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ナイトメア ~白銀の契約~  作者: 仲仁へび
※おまけ イフエピソード2
30/65

IF3 未踏鳥を倒すため?




「船頭牙、お兄さんの目的って何?」



 アルシェが尋ねてきたその言葉に俺は間初入れずにこう言った。



ーー未踏鳥を、あいつをぶん殴る事だ


 と。


 そしたら、突然の急展開。


 天井の板がぱかっと開いて、その奥にある闇の中から現れたのはパンチングマシーン。


 ゲーセンとかに置いてありそうな、真っ赤なあれだ。


 で、そんなもんが登場したなら、起きることは一つだろ。


「え?なにこれ」みたいな心境になってた俺は、避ける事もできず、赤い塊ににぶん殴らた。



 風を切るような速度で、部屋の外にぶっ飛ばされたのだ。


 理沙が驚いた顔して俺に駆け寄ってきた後、あいつがいた部屋の扉がどういう原理か分からないが、自動的に閉まった。


 あのむかつくお子様にお灸を据えてやろうと思って、扉を叩いたけど、うんともスンとも言わない。


 これはあれだ。


 いくら凡人の俺でも分かる。


ーー選択肢、間違えた。





 頭を冷やすために組織の建物から出て、適当にそこら辺をぶらついてたら、理沙がおまけでついてきた。


「ねぇ」


 はぁ。

 こういうのってあれだよな。


 もうちょっと考えて動くべきだったよな。


 いくら頭ん血が上っていたとはいえ、見失っちゃいけない大事な事があるよな。


「ちょっと」


 俺はそこんところを間違えちまったらしい。


 こんな体たらくんじゃ、水菜を助けらるわけがねぇ。


 気合入れなおさねぇとな。


 ほっぺぺちぺち。


「あんた。歩くの早いわよ」

「いや、ついて来てほしいなんて言ってねぇから。なんでついてきてんの?」


 とりあえず後ろがやかましかったので、振り返りと理沙に「はあああ?」という顔をされた。


「あんた、人が心配してあげてるっていうのに、その言い方はないでしょ!」

「え? 心配してくれてんの? お前が?」


 いやまあ、こいつがそんなに酷い奴じゃない事くらいわかってるけど。

 あの流れで心配してくれるとは思わなかったから。


 だって、ほらお前って水菜が大事じゃん。


「どうしてそこで信じられないような顔すんのよ。目の前でぶっ飛ばされたら誰だってびっくりするでしょ!?」

「ああ、なるへそ」


 つまり怪我とかしてない?

 的なそれか。


 人類全員に共通に抱く隣人愛てきなものかな。


「だいじょびだいじょび。小さい頃は落ち着きがなさすぎて、しょっちゅう家の階段から転げ落ちてたから、受け身とか得意だし」

「……だからあんた頭がおかしくなったのね」


 そこはほっとするところで、さげすむシチュエーションじゃないだろ。

 理沙の視線を手で払いのけた俺は、歩いてきた道を指し示す。


「つーわけで怪我なんてしてねーから大丈夫だ。ほれ、回れ右」


 今度は別の意味で、しっしって手を振ったら払い落とされた。


「人を犬っ頃みたいに扱うな! あんたってほんと、もう!」


 今のはちょっと酷いかなとは思ったよ。

 悪かったな、謝るよ。心の中で。


 地団太ふんでる理沙を見てると、もうちょっとからかってやりたくなるけど、自重。

 まがりなりにも心配してくれた奴だしな。


 なんて思ってたら意外にけっこう理沙が善人してた。


「だ、大丈夫なのかっていうのは怪我の事じゃなくて、あんたの中身の事よ」

「え?」

「だから、どうしてそんな顔……、ああもう話が進まないじゃない! 部屋から追い出されたとき酷い顔してたから、気になって」


 また脇道に逸れそうになったが、理沙がきばって進路を戻した。


 俺は彼女の言葉を聞いて納得する。


 一応エージェントとして頑張ってる身分だけど、出会いが出会い。


 メンタルひよってるとこみられちまったからな。


 俺は気まずくなりながら、頭を掻く。


 今度こそもろもろの意味を込めてきちんと謝罪。


「えーと、その。悪かったよ。大丈夫だ俺は、心配かけちまったな。でも、今一番大変なのはきっと水菜だろ? だから落ち込んでなんてられないって思ってるからさ」


 俺のために表情をゆがめていた、クールなはずの才女さん。


 水菜の声や顔が、普段表には出ない細かな感情が、俺の心にとげを突き刺してくる。


 きっと、たぶん俺たちが思っているよりも、何倍も悲しい思いをしているんだろう。


 だから、水菜にもうあんな思いをさせたくない。


「またアルシェのところに行ってみる。そん時は、お前も協力しろよ。水菜の友達なんだろ?」

「……あったりまえじゃない」


 俺の顔を見て、もう大丈夫だと思ったのか、理沙が胸をたたいた。


「はぁ、心配して損した。疲れたから、なんか奢りなさいよ。そこらへんの自販機のジュースでもいいから」

「えぇ? なんでだよ、追いかけてきたのはお前の判断じゃん。俺今月のお小遣いかつかつなんだよ」

「男のくせにケチ臭いわね、それくらいいいじゃない」


 俺達はその後はぎゃーすか言い合いながら道端を歩いていく。

 余計疲れちまったけど、ご愛敬だ。


 でも、理沙のおかげで少しだけ元気は出たたかもな。

 一人でいるよりはよっぽど良いはずだ。


 へこんでられないって思っていても、それはマイナスがゼロになっただけで、プラスじゃないし。

 そういう面では、理沙のやつに感謝してやらねーと。



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