05 夕暮れの道
空が赤く染まってきている。
もうすぐ夕暮れ時だ。
打ち合わせをした後は、瞳ちゃんと共に廃墟を出てしばらく移動。
「ここら辺は廃墟ばっかりなんだな」
歩く周囲には、人の気配のなくなった建物ばかりがあちこちに並んでいる。
いや、むしろ廃墟が点在しているというよりは、廃墟の集まりの中を通っていると言った方がいいかもしれない。
何か突発的な出来事で町から人が消えて、そのまま廃墟になったという感じだ。
先程までは林の中に見えるか見えないかくらいの割合で建物が点在していたのに、急に多くなったので気になった。
「これ、どういった場所なんだ?」
質問に答えるのは、水菜に確認を取りながら喋る理沙。
「確か……交代組織が発足された初期の頃にナイトメアが暴れた場所よね、確か」
そして、それを受けて補足する水菜だ。
「ええ、そう。当時の組織は今ほど機能していなかったから、被害は比べ物にならなかったわ」
「それで、町一個潰れちまうのかよ。とんでもねぇな」
二人に出会った時に、雪原の中から助け荒れてすぐに見たナイトメアが暴れていた光景を思い出す。
あれを外に出してしまえば、こんな光景になっていたかもしれないのだ。
割とギリギリの紙一重的な状況だったあの頃を振り返って、冷や汗だ。
つくづく何とかできて良かったと思う。
「無駄口を叩くのはこれまでじゃ、犯人の潜伏場所が近い、私語厳禁なのじゃ」
「へいへい」
お子様の仕切りたがりに付きあって口を閉じる。
やって来たのは、小さな民家だった。
玄関前にある草地はボウボウだ。
手入れされてない事を主張しまくっている。
こんな所に、本当にいるんだろうか。例の盗人さんが。
一呼吸落ち着いた後は、瞳がこちらを見て真顔で小声を発してくる。
「よいか、童は戦力にならん。くりかえし言うが戦力にはまったくならんのじゃ、だから当てにするでないぞ」
なぜ二回言った。
「ボンクラが役に立たんとなると、次に戦力になりそうなのはこの童じゃろう。そうなっては困るから、先に釘を刺しとるのじゃ」
「どんだけ俺の事、見くびってんの!?」
自慢じゃないけど、俺一応ナイトメアだって倒したし、条件付きだけど未踏鳥にも勝ってんだからな。
「ふん、任務の一つもこなした事のないおこちゃまが何を思っとるか」
「どっちがおこちゃまだよ」
おこちゃまって言うんなら、必要以上に人の悪口言ってくるそっちもおこちゃまじゃないんですかねぇ!?
何で俺の知り合いってこんな可愛げのない人間ばっかり増えてくんだろう。
そんな事を思ってると。再度水菜に注意された。
「二人共とも静かに」
「すまんのじゃ」
「すいません」
くそ、緊張しているせいか、いつも以上に饒舌になっちまう。
可愛い態度で済ませるには、任務って単語がシビア過ぎてできねぇよ。
頭を抱えていると、水菜が小さく。
「いつも通りでいればいいと思う」
「水菜さん?」
「今の自分にできる事だけを心掛ければいい。高望みをする必要はない。足りない所は私達が補うわ」
できる才女がそんな言葉をかけて来た。
敵わねぇな、ホント。
頭があがらない。
水菜を抜ける日なんて一生こない気がする。
でも、だからって諦めてられるほど、まだ俺は自分を分かって来ちゃいないからな。
軽く頬をはたいて、気合を入れる。
「うっし、準備オッケーだ」
「では、突入するわ」




