第103話 葬式
メアリには身寄りがないので俺が喪主となって葬式を上げた。
式場には葬儀関係者と俺、そして清水さん母娘の姿しかなかった。
清水さんも美紗ちゃんもメアリのために泣いてくれた。
一方の俺はというとまったくと言っていいほど涙は出なかった。
簡素な葬式を済ませた俺たちは言葉少なにアパートへと戻る。
「……今日はありがとうございました。メアリもきっと喜んでいると思います」
「いいのよ……メアリちゃんはヤマトくんの親戚なんだから家族みたいなものだもの」
清水さんはそう言ってくれた。
実際は親戚でもなんでもないので少し胸が痛い。
「……でもなんでメアリさんが……通り魔に狙われるなんて、ひどい」
と涙を流しながら美紗ちゃん。
俺の部屋で息を引き取ったメアリだったがそれはさすがにまずいと思い、俺はメアリを外に運び出すと通り魔に襲われたように細工をした。
その結果、警察も通り魔殺人として捜査を進めているようだった。
清水さん母娘は俺が殺人者だということは知っているが、メアリもそうだったとは知らない。
伝えたい気持ちもあるが、それによって清水さん母娘がもし危ない目に遭う危険性が少しでも増すのであればそれは俺の望むところではない。
なのでメアリについてはこのまま明かさずに秘密にすることにした。
◇ ◇ ◇
殺人者である以上一週間に一回人を殺さなければ自分が死んでしまう。
メアリがあの世に旅立ってから三日、俺の寿命は残り一日となっていた。
しかし俺はやる気が起きなかった。
メアリの存在が俺にとって思っていたよりも大きくなっていたのかもしれない。
メアリがいなくなってから俺はろくに食事もとらず、日がな一日ぼーっとして過ごしていた。
そんな俺を清水さん母娘は気遣って毎日晩ご飯に誘ってくれたのだが、俺は何かと理由をつけてそれを断っていた。
「もういっそ、人を殺さないでみるかな……」
そんな気持ちも芽生えつつあった。
自暴自棄とまではいかないが、それに似た感情が俺の心の中にあるのは確かだった。
ピンポーン。
そんな時玄関のチャイムが鳴らされた。
時間からしておそらく清水さんだろう。
また晩ご飯のお誘いだと思うが、断ろう。そう思い立ち上がってドアの前に向かう。
だがこのあと予想とは違う展開が俺を待ち受けていたのだった。
◇ ◇ ◇
ドアを開けるとそこには誰の姿もなかった。
てっきり清水さんだと思っていた俺は面食らってしまう。
子どものいたずらかな、そう考えドアを閉めようとした矢先、
「……ん?」
メモ用紙のようなものが石を重しにして地面に置かれているのが目に入った。
「なんだこれ? ……なっ!?」
それを拾い上げた俺はそこに書かれていた文章を目にして絶句する。
[鬼束ヤマトへ
清水秋江と清水美紗はオレが預かった。
無事に返してほしければ今から一人で指示された場所に来い。
警察に連絡したら二人の命はないと思え。
それと呪文を使う素振りを見せたら迷わず人質は殺す。]
第四章完結です。
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