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九十九神の地

「現代の九十九神の里を探してくれ。」

 啓徳が異界へ戻る前に珠緒に出した最後の手紙にはそう締めくくられていた。


 九十九の里にはすでに神はいなかった。珠緒は考えた。

「九十九といえば、九十九里浜。」

 しかし、海岸であって山神がいる場所ではない。手がかりを求め、群馬県の伊香保へ向かった。そこおはかつて玉緒の霊力が込められていた勾玉があった場所だ。富士山と御嶽山を結ぶラインの中心から垂線を引くと、ちょうど榛名山あたりが正三角形の頂点に位置する。

「さあねえ。雷様の話ならあるが、九十九神にまつわる話はないねえ。」


「八十八なら米なんだけどなあ。おばあにも米寿の祝いとかしてあげたかったな。」

 温泉饅頭をほおばりながら温泉の階段を下っていると、

「つくもやま。」

 という声が聞こえた。

 珠緒が振り返ると若い二人組の男の子がいた。


「今、九十九山っていいました?」

 男の子たちは、いきなり駆け寄ってきたおばさんにびっくりした。

「え、ええ。明日、九十九山古墳に行こうって。」

 飛鳥と狂二が前橋富士見村の九十九山古墳の話をしていたのだった。そこは、一帯にはめずらしい前方後円墳で、白山神社の白から九十九と呼ばれるようになった。


「パン!」

 彼女はいきなり、手を叩いた。

「あそこだ!」


「八十八が米寿なら、九十九は白寿。だから九十九といえば白。」

 白といえば白山。そこなら御嶽山にも近い。しかし、翌日、彼女は青森にいた。彼女は白神山地を目指していた。白神はいまでも神聖な地とされ、多くの自然が残っている。なによりマタギ発祥の地とされる、太古より手つかずのブナの森が残る数少ない場所だ。そして千メートル級の山、白神岳もある。

「白神。まさに九十九神。」

 彼女の脳裏に妖狐玉緒の姿が浮かんだ。

「間違いない。」

 彼女は身震いした。それはこの地の霊気にあてられただけのことではなかった。

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