玉鏡
白神は広い。神々がこの中のどこかに固まっているのか、それとも拡散しているのか。どこから手をつけたものやら。一番の候補としては岩木山だろうか。
珠緒は青森から秋田へと移動し、宿を取った。
「秋田には九十九島という場所があります。」
宿の女将がその場所を地図で教えてくれた。
「九州にも九十九島があるそうですが、秋田が元祖になります。」
白神が秋田の北端なら九十九島は南端にある。直接関係はなさそうだが、かつて妖狐玉緒の夫である博利が佐世保の九十九島を尋ねている。その名前の由来の場所というなら行っておいてもいいだろう。
そこは昔は海だったらしいが、陸地になった今でもその時の島が無数の丘として点在しており奇妙な光景だった。
「まるで古墳みたい。」
この地はまだ歴史も浅く、とくに目立ったものも無かった。
古来より剣・玉・鏡が三種のとされた。50年前の戦いのために博利が用意したものは剣・玉と香だった。民俗学を学んでいた博利が用意するものとしてはいささか不自然だ。法六のために香を用意したのだろうが、戦力としては弱かった。まだどこかに鏡があるのかもしれない。十二湖は有名であるが歴史が浅い。時空を飛ばされた博利がいた時代にはまだ存在していなかったはずだ。
「鏡ヶ池。猿賀神社。主祭神は上毛野君田道命。」
大和朝廷の勢力がここまで来ている。ここならば歴史的にみても申し分ない。しかもいくつもの神が奉られている。しかし、肝心の鏡はなかった。銅鏡は主に関東以西で発見されており、東北にはほとんど存在しないのである。
調べた限りを、息子の啓鎮に伝えた。
「そこまでで、十分。」
彼は内容を狐たちに伝えた。狐は関東で待つ狸に伝えた。すぐに狸たちはこぞって白神の地へと向かった。




