第114話 鹿児島県に別れを告げて
[ヤマトさん死んでないよね?]
[次は愛知県に向かってね]
[北日本にあと二人、南日本にあと一人だから頑張ってね]
[ヤマトさんの次の……っていうか最後のターゲットは澤田湊って奴。こいつは厄介なんだ。]
[変身呪文っていうのが使えるらしくてね、同じチームの奴でさえ誰も本当の顔を知らないんだよ。]
[今も愛知にいるかどうか微妙だけどよろしく~]
「俺を馬車馬のように働かせやがって……あきらの奴」
俺はスマホの画面を消しスマホをズボンのポケットに滑り込ませると、
「顔がわからないのにどうやってみつけりゃいいんだよ……まったく」
俺は武態の呪文を解除して何食わぬ顔で南部水族館をあとにするのだった。
◇ ◇ ◇
「大丈夫だったんですか、鬼束さんっ!」
「ん、何? どうかした?」
道端さんのおじいさんのうちに戻ると道端さんが詰め寄ってくる。
俺の両肩に手を置いて、
「だって南部水族館で女の人が銃を乱射したって今ニュースでやってるんですよっ。鬼束さん、南部水族館に向かったみたいだから心配してたんですっ」
道端さんが心配そうに見上げて言った。
「あ~……それね。あの、実は山上るの大変だったから途中で諦めて帰ってきたんだよ」
「そ、そうだったんですか。あ~よかった。わたしてっきり鬼束さんが事件に巻き込まれたんじゃないかと思って……」
涙目になる道端さん。
「ごめんごめん、大丈夫だから安心して。ありがとうね」
「い、いえ、無事だったならいいんです」
「おっ、なんだあんた、戻ってきてたのかい? 恵が慌ててわしんとこにやってくるから、これから車を出そうとしてたとこだったんじゃぞ」
「あ、すみません。お騒がせして」
「いやいや、無事じゃったんならそれでいいわい。それに騒がしかったのは恵の方じゃからな。ひゃひゃひゃっ」
「も~、おじいちゃん……」
二人とも俺のことを心配してくれていたようだな。ありがたい。
いい人たちに出会えたことを感謝しつつ俺は家の中に再び上がらせてもらった。
そして昼ご飯をご馳走になり少し休憩したあと二人に別れを告げる。
「いろいろとお世話になりました」
「いいってことよ。人は持ちつ持たれつじゃからな」
「はい、ありがとうございます」
「鬼束さん、気をつけて」
「うん、ありがとう。道端さんも元気でね」
そこまで言ったところで道端さんが少しもじもじし出す。
するとそれを見て道端さんのおじいさんが、「これ、さっさと電話番号の交換せんか。まどろっこしいのう」と道端さんをひじで小突く。
さらに俺にまで、
「あんたも気が利かん奴じゃのう、こういうのは男の方から言うもんじゃぞ」
と言ってくる始末。
「は、はあ、すみません。えっとじゃあ道端さん、番号交換します、か?」
「は、はい」
何やらお見合いのような気恥ずかしさを感じつつ俺と道端さんは連絡先を交換し合った。
「じゃあ、これで失礼します。本当にありがとうございました」
「はいよ、達者でな」
「群馬に戻ったら連絡しますね」
「わかった。じゃあ二人ともさようなら」
こうして俺は鹿児島県の思い出を胸に、今度は一路愛知県を目指すのだった。
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