第109話 夜の墓地
素知らぬ顔でトイレから出た俺はもとの席に戻る。
席に座る際に隣の席の女性と目が合った。
確か名前は道端恵だったか……この女性の元彼らしき男とこの新幹線の車掌らしき人物を今しがた殺してきたところだが、男の方はともかく車掌の方はいなくなったと知られると面倒だ。
騒ぎになる前にさっさと退散するか。
そんな時、タイミングよく新幹線が鹿児島駅に到着するというアナウンスが聞こえてきた。
俺は着替えの入ったリュックを手に扉の前へと移動し、その後駅に着くといち早く下車した。
駅の前でタクシーを拾い桜島へと向かう。
スマホを取り出してあきらからのLINEをチェックすると、そこにはとある住所が書かれていた。
どうやらそこにターゲットの殺人者がいるらしい。
俺はタクシーのドライバーさんに行き先の変更を告げるとその場所へと急いでもらった。
◇ ◇ ◇
あきらのLINEにはその殺人者の特徴も詳しく載っていた。
あきらはすでに一人の殺人者を始末したようで、その殺人者からほかの殺人者の情報を聞き出したということだった。
それによると俺のターゲットの名前は久保哲司、年は三十歳くらいで身長は百八十五センチくらい。
ちからのパラメータが異様に高く、その上獣人化することでもっと強くなれるらしい。
◇ ◇ ◇
「お客さん、そろそろ着きますよ」
「はい、ありがとうございます」
俺は財布から一万円札を取り出すと何気なく窓の外を眺めた。
外はすっかり暗くなっていて明かりがないと何も見えない。
「でも本当にこんなところでいいんですか? この辺りは墓地しかないですよ」
「はい、大丈夫です」
そう。
あきらが教えてくれた住所は墓地だったのだ。
「じゃあここでいいです。ありがとうございました」
俺は「お釣りはいいですから」とドライバーさんにお金を渡してタクシーを降りた。
タクシーが発進していなくなるとすぐに辺りは真っ暗になってしまった。
「そうだ、さっき覚えた呪文使ってみるか」
俺は暗視呪文であろう「シンア」とやらを唱えてみる。
するとどうだろう、昼間と見紛うばかりに辺りが明るくなった。
「おお、すご――」
とその時だった。
「ぎぇいっ!」
どこからともなく男の声がして、それと同時に俺の首から大量の血が噴き上がった。
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