13.関係
地面を蹴って、後方に飛ぶ。足首のすぐ右側をルナさんが撃った銃弾が掠めた。
「なかなか良いコントロールだね」
「ダスクさんはまだ一発も撃たれていませんよ」
「だって銃弾無駄じゃない」
銃弾って高くつくんだよね。だから僕は、確実に当たる位置に来ないと、撃たない。
「そんな、こと、言ってると、死にますよっ」
右手、右肩、右足狙いの三発が連続で来た。素早く避けてターン。
「本気を出しなさい、ダスクさん!」
「ええーっ。僕、シェンの命令しか聞かないよ?」
「ミチルってば、俺が好きだね」
「いや、違うし。と言うか部外者は黙れ」
「あれ、俺の命令しか聞かないんじゃないの?」
会話に気を取られて危なく被弾しそうになるのを、長いコートで去なす。
「くっ……流石はダスクさん。やりますね。しかし」
避けた方向に銃弾が飛んで来た。しまった、左肩に被弾だ。
「……っ」
「ミチル、本気を出しなさい」
あ、もしかして、僕はずっとシェンの命令を待ってたのか。
「その言葉、待ってた!」
「ルノアール、こちらも本気を」
「本気です!」
今までずっと黙っていたシュナ・クリスティン・ヒューが口を開いた。でもその顔は、シェンのように余裕がない。
乱射される弾丸にルナさんの混乱が見える。残念だ、銃撃戦は冷静さだけが僕の味方をしてくれるんだ。それは、ルナさんも例外ではなくて。
「貫け!」
僕の声と同時にルナさんの右腕を銃弾が貫いた。ルナさんはもう、攻撃できる程腕が上がらないはずだ。
「勝負あったな」
崩れ落ちるルナさんをシュナさんが受け止める。
「シュナ……ごめんなさい」
「いいんだよ、ルノアール。僕の大切な君が死んではたまらないから」
抱き合う2人。あのー、ここは公共の場ですが。
「兄上」
シュナさんがシェンの方を見て、ニヤリと笑った。その不適な笑みが、兄貴そっくりで、僕は心の中で笑った。
「何だい弟」
「部下との関係は僕の勝ちですね」
「なに!?」
僕とシェンの関係は、絶対服従的で素晴らしいと思えるんだけどな。
「それでは、兄上、ごきげんよう」
シュナさんは負けたのに、何故か勝ち誇った顔で帰って行った。
「あいつ、これ見せに来やがったな」
僕は多分、この日はじめてシェンの本音を聞いたと思う。