九十九神
玉博は御嶽山を、啓徳は富士山をまだ離れるわけにはいかなかった。かれらが離れれば、地下の獣を抑えるものがまったくいなくなる。唯一動ける啓鎮が青森に向かった。九十九神の復活。本来であれば異界から戻った綾たち贄が九十九神により獣と対抗する力となるはずだった。なにせ、予想外に古い時代までしか移動できなかったため、九十九神を隠しておくことしかできなかった。
ここ数年の異常気象の影響なのか、鏡ヶ池はすっかりにごってしまった。
「池の水、まるまる抜いちゃえ」
そんな企画が持ちこまれた。珠緒たちが気づいたときには、すでに九十九神のやどった道具たちが池から引き上げられた後だった。
神社ではとりあえず境内の一角に展示場を作る計画まで進められていた。
ネットでは丸丸が九九にみえることから九十九神の噂として広がっていたが、ことの真相をしるものは当時赤ん坊だった珠緒だけしか残っていなかった。
一方、政府の地震調査をしていたチームは、本州中央の地震を火山性地震ではなく、地中の巨大エネルギーによるものだと結論付けた。
「フォッサマグナの下にある古い地層からシェルガスが漏れ出し、ガス貯まりを形成しています。これはやがて、隙間に浸透し、フォッサマグナの淵から噴出すると予測されます。」
膨大なシェールガスの発見に日本はエネルギー輸出国になると大騒ぎになった。しかし、専門家は、ガスの漏れる量が多すぎるため、注意しないと取り出す前に爆発する危険性があると警鐘を鳴らした。
「注意すれば爆発しない。」
政府は都合よく解釈して、発掘の準備を始めようとした。しかし、フォッサマグナの大地は新しいため、やわらかいうえに、ガスの噴出が激しく、試掘しようにも地震が起こると爆発する危険があった。
「いくらかかっても、税金だ。問題ない。」




