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 今日、街でぐうぜん元カレと会った。四年ぶりの再会だった。

 最初に気がついたのは、彼のほうだった。

「あっ」

 短い中に、驚きと焦りが同居した彼の声だった。


 おどおどしていた彼に、わたしのほうから話しかける。

「ひさしぶり。元気だった?」

 自分でも驚くくらい普通の口調だった。まるで、時が四年前にさかのぼったみたいだ。

「うん。そっちこそどう?」

 彼はまだ動揺している様子だ。そんなに怖い顔になっているのかな、わたし?

「まあまあかな」

 

 そのあと、少しだけ世間話をした。

「こんど、結婚するんだ、わたし。来月に」

 どうして彼にこれを話そうと思ったのかわからなかった。脈絡もなく、口が勝手にうごいてしまった。彼は少しだけ困った様子だった。

「そっか。おめでとう」

 かろうじて、口にだしたような声だ。


「ありがとう。じゃあ、わたしいくね」

「うん、じゃあ、また」

「うん、じゃあね」

 わたしたちは、そう言って別れた。彼は一度だけわたしのほうを振り返ったようだけど、わたしはそのまま前に進んだ。

 別れ際、あえて“また”という言葉はつけなかった。

 だって、話して、はっきりわかったのだ。彼という存在は、わたしの中ではもういい思い出でしかないということに……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 終わったことに出来るってすごいですね。
2019/11/08 15:46 退会済み
管理
[良い点] 二人の過去に対しても想像の余地があり、二倍楽しめるような作品ですね。 未練がましい男と、未来だけを見据える女。 女性は過去をすっぱりと切り捨てることが出来ると聞きますから、その縮図が見事…
[一言] どこで見たかは忘れましたが、 男は思い出を『フォルダ保存』し、女は思い出を『上書き保存』するんだとか。 まあそう言われてみれば、未練たらしいのは男のほうかもしれませんね。 これが男の立場か…
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