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最強格闘家になろうシリーズ  作者: カカカカカ
真・最強格闘家になろう 第一部「最強強奪編」
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第二十六話「花木薫」

 藤浪と花木が拳を繰り出したのはほぼ同時だった。


 藤浪の右こぶしが花木の美しい顔面へと吸い込まれていく、そして、花木の右拳はというと、藤浪の顔面ではなく、その右手前腕を狙っていた。


 刹那、藤浪の右手が弾かれる、それと同時に、花木は逆の左手を突き出していた。花木の両手が十字にクロスする、左拳は綺麗に藤浪の顎をとらえた。


 


 一撃で終わらせない!!!




 花木は打った拳を戻すことなく、そのまま藤浪の右肩を掴む、そして、花木は飛び上がった。


 花木の体がふんわりと、軽く宙に浮いた。そして、花木の右ひざは飛び上がる鷹のように宙を割き、藤浪の顎に炸裂した。そして顎が割れる確かな感触を膝から感じた。


 勝った。その確信から自然と笑みがこぼれた。




 天才、花木薫。


 佐山大海に敗れるまで超新塾の1番は花木であった。


 類まれな武の才能と恵まれた容姿、試合中でもうっすらと笑みを浮かべる不敵さから、皆から恐れられていた。


 


 しかし、みっちりと自分の胴に蛇が絡みつく感覚が全身を駆け抜け、悪寒が走った。


 空中で藤浪は花木をとらえていた。藤浪はぐっと腕を伸ばし、更に花木を上に押し上げる。剛力で捕らえられた花木は身動きすらできない。その腕力差はまさしく大人と子供、子供がたかいたかいされている姿が花木の脳裏に浮かぶ。


 軽く、藤浪の体が弓なりに反る。と同時に、超高角度で地面に花木を叩きつけた。




 凄まじい速度と威力であった。花木は2度、3度と地面を転がり、カフェの椅子と机をなぎ倒しながらゴロゴロと転がった。


 これほどまでなのか、喧嘩凸板最強トーナメント優勝者とは・・・


 花木は努めて冷静になろうとする。顎が割れても倒れないタフさ、身動きできなくなるまで絞り上げる腕力、どれも藤浪に軍配があがるであろう。しかし、技は俺の方が上だ。


 全身を鈍痛が襲うが、それでもすぐに、花木は身を起こす。寝っ転がっている上から飛び乗られてマウントポジションを取られたら勝機はない。少しの隙も見せてはならない。


 飛び起きる花木。しかし、意外。藤浪は先ほどの場所から動いていない。二人の間には6メートルほどの間合いが出来た。




 なぜ藤浪は追い打ちをしなかったのか、それは、超新塾出身の空手家、打撃が主体であろうことは容易に想像がつく、しかし、もしも隠し玉を持っていたら?もしも、マウントを取ろうとする相手に強烈なカウンターを食らわせる技をもっていたら?


 十分あり得る話だ。先ほどの一瞬の攻防でも、花木が豊富な技を使うであろうことは予想できる。ならば、慎重に攻めた方が勝率が上がるだろう。なに、体力ではこちらの方が上なのだ。長引けばそれだけ勝率は上がる。


 それが藤浪の思考だった。






 事実、彼の体力、フィジカルは並ではない。


 乂門との対決の後、藤浪が行った修行は常軌をいっしていた。


 最強のドラゴンカーセックスの使い手、藤浪ドラゴン、遂に重機とのセックスを試みる。


 藤浪はタンクローリーやダンプカーなどの重機と一戦交えようと試みたのである。


 その為にはまず、自分が重機に似合う、そして重機をファックできるくらい強大で強いドラゴンにならねばならない。そこで、彼が行った修行が、


 


 鉄球クレーンの鉄球にひたすら打たれ続けることである。




 鉄の塊で全身を強打し続ける藤浪、最初は気が狂うほどの痛みに逃げ出しそうになったが、ただひたすら、車への愛情で耐え抜き、やがては重機のパワーをものともしない鋼の体を手に入れたのであった。




 鉄球に比べれば、花木の打撃など児戯に等しい。


 


 超新塾、なにするものぞ。藤浪は自信からくる冷静さで、深く腰を下ろし、花木の出方を待った。


 


 そして、そんな意図を花木は理解した。


 舐めた真似を。藤浪のベースはプロレス。組まれたら終わる。ならば組ませなければいい、俺の間合いを維持し続ける。突きよりも蹴りだ。蹴り殺してやる。


 


 花木は軽いフットワークで藤浪に近づき、電光石火の上段蹴りを繰り出した。


 手を上げ、頭部をガードする藤浪。しかし、来るべき衝撃は手ではなく、脛にやってきた。なんと、その蹴りは、しなり、宙で軌道を変え、筋肉の薄い、カーフへとぶち当たった。


 バチィと凄まじい音がした。普通の人間なら筋繊維は断裂し、骨にひびが入ってもおかしくない威力だった。が、藤浪は動じない。




 常に冷静沈着、華のように美しく、鷹のように鋭い、1000の技を持ち、佐山に負けたとは言え、陀羅尼が認め、秘書として傍に置く男。


 その花木が絶望で顔を歪め、全身から粘着質な汗が噴き出た。


 


 藤浪のカーフの感触が鉄を蹴ったようだったからだ。びくりともしない。


 どこまで鍛えてるんだ。最早、その感情は感嘆を超えて恐怖であった。 


 


 その恐怖で一瞬体がこわばる。


 それを藤浪が見逃す訳もなく、藤浪が飛び上がる。打点が高い。ドロップキックだ。


 藤浪のデカい足が花木の顔面に突き刺さる。




 吹き飛ぶ花木。




 その時、走馬灯の様に思い出したのは3年前の超新塾全国大会決勝であった。




 佐山の正拳突きの前に敗れた。


 


 それまで、幼い時から幾度となく佐山とは試合で練習で戦ってきたが、この日、初めて花木は負けた。 


 勝負は一瞬であった。前蹴りで距離を取ろうとした花木、その蹴りを躱し、一撃を打ち込んだ佐山。


 


 全てが終わり、一人、選手控室で項垂れている時、陀羅尼太がやってきた。




 「そう言えば、公式戦初の敗北だそうじゃねーか花木。どうだ、気分は?」




 「また、修行するだけですよ」




 「ほーん、今まで下だと思っていた佐山にやられて、どう思った?な、ぶち殺してやりてえと思うだろ」


 


 陀羅尼は嬉しそうに花木に問いかける。




 「そんな、佐山は友達です。負けて悔しい気持ちもありますが、彼を祝う気持ちで胸はいっぱいですよ」




 花木は爽やかな笑顔を陀羅尼に向けた。陀羅尼の顔が困ったような表情になる。




 「うーん、食えないやつだな。そうだ、最近秘書が辞めちまってな。お前代わりにやってくんねーか?」




 花木はこの頼みがうれしかった。試合では負けたが、師匠は俺を認めている。そう思っていた。しかし、違った。今気が付いた。この大男にドロップキックで吹き飛ばされて気が付いた。




 大の字でカフェの床に寝っ転がる花木、その脳裏に幻の声が聞こえる。




 「花木ぃ、やっとわかったか」


 


 陀羅尼の声であった。




 「ええ、師匠、あなたは私のことを認めていた訳じゃない。見限っていたんだ。もうこれ以上は強くなるまい、自分に牙を向けまいと、だから秘書にしたんだ」




 「よくわかったな。佐山みたいなこわーい奴傍に置いとけんだろ」




 「師匠、私はどうすればいいでしょうか」




 「どうすればいいか?そんなの幼年部のガキでも知ってるぜ」




 「ああ、そうでした。すごく簡単なことなのに、すっかり忘れてました。ほら、僕って、天才だから苦悩した記憶が全然なくて」




 「言ってくれるぜ、花木、さぁ、派手にやんねえ」




 がぁあああぁあああああああ!!!!!


 


 倒れたまま花木は叫んだ。




 飛び上がり、藤浪を見据える。


 


 「花木さん、あんたいい顔してるな」


 


 藤浪が思わずつぶやいた。




 花木の顔は怒りと、悔しさと、決心でぐちゃぐちゃに歪んでいた。


 眉は吊り上がり、口は開き犬歯が見えている。目もにらみすぎて細くなっている。




 「舐めんじゃねーぞ三下がぁ!!!俺は天才花木薫だぞ」




 男は叫んだ。花木にかけていたピースが、必死と言うピースが遂に埋まり、美獣は遂に目を覚ました。

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