15 お披露目パーティー
そして、時は数日流れる。
俺は現在、似合わないスーツを着せられて、巨大水槽の前に立っていた。
ここでお金の話しを少ししよう。
抗体組織の活動資金はどこから引っ張ってくるか、という話だ。
組織も慈善事業でやってるわけじゃない。
国から出してもらう資金もあるが、活動するために自分達でも何とか作り出さねばならなかった。特に発足した頃とかは、抗体を作りだすための巨額の資金を算出するのが非情に難しく、初期メンバーは相当苦労を強いられていたという話だ。
最近になってようやくあちこちの事業に手を出し、恩を売り、安定した活動ができるようになったらしい。
……と、
多分明後日ぐらいには忘れてしまうだろうありがたい理沙さんからのお話だ。
とにかく組織にはそんな事情がある。
で、話は戻るが、
俺達……理沙や水菜、アルシェがいるのは、その組織が手を出したものの一つ海遊館の内部だった。
先日行ったばかりの、テーマパークの近くに立つらしい場所……ニュースポットなのだ。
今日は、そのスポットが新たにオープンする前のお披露目パーティーが行われる日。
視線を周囲へ巡らせれば、休日を楽しく過ごしたい家族連れや恋人なんかで賑わうであろう場所は、今日は抗体組織のメンバーやどこぞの会社のお偉いさん達で埋まっていた。
「好きになれねーなぁ、こういうの」
集まった人間達は皆、スーツをかっちり着こみ互いの顔色をうかがいながら、俺には理解できなさそうな何か難しそうな話をしている。
おこぼれにあずかる形でついてきてしまった者や下っ端達などは、その雰囲気になじめず、妙な緊張を強いられながらテーブルに用意された料理に黙々と手をつけているようだたった。
「まあ、出された料理は上手いけど」
なんでとりあえず、なじむのは諦めて皿に盛ってきた料理を堪能する事にした。
「だったらもうちょっと大人しくしてなさいよ、そんなにがっついて」
馬子にも衣装だ。
やってきたのは彼女だ。薄桃色のなめらかそうな光沢のあるドレスに身を包み、いつものツインテを頭の後部でまとめている里沙の姿があった。
喋らなきゃ大人っぽくていいのにな。里沙だから無理か、残念だ。
「会場の雰囲気の悪さと飯のうまさは別だ」
「ひと月前までは、シュエルターで肩身狭そうにしてたくせに」
過去の事だ。余計なことを掘りだすな。
「食いたいんだったら素直に食えばいいだろ」
「誰が、そんな事……むぐっ」
問答無用で理沙の口におすすめの一品を突っ込んだ。
フォークの先でもぐもぐ言いながら、睨みつけられる。
「むぐ、むぐ……ごくん。こんな事してるアンタの気がしれないわ。あんたと水奈の未来がかかってるのよ。ちょっ、むぐっ」
そんなにオススメの逸品が欲しかったのか俺の皿に盛られている同じ料理に視線を注いでいる理沙。なので追加で突っ込んでやった。
「もぐ、ちょっと」
「お前は大丈夫だろ、肩の力抜けよ。緊張してたって、駄目になる時は駄目になるし、視野狭窄に陥るだけって学んだからな」
お前が肩身狭そうにしてたっていうシェルターで学んだ事だぜ。
とにかく時がくるまで素直に楽しめるもんは楽しもんだ方がいいんだよ、こういうのはな。