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ナイトメア ~白銀の契約~  作者: 仲仁へび
第四章 夕暮の決着
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04 やっぱ子供なんだよな



 水菜達と会った時と勝るとも劣らない強烈なファーストコンタクトを、廃墟で待っていた少女と果たして、数分後。


「水菜は甘い物好きか? 金平糖くうか?」

「今は良い」

「そか。なら話を進めるのじゃ」


 なぜか、小さな小さな瞳お嬢様は水菜のお膝に座ってくつろいでいた。

 何てうらやまけしからん奴だ。


「野獣……」


 隣で理沙が何か言ってるが、どうでもいい。


 水菜に懐いている様子のお嬢ちゃんは、こちらを見ながら……いや、睥睨しながら言葉を発してきた。


「そう、不満げな顔をするでない。やはり未踏鳥が言っておった通りじゃのう。単細胞でできておる。水菜は丁重に持て成し、ボンクラはボンクラ扱いで十分じゃ」

「あの野郎。いたいけな少女に何教え込んでやがる」


 すごく色々言いたいし、殴りたいが相手は一組織のトップ。

 逆らったら、落ちこぼれエージェントなど、即クビだ。

 個人的に言われる事に関してはかろうじて我慢する所存である。


 今に見てろとは思うけどな。

 機会があったら、やりかえしてやる。

 とりあえず何もしないでいるのは嫌なので、ここではないどこかで執務にとりかかっているだろう未踏鳥が不幸な目に遭うようにさくっと呪っておいた。


「あむあむ……」


 そんなこちらの内心も知らずに、小動物のようにお菓子をほおばる少女。

 けっこうな、マイペースお嬢様属性をお持ちのようだ。


 しかし、お菓子をきりの良い所まで食べ終わったらしい少女は、それを懐にしまって話を切り出してきた。


 相変わらずビジュアルはちっさいが、心なしかプロの顔つきになった気がする。


「さて、今回の任務じゃが、事前に説明があったように指名手配犯の捕縛になるのじゃ。これから童が完璧でパーフェクトな作戦内容を教えてやるから、頭に入れると良いぞ?」


 すらすらと話を述べるその姿は板についた物で、任務慣れしているのを感じさせた。

 年下の少女に先輩ずらされる俺、悲しいな。


 で、そこでお嬢ちゃんから話された作戦につてだが、意外と内容の通ったものだ。

 矛盾らしい矛盾は見当たらないし、無茶な役割ふりもない。

 俺にでも分かりやすい話だった。

 見かけは子供だが、本物の任務で諜報活動を任されるだけの事は、どうやらある様だった。


 ただ出だしのセリフで、完璧とパーフェクトの意味が被っていたが、それはまあ言わないでおく。


 そんな小さな事指摘して、理沙に「うわ、ちっさ」とか言われたくないし。

 ちっさい少女より、ちっさいなんて言われたくないし。


「これ、そこのもの。童の話をちゃんと聞いておるのか。聞くのじゃ」


 はいはい。

 ちゃんと聞いてるって。


 気が散った事が分かった様だ。

 瞳お嬢ちゃんは可愛らしい事に、頬を膨らませて抗議。

 こいつマスコット的なあれなのかもな。


 ぞんざいに先を促すと、続きが始まる。


「今回の作戦で重要なのは、盗まれた薬品を取り返すことじゃ、理解しとるな」

「聞いてる聞いてる、あれだろ? このあいだ俺達が解決した事件の薬を、第三者に持ち逃げされちまったってやつ」

「それじゃ。今回は犯人を捕まえる事も大事じゃが、それを回収してこそじゃ。任務は敵を倒して終わりではない。ナイトメア討伐もそうじゃが、よけいな損害がでないようにしたり、周囲の被害を食い止めたりする事も大切なのじゃ。記憶処理や、損壊した建物や道具の手配なども、それを頭に置いておく事じゃぞ」


 そうだよなぁ。

 敵を倒せばはい終わりってわけにはいかないのは最初から何となく分かっていたことだ。

 ナイトメアを倒してたとしても、ナイトメア化する前のその人物の知合いの心に傷は残るし、事件を解決したとしても、起きた事がなくなるわけじゃない。

 そこんところは、わざわざ念を押されずとも分かっている事だ。


「む、まあ、そこは今更じゃな。お主等はお主等で色々あったようじゃし」


 あ、北海道支部の事知ってるんですね。

 割と有名っぽい?


「では、そろそろ向かうとするか」


 話に一区切りついたらしく、瞳お嬢ちゃんは水菜の膝から降りて、とたとたと可愛らしく歩き始める。

 十歩くらいそれを眺めてから俺は聞き返した。


「どこにだ」

「サンプル盗んだ奴の所に決まっておろう。たわけ」


 察しが良く無くて悪かったな。

 ちょっと散歩にでも、みたいなノリで小さな女の子に歩かれてもピンとこなかったんいんだよ。


「水菜、手を繋いで歩くのじゃ」

「……構わないけれど」


 歩き出した瞳は、水菜を手招き。

 横に並んでその手を繋いで楽しそうに鼻歌何かを歌い出した。

 そこに文句を言ったり割り込むのは、さすがに大人げないだろう。


「うらやましーってなるけど、なんかほっこりする絵だな」

「不本意だけど、あんたに同意だわ。水菜のどっしり構えてる感じが、大人のお母さんみたいにみえるのかもしれないわね」

「知り合いなんだな」

「話す時間は少ないようだけど、任務で何度かあった事があるって。たまに面倒みてたりするわね」


 瞳お嬢ちゃんも、しっかりしててもやはり少女。

 年相応の面もあるらしかった。



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