26/26
香
飛鳥たちは、翌日には北海道に渡った。知り合いが泊にいるらしい。原発で有名になったが、今は稼動していない。
「あんなもんなきゃ、自然が豊かでいい場所だったんだけどな。」
「生きてくためには、いやなこともあるさ。」
珠緒はいくらか謝礼を渡そうとしたが、二人は受け取らなかった。自宅から持てるだけの香木をいれてきたスーツケースとともに、彼女は一軒の民泊に泊まった。
「東京から逃げてきたんかね。こっちに知り合いでも。」
宿の主が尋ねてきた。
「もう、誰もいません。」
珠緒は言葉少なに返した。




