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脱出

 啓徳は頭ではなんとなく理解したが、納得がいかなかった。ほかに手はないのか。綾のいる里に戻ってくると、全員に地上へ戻るよう説得した。

「戻るといっても、もう里はないんでしょ。」

「そうよ。どうやって暮らすのよ。」

 女たちは説得に応じない。

「ここが無くなるんじゃ。とにかく出かけよう。行き先はすでに見つかっておる。」

 女たちは、九十九神のやどる道具を携えて村を後にした。


 新しい道が狸たちによって造られていた。進むに連れてしだいに遅れるものが出始めた。皆の様子がおかしい。

「少し休んでくれんか。息が苦しい。」

「わたしも。なんだか体が重いわ。」

 みると、若かった彼女らの顔には深いしわが現れていた。異界ではほとんど歳をとらない。ここでの生活が長かったせいか、地上に近づくにつれ急速に歳をとっていったようだ。


 休み休み進む。無論、外の世界で老人だった啓徳も例外ではない。異界へくるにつれ若返った肉体は、外界に向かえばもとの老人に戻る。ただその中に例外もいた。異界では娘姿だったものがさわに若返っていく。それは幼くして贄になったものだった。彼女らは異界で生活するために未来の成長した姿で連れて来られたのだ。異界で成長を加速されたとなれば、それは地上での数百年の時間に相当する。そのため時が巻き戻り若返っていった。もっとも贄にされた歳より戻ることはない。


 啓徳は一足先に法海のいる富士に戻った。切れ間無く続く小さな地震に混じって、時折、大きな地震が起こる。

「わしは異界にいく。もう会うこともあるまい。主は非力じゃが、わしの自慢の弟子よ。これからは啓徳、主が法海と名乗れ。法海啓徳。立派になったな。」

 法海の言葉に、啓徳はただただ涙を流し続けることしかできなかった。


 啓徳は今回ばかりはもう戻れないと覚悟を決めて、この場所にきたのに、師は自分が生きて戻れるようにしてくれたに違いない。そして、綾たちも救ってくれた。

 樹海の結界が解けると、地響きは増す増す大きくなった。啓徳は急いで青森に戻った。

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