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最強格闘家になろうシリーズ  作者: カカカカカ
真・最強格闘家になろう 第一部「最強強奪編」
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第十六話「ゲームしようぜ」

入江は重心を低くして戦闘体制に入った。

 目の前に矢吹晴男がいる。何故か下半身は馬だし、ゲームキューブと弓矢を持っている。しかし、その上半身は鋼のように鍛え上げられていた。ゴツゴツした岩のようでもある。

 こいつの試合は何回か映像で見たことがあるが、対戦相手に合わせて自分の戦法をシームレスに変える無形の型である。

 さまざまな武芸を収めている矢吹晴男ならではの戦い方である。一方、入江にできるのは空手だけである。陀羅尼に教えて貰った空手のみ…それだけが自分の誇りである。

 足に力を込める。前にステップを踏み、相手の打撃を誘う、そこで後の先を取る。そしてフェイントを入れて、冗談回し蹴りで仕留める。

 それが入江のプランであった。

 

 入江がぐっと土踏まずに力を入れて、弾丸のように矢吹に踏み出そうとした瞬間である。


 「矢部二郎、中学の時、祖母を失い、以降陀羅尼太に師事する…」


矢吹晴男は落ち着いた口調でそう言う。


 「お前らが俺ら(加賀流)の事を調べたように、俺もお前らのこと調べさせてもらったぜ…」


入江は一瞬緊張を解きかけるも、すぐに気合を入れ直す。矢吹が得意なのは、よーいドンで始まる試合ではなく、このような路上での喧嘩や実際の殺し合いである。言葉すらも罠の可能性は高い。


 「矢部よ、子供の頃、友達はいたのか?今日はお前と戦いに来たんじゃない、俺は友達になりに来たんだ。よく考えてみろ、俺たちが戦う理由なんてどこにある」


子供の頃…まだ、花木や佐山、下衆と出会う前、俺は孤独だった。ぽっかりと空いた空白の幼年期、祖母と言う保護者からの虐待と虐めに彩られた子供時代を送った矢部と、それを全て押し付けられた入江。

 子供時代、それは彼らにとって呪いの言葉だった。絶対に言葉を聞くまいと思っていたにも関わらず、自然と耳を傾けてしまう。


 「俺とゲームキューブして、失った少年時代を取り戻そうぜ」


 矢吹は片手で持ったゲームキューブを入江に差し出した。自然と入江の目から涙が溢れてきた。

 そこにいたのは超新塾四段、矢部二郎、入江慎吾ではなく、友達のいない寂しい少年だった。

 あ、あ、あ、入江は矢部は両手を前にだらりと下げ、フラフラと矢吹に近づいていった。

 その時である。矢吹晴男はゲームキューブを振りかざし、入江の顔面に叩き込んだ。

 ゲームキューブ。任天堂が2001年に発売した家庭用ゲーム機である。4人対戦可能のコンシューマーゲーム機として当時の子供たちに絶大な人気を誇ったが、それ以上に格闘家にとっては中国伝統武器『玉錘』と並ぶ対人用鈍器として有名である。その重量と角ばった形状と持ち手は正に凶器、暗殺拳法家達にしてみれば、ゲームキューブを持った人間に近づくなど自殺行為に近い。常に死を隣に置いてきた闘士矢吹晴男と一流空手家矢部との差がここにハッキリと出たのである。


 しかし、流石に超新塾の四段である。ゲームキューブで一撃くらい、顔面を正方形に陥没させ、前歯をすべからく叩き割られても尚、入江は気を失わなかった。

 誤算があるとすれば、ゲームキューブは第一の矢に過ぎなかったと言う事である。

 入江が反撃と矢吹との距離を詰める為、前蹴りを繰り出そうとした瞬間、それは起こった。

 足が上がらないのである。ハッとなり、足元を入江が見れば褐色の男が入江の両足を両手で抱え込んでいる。

 それは寄生虫サタンクロスであった。寄生虫サタンクロスは矢吹晴男が武者修行中に出会った伝説の生き物である。サタンクロスについて、詳しくはGoogle先生に聞いてもらえたら幸いである。

 サタンクロスと友情を育んだ矢吹晴男は自身の下半身に寄生させていたのであった。

 そう、元よりこれは、矢部と入江、矢吹とサタンクロスの2対2のデスマッチであったのだ。

 

 突然のことに一瞬、身体が動かなくなる入江、しかし、真剣勝負中の一瞬とは命取りとなるに十分過ぎる時間であった。

 矢吹晴男はどこから持ってきたのか、スーパーファミコン用ソフト『スーパーマリオカート』を右手に持っていた。

 それを入江の口内に向かって打ち込む。ソフトは入江の歯をへし折りながら喉の奥まで突き刺さった。

 それが決め手であった。入江の身体は糸が切れた人形のようにその場に倒れ込んだ。

 倒れた身体はみるみるうちに萎み、元の160センチもない小柄な男になっていた。

 

 これぞ、矢吹晴男が対矢部二郎の為に生み出した『秘技、友情の任天堂タイムアタック』であった。

 矢部二郎の事を調べ切ってから立ち会った矢吹の完勝であった。


「矢部二郎、愛に飢えた悲しき男よ」


矢吹晴男は矢部二郎の目元に溢れた涙を手で拭き取りながらそう言った。

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