06 行動開始
待たせてごめんねごめんねー、という事で、
瞳ちゃんを外に置いて、水菜の合図と共に、民家の中へと転がり込む。
勿体つけても悪いから先に言うけど、俺最後尾。で、理沙が真ん中、水菜は安定の先頭だ。
そうして、考えられるだけの可能性を頭に入れながら、ごくごく小さな、普通としか見えない家の内部を調べていくのだが……。
「いない?」
「どういう事? 情報は間違いだっったのかしら」
廊下、居間、寝室、リビングと向かっても人の姿はどこにも見られなかった。
「少なくとも、人が『いた』事はまちがいない。人数は複数人、潜伏。うちわけは男性7に対して女性3の割合。潜伏期間は一週間程度といったところかしら」
「そうね。レトルトとかカップ麺が転がってるところをみると、電気と水道の確保は苦労していたみたいね。水のペットボトルがいくつかあったわ、けっとばしちゃったわよ」
いかにも一般的な家屋といった見た目を裏切って、内部には理科室で見る様な道具やらなんやらが溢れかえているが、肝心の人間の姿がどこにもなかったのだ。
おや、いろんなものが散らばってる汚部屋ではあるんだけどな。
タバコとか酒とかの嗜好品が飲みかけでいくつも転がっている所を見ると、掃除しない系の人間なのかもしれない。
水菜が同じ銘柄の3本のワインボトルを見つめながら何か考え込んでいる。
右に転がってるワインボトル。蓋が開けっ放し。
左に転がっているワインボトル二本。どちらも飲みかけ。
「色のついた液体が簡素して乾いたなら、跡がつくはず。だけど…、それに他の食べ物の賞味期限を見ると」
ちょっと前まで、ここに人間がいた事は確かだ、だけど人の気配はない。
となると、瞳ちゃんの持っていた情報が間違いだったという事になるが……。
あれだけ自信満々に言い放っていた少女の姿を思い起こすと、その可能性は低いような気がするのだが……。
未踏鳥にも直接言われた話が間違いだったと、そんな事があるだろうか。
「突入して、無人とかすっげぇ嫌な予感がするな」
漫画とかだと、「罠でしたー」とか言って爆破されたりして罠で木っ端みじん……というパターンをよく見るが。
何となく、近くに置いてあったヤカンを触ってみる。
「うあちっ!」
まさか高温だとは思わず、返って来た感覚に悲鳴を上げて手を引っ込めた。
「こんな時に何やってんのよ、アンタは……」
そんな俺の間抜けな様を見て、理沙はこちらに呆れ顔を向けるが、水菜ははっとした様子で玄関の方へと視線をやった。
「やはり、直前まで人がいた……!? 彼女が危ないわ!!」
そして、そう言って入って来た方へと駆けていく。
そうだ。
ヤカンが熱いと言う事は、少し前にお湯を沸騰させていた人間がこの場所にいたと言う事。
俺達の動きを察知して外に出たのか、別の用事で外出したのかは知らないが、近くに依頼の目標人物がいるという事だ。
水菜の後を追って、民家から出る。
待っているはずの瞳の姿はどこにもない。
代わりに、遠くから銃声のような音が聞こえた。
建物の密集地から離れた、自分達が歩いてきた林の方からだ。
「交戦してるみたいね」
理沙の言葉に不安がこみ上げてくる。
あれほど、戦闘が苦手だといっていた瞳がどれだけ相手に抵抗できるか。
そもそもエージェントとしての活動している姿を見ていないものだから、プロの場合の比ではない。俺のイメージとしてはただ生意気で、ちょっと知恵が回るくらいの少女で固定されているのだから、なおさら不安が倍増だ。
そう思うと、いてもたってもいられなかった。
「追いかけるわ」
「おう」
無事を祈りながら、その場から走り出した。




