第119話 招待状
あきらと別れてから数日経ったとある日の午後、コンビニからアパートに戻った俺は何気なく郵便受けに目をやった。
するとそこには珍しく封筒が入っていた。
俺は茶色のそれを取り出すと自分の部屋に入る。
誰からだろう……?
就職してから友達付き合いはほとんどしていなかったので、俺に手紙をよこすような友人はおそらくいないはず。
俺はコンビニ袋をテーブルの上に置くと封筒の差出人を確認した。
「?」
だが封筒には肝心の差出人の名前が書かれていない。
なんだ?
俺は不審に思いながらも封筒の上の部分を慎重に破って開けてみた。
そして中に入っていた一枚のカードに目をやる。
「……招待状?」
封筒の中に入っていたカードには丁寧な字で[招待状]と書かれていた。
「なんだこれ? ん、裏にも何か書いてあるぞ」
ふと裏返してみるとカードの裏面にも文字が書かれている。
「なになに……」
そこにはこう書かれていた。
[~親愛なる鬼束ヤマト様~
この度、殺人者による殺人者だけの格闘大会を開く運びとなりました。
そこで鬼束様にも是非この大会に参加してほしいと思い招待状を送らせていただいた次第です。
ルールは至ってシンプル。殺るか殺られるかです。
トーナメント形式で戦っていただいて、生き残った最後のお一人には優勝賞金として五十億円を差し上げたいと思います。
開催日時は五月十日の正午、開催場所は沖縄県の南にある竜王島という無人島です。
なお不参加の場合は心苦しいのですが鬼束様が殺人者であることとともに鬼束様の氏名、住所、顔写真を公表するつもりでおります。
それでは格闘大会へのご参加お待ち申し上げております。]
「な、なんだよこれ……!?」
俺は思わず息をのむ。
俺の正体が誰かに知られてしまっている。
しかも殺人者同士の殺し合いに参加しないと正体をバラすと脅されている。
「誰だよ一体……くそっ」
俺が殺人者だと知っている人間は清水さん母娘とあきらとデリヘル勤務の高橋さんだけだ。
だがこの中の誰かが犯人だとはとても思えない。
「……呪文か?」
思いつくことと言えば殺人者を特定するような呪文の存在だ。
そのような呪文で俺の正体がバレたのかもしれない。
この封筒の差出人の名前も意図も不明だが決して無視していい内容ではない。
「くっ……せっかくこの生活にも慣れてきたってのに……」
俺はない頭をフル回転させて考えるがいい案が思い浮かばない。
そして棒立ちのまま五分が過ぎ、
「……参加するしかないのか」
俺は頭を抱えながら苦々しく口にした。
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