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最強格闘家になろうシリーズ  作者: カカカカカ
真・最強格闘家になろう 第一部「最強強奪編」
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第二十八話「君は僕の奇跡」

 ホテルの細い廊下で下衆際は山口に襲いかかる。

 下衆際は迷うことなく、足を山口の股間に向かって跳ね上がらせた。

 足が股間にぶち当たる!が、睾丸を蹴った感触がない。


 睾丸を体内に引き上げる、空手の奥義、骨掛け(こっかけ)である。


 山口は乂門との戦いの後、コンバットサンボに磨きをかけるため、空手をある人物から学んでいた。その人物と山口には浅からぬ因縁があったのだが、それを語るのはまた別の機会としよう。


 下衆際は股間蹴りが不発になったと見るや否や、拳を山口の喉仏向かって繰り出す。非常に危険な技だ。相手の今後の人生を鑑みない、純粋に敵の殺傷のみを狙うその技。

 しかし、山口はそれを読んでいた。

 繰り出された手に、全身を巻きつける。サンボの基本技にして、絶対的な威力を誇るその技は、飛びつき腕ひしぎ十字固め、自分の足に相手の腕を挟み込み、そのままへし折る技である。


 二人が絡み合って倒れる。

 猛者、山口はなんの躊躇もなく下衆際の腕をへし折った。

 ボキッと嫌な音が出る。

 すぐに技を解き、立ち上がる山口。


 終わった。そう思った。打撃主体の空手家が腕を折られれば勝負になるまい。


 しかし、下衆際は立ち上がった。

 苦痛に顔を歪ませて、それでも立ち上がった。


 「…負けられないんだよ…あの人だけは、佐山さんだけは絶対に守るんだよ」



下衆際は折れた腕で山口に殴りかかる。

 最初から分かっていた。4人衆最弱の俺がサンボの達人山口と戦って勝算が少ないことくらい。でも、それでも、例え命を落とすことになっても負けられないんだよ!!!



 そんなことしてちゃ友達いなくなるよ




 そう言われたのは小学生の頃だ。

 負けるのがとにかく嫌いだった。

 だから練習中でも金蹴りや目潰しを使って師範からしこたま怒られてたっけ…

 友達なんて一人もいなかった。当たり前だわな。あいつらからしたら変な危ない奴だもんな…


初めて敗北を味わったのは小学3年生の頃、ひとつ年上の花木薫と佐山大海にぐうの音も出ないほど惨敗した。

 道場の練習試合だった。いろんな手を使った。禁じ手もしまいにはモノも。

 それでもボコボコにやられた。

 悔しくて涙が出た。俺を見下ろす花木と佐山。きっと俺のこと見下してんだろうな。モノまで持ち出して、それでも負けてんだもんな。でもさ、負けるのって本当に嫌いなんだ。負けるくらいなら友達がいなくてもいいって本当に思ってたんだよ。




 そんな俺に2人は『お前、やるじゃん、こんな真剣なやつ初めて見たよ』そう言ってくれたよな。


 


 嬉しかったなー…今まで恥ずかしくて言わなかったけど、あの時、生まれて初めて人に認められたんだ。ほら、俺って親いないだろ?だから、こんな風に声かけてもらうって初めてでさ。



 それから、3人で朝から晩まで空手の練習したよな。ただ強くなる為に。

 俺らがもう少し大きくなって、そこに矢部さんも加わってさ、そんな俺らのこと、陀羅尼先生も認めてくれて、4人で全国大会1位から4位独占して、やっぱり俺ら最強じゃん!俺らの空手にかけた時間無駄じゃなかったじゃん?って思ったんだよな。


 覚えてる?試合のあとさ、4人で飲みに行ったよな。矢部さん珍しく酔っちゃって大変だったよな。ほんと、楽しかったなー、こんな出来損ないの俺にこんな楽しい日が来るなんて思ってなかったよ。


 だからこそ、加賀流の奴ら許せなかったんだよな。なんだよ、最強って、俺ら4人が最強だろ?そんで俺らの先生の陀羅尼太がもっと最強なんだよ。


 俺さ、こんなキャラじゃん?冷酷非道の超新塾のヒットマン。それが俺じゃん?だから今までずっと言えなかったんだけどさ、ほんと、恥ずかしくて、



 俺にとって、あんたら4人は奇跡なんだよ。



だから、加賀流なんて訳わかんねえやつらが俺の大事な友達をぶちのめすなんて、死んでも許せねえんだわ。


 下衆際は舞った。絶望を振り払い、友のために。


 山口は情熱的な格闘家だ。下衆際の異様な熱意を決意を肌で心で感じ取った。

 下衆際の一撃一撃はその痛烈な思いを雄弁に山口に語りかけるのであった。

 山口も組技を捨てて、コンバットサンボ主体の打撃で応戦する。

 2人の拳が幾千もの閃光となってホテルの廊下で光り、交わり、弾けあった。

 


 絶対に、負けられないみたいですね。

 でもね、それはね、僕もおんなじなんですよ

 僕もね、大事な友達がいるんですよ。

 その友達が自分の人生を賭けて強敵と戦おうとしているんですよ。

 それを応援してやらなきゃ友達じゃないでしょ!!!

 でもね、それとおんなじくらいあなたの事も応援している訳ですよ僕は。

 今戦っている相手にそんなこと思うのって変ですかね?それでもいいんです。

 負けないで、君の心!!!

 輝いていて、ぐしけないで

 笑っていておくれ、あなたと言う強敵と出会えたのは僕にとって奇跡なんだから。



 気がついた時、歯が折れ、鼻は曲がり、顔と全身が血みどろの状態で山口は立っていた。

 

 足元には下衆際が倒れている。

 その目には涙が溜まっている。


 「すいません、佐山さん、花木さん、矢部さん、俺、負けちゃいました」


ボコボコに腫れ上がった顔で下衆際は泣いた。


 そんな下衆際を山口は抱き起す。


 「敵に情けをかけるか…殺せ」


下衆際は掠れた声で肩を貸している山口につぶやいた。


 「晴男さんは佐山さんを罠に掛ける気なんてないから安心してください。これは2人が正々堂々と一騎打ちする為のお膳立てだったんです。見に行きましょう。一緒に。僕らが信じた男、どっちが強いかを」

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