった人物こそ、最初の剣聖パライバ・クリュンターである。見まがうことのない伝説上の人物だ。


 剣聖パライバのミイラが安置されていた、英雄の墓への侵入はいま思い出しても大変だった。

 見張りが多く警備が厳しいため、人族のままでの侵入を断念。夜の暗闇を利用して『切り替え(チェンジリング)』で不死ノ神となり、黒い靄のまま墓の内部に侵入した。

 英雄の墓は、広い地下空間にあり、英雄一人一人に部屋が用意されている。その中に石の棺桶があり、ミイラなり遺体なりが入っているのだ。


 英雄の墓を開けるような罰当たりは、ボクをおいて他にはいない。剣聖のミイラが消えたことに気付く者は、暫くは現れないはずだ。そう願いたい。

 ミイラという形で埋葬されていたのも『生命の種の品種』として登録が成功した理由でもある。

 死んでから時間が経つほど『生命の種の品種』登録の成功率も落ちてしまうようで、英雄の墓の中にあったかなりの数のミイラやら遺体が、登録されないまま灰となり消えてしまった。


 パライバも初代剣聖とうたわれただけあり、『剣聖』『剣の達人』『直感』『怪力』の四つの能力を持っていた。


 将軍アンドリウスと剣聖パライバに共通する能力『直感』が、英雄の資質を現す能力なのかもしれない。


 発見もあった。

 仮の器には、生前の記憶が一部宿るようで、よりにもよってアンドリウスに宿った記憶の一部は、食事に関してのものだった。

 王都ダッカスにある高級レストランに行きたいと、年甲斐もなく神樹の翁は駄々をこねる。


 ボクら三人は二千年もの間、食事というものに無縁だったわけで、要塞から持ち帰った塩と胡椒をかけた土ネズミの丸焼きは涙が出るほど美味しかった。

 三人で涎を溢しながら手に持った肉に次から次へと噛り付く。


 ボクに関しては、食べるという行為自体が面倒で、人の体を取り戻してからも、口に入ればなんでもいいと、いつも薄味の具無しスープと固い黒パンばかりを食べていた。

 これについては自業自得なのだが、こんなに味の濃い食べ物が美味しいとは、想像すらしていなかったのだ。


 要塞都市にあった塩と胡椒を持ち帰ったのも、兵士たちの死体から得た『知識の書』に塩と胡椒が、高値で取引されているという一文があったからだ。

 この味を知ってしまっては、手放すという選択肢はもうない。


「塩と胡椒ってすげーなー、なんだよこの旨味は!やべーぞ」


「ふふふ、駄竜よ!この辺りには土ネズミより遥かに美味い大イノシシが生息しているそうじゃぞ、夜はイノシシ肉で決定じゃな」


「おうよジジイ、イノシシを仕留めるための大剣も坊主に作ってもらったしな、準備万端だぜ」


 ちなみに二人の呼び名は、ボクの頭の中にいた時から変わっていない。


 神樹の翁のことは、ボクがお爺ちゃんと呼び、神竜の王はジジイと呼ぶ。

 対外的に使う名前は、アンドリュー・シュメルツァーである。


 神竜の王のことは、ボクも神樹の翁も共通して駄竜と呼んでいる。

 対外的に使う名前は、ダリューン・シュメルツァーだ。


 ちなみに、ボクも家名を変えた。フィヨル・ランカスター改め、フィヨル・シュメルツァーに、そう、アンドリューとダリューンとフィヨルは家族という設定にしたのだ。

 実際、ボクら三人の魂は繋がっているため、家族というのも、あながちでたらめというワケでもない。


 要塞都市の倉庫に山のように保管されていた黒銅や各種鉱物、兵士たちの装備を大量に手に入れたこともあり、ボクらの装備も新しく『合成』で創り出した。

 流石にあれだけ暴れておいて、服が同じではまずいだろう。せっかくの機会なので、装備のデザインも一新する。基になる素材さえあれば、色も形も自由自在な『合成』は本当に便利な能力である。


■『神樹の翁』……呼び名:お爺ちゃん、ジジイ。

仮の肉体:第四鉱山要塞総司令官アンドリウス将軍(肉体年齢:六十二)

所持能力:『槍の達人』『直感』『俊敏』『属性付与(火)』※あと一つ追加予定。

主要装備:合成槍(黒銅、鉄、木材)、合成執事服(黒銅、布、獣の皮いろいろ)

ライセンス登録名:アンドリュー・シュメルツァー


■『神竜の王』……呼び名:駄竜。

仮の肉体:赤髪の初代剣聖パライバ(肉体年齢:三十六)

所持能力:『剣聖』『剣の達人』『直感』『怪力』※あと一つ追加予定。

主要装備:合成大骨剣(鉄、狼の魔物の骨、木材)、合成騎士鎧(鉄、布、獣の皮いろいろ)

ライセンス登録名:ダリューン・シュメルツァー


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