いきなり勇者パーティーをクビにされたおっさんは自慢のキャリアを武器に最強を目指す
病院の待ち時間に暇だったからサラっと書いてみた。
「君は今日限りでクビだ」
課長から告げられる突然のクビ宣告に田中治五郎(48歳)は表情1つ変えずに頷く。
こうなることはわかってはいた。
現実社会でいきなり上司からクビだ、なんて言われることはまずない。しかも課長から。
この小説が始まった時から、こういう切り出し方になるだろうと治五郎は理解していたのだ。
「君のここ3ヶ月の成績だが」
「ああわかっている。新入社員から中堅まで、後輩達個人個人の適正を伸ばして一流の営業マンへと育て上げた俺だが、自分自身の成績は下の中。このギルドに入社して勤続26年。碌に昇進もできず、後輩に追い抜かれるばかりの役立たずな俺は不要になったということだろう?」
「そういうことだすまんな。お前とは同期のよしみだ。再就職先の斡旋はしてやる」
治五郎は仕方がないとこれを承諾、しかしギルドの施しは受けないと言い残して、課長の部屋から出て行った。
本来課長ごときに専用の個室が用意されるなんてことは普通だったらまずないが、なんとなく課長って中ボスくらいの立ち位置だと思うから。
あと部長とかだと魔王四天王クラスなんだと思う。
治五郎はその足で職安へと向かうことにした。
クビを宣告されて、まあまずそんなことがありえないのだが、その直後その日の仕事を放棄して職安に直行するのも意味がわからないが、大体がこんな流れだろう。
職安の窓口に行くと、看板娘のPCでまず登録。
その後新しい職業を探すのだが、特に資格や特殊技能も持たない四十を超えたおっさんの再就職先などそう簡単には見つからなかった。
仕方なく治五郎は席を立つと、とりあえず仕事を探したんだから今日はいいだろうと。なんだか成し遂げた気になり家路についた。
途中、今売り出し中の期待の新人の若い女の子には出会わなかった。
完




