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第六話《暴食の魔眼》

 まあ何だかんだ魔宮攻略目前にして目的の人物目的なわけだけど……。

 カナは平賀君から望遠鏡を借りて《暴食の魔眼》を保有している男を監視している。


「カナちゃん、やっぱりいない?」

「たぶん……」


 弓の調整をしているさくちゃんが問いかけて来たので答えた。


「ダメだ。僕が作ったドローンのカメラも大神院華音を見つけられない。温感センサーもあの男一人しか捉えられない」


 平賀君も地面に広げたノートパソコンで男を監視しながら言った。

 魔眼の男を見付けられたのはいいんだけど、肝心の華音が見当たらないのよ。気配がしないから遠くから隠れて探してる。魔眼の男もだけど華音の気配も独特だから仮に他の階にいてもわかるはずだけど……。


「どうやらここで受け渡しがあったらしいな。しかし、出入口と出口に仕掛けた監視カメラにはそれらしき人物が映っていない」

「華音様が逃げ出したとしてもわざわざ護衛を倒してまで屋敷に潜入した人が華音様を放っておくはずないもんね。《運命の神眼》を使ったとか?」


 カナはさくちゃんに望遠鏡を渡した。さくちゃんが男の監視に入る。


「それはどうなのかな。カナがあの男の立場だったら真っ先に目隠しなりして《運命の神眼》を封じるけど……魔眼持ちのあの男なら尚更じゃない?」

「という事は奴の仲間が予め魔宮で待機していて移動系の道具や妖術でここから脱出したとかか? 一応魔宮の攻略者組合が作っている魔宮脱出道具があるが、でもあれは使えば魔宮の出入口に戻るからどっちにしても僕が仕掛けたカメラに引っ掛かる。だけどあれは技術が門外不出のはず、もしかしたら全く別の技術で作られた脱出道具があるのか?」


 脱出道具なんてあるの?


「ねぇ、その脱出道具見せてくれない?」

「いいよ」


 平賀君はコートの内ポケットからカードを取り出した。それを手に取る。プラスチックでできた攻略者カードと違ってこれは紙製だった。同時に特徴が少ない。真ん中に『脱』という文字が紙面いっぱいに大きく書かれ、裏面には可愛いうさぎのマークが描かれているくらい。少なくとも科学技術で作られた物には見えない。


「妖術が込められた道具……」

「そうだ、どこかの製作行程で妖術を用いられた道具《妖具》だ。それの名前は《脱出の札》。機械で作られているなら分解してある程度のメカニズムは解明できるけど妖術で作られているからどんな妖怪がどういう術で作ったのか本人と近しい者にしかわからん」

「これを改造とかできんの?」

「さあ、ただ製作者以外が手を加えようとすると発火して燃えるみたいだ。だからそれを直接改造は難しいんじゃないかと思う。予め中で待機してたら意味ないけど、出入口の過去映像確認するか?」


 ところでカナ達がいる場所は男の場所から結構遠くにいてさらに岩場の陰に隠れている。一方、男は割と開けた場所にいる。


「面倒だな、聞き出そう」


 カナの言葉に平賀君が不安そうな顔をする。


「大丈夫なのかい? 話聞く限りあの男の魔眼は君と相性悪そうだけど」


 男の持つ《暴食の魔眼》は武道を使う人間にとってすれば天敵といえる。だけどそれは武道の話であって武術の話ではない。


「そのためのさくちゃんだ。さくちゃんならばここから弓矢で男を狙い打てる」

「まあ《神懸かり》を使えば余裕だけど」


 さくちゃんは特に緊張した様子を見せない。


「何だそれは?」

「神業の事だよ♪ 今からさくちゃんが使うのは弓道じゃなくて弓術、純粋な戦闘技術だからね」


 カナが立ち上がりスカートをはたく。さくちゃんも弓を持ち準備万端という感じ。


「それで私はどこを狙えばいいの? 頭?」

「さくちゃんが狙うのは四肢かな、とりあえず動きを封じようか」

「おーけー、でも神懸かって弓を引くとこの弓四回引いただけで壊れそう。まあ拾った弓だからどうでもいいか」

「じゃあカナが跳ばすからさくちゃんは空中から射撃ね」


 そう言うとさくちゃんは助走を付けてカナに向かって走り出した。さくちゃんが跳んだところでカナが足下に手を添えて打ち上げた。

 さくちゃんは持っていた矢を手に一本残して自分の回りにばら蒔く。弓を構えると弓矢を引き打つ。すぐ様ばら蒔いた一本を打つ。最初の一本は男の右手に深く刺さる。その時既に三本目の矢が打ち終わり四本目を引いている。男は敵襲に気付き立ち上がると右足に二本目、左手に三本目が刺さり、四本目が左足に刺さる。男が射撃された方向を見るた時には既にさくちゃんは岩陰にほとんど隠れていた。


「まるで文字通り神業だな」


 平賀君は若干引いたような声が遠くから聞こえた。

 かくいうカナは既に男の懐、視界の外、上だけ見てて足下がお留守じゃない!

 底掌を顎から真上に打ち込み視界を完全に外したら、膝蹴り、手刀鉤突き、底掌双手突きを連続で打ち込む。男が吹っ飛ぶ前に胸ぐらを掴み体を引き寄せて地面に叩き付けると同時に踵落としを頭に振り落とす。辺りに骨が折れる音が響き渡る。


「一撃必殺級の攻撃を刹那の間に連続で打ち込む、流石カナちゃん!」


 さくちゃんがそう言いながらこっちに近付いて来る。平賀君も感心したような顔だ。


「ありがとさくちゃん。平賀君、何か袋ある? こいつ魔眼を封じるから頭を覆うくらいのやつ」

「一応予備でバッグを持って来てある」


 平賀君はリュックから折り畳まれたバッグを取り出した。それを受け取り男の頭に被せる。こういう特殊な眼を持つ奴はさっさと封じるに限るんだよなぁ。


「これどうするの? 気絶してるみたいだけど」

「起こすに決まってるじゃん。寝かせないっての」


 男の頭を蹴る。


「起きろ~起きろ~。このまま寝たふり続けるならもっと蹴るよ~」


 そう言いながら頭を踏んでぐりぐりしてると「殺せ」と男が言った。


「人を殺したら犯罪になるだろ~♪ 子供でも知ってるぞ~♪」

「くそっ、こんなちゃらちゃらした娘に遅れを取るとは」

「強さに見た目は関係ないっての。それより華音はどこ? まさか食べたとか言わないよね?」


 その時は手加減できなくて本当に殺しちゃうかも。


「それはどうでしょう」


 男はその言葉とともにカナの足下から消えた。その一瞬反射的に思いっきり踏みつけてしまった。


「脱出の札だ!」


 平賀君が叫ぶ。カナも大声で言う。


「平賀君、札!」

「お、おう! 脱出したいと強く念じろ!」


 平賀君から札を受け取り、魔宮から脱出する。

 そこは魔宮の出入口、しかしそこではあらゆる人間が食い散らかされていた。体力が回復したのだろうか魔眼の男は屈強な男の顔に食らい付いていた。そして《暴食の魔眼》で睨まれて一気に体力を奪われる。同時に男の魔眼の紋様が消える。

 カナは地に片膝を着く。


「てめぇ……」

「魔宮は初めてだったのですね。しかし私が消える瞬間に派手に攻撃をしてくれたものだ。素晴らしい反射神経と褒めておきましょうか」

「だからどうした? カナを殺すの?」

「そうしたいのは山々だが今はやめておきましょう。魔眼の力も切れてしまった。《暴食の魔眼》なしであなたに不用意に近付くのは危険、このまま逃走するとしよう」


 そういうとあっさり背を向けて男は離れて行く。


「情報を聞き出せないならせめてぶっ殺す!」


 威勢を上げて叫ぶが足が重くて歩くのが遅い。

 男はカナより少し年が下っぽい腰を抜かしてる女の子の腕を掴んだ。そのまま柔肌を口に運ぶ。女の子は絶望と恐怖に支配された顔を晒す。カナはその女の子の事は知らないけど琴線に触れた。

 足が重かろうと関係ない。走りながら近くに落ちている槍を拾い男に向かって投げた。槍は男の腹に穴を破る。


「ぐおっ!」


 男は痛みを感じたのか女の子から手を離し、その隙に女の子を抱えて、うずくまる男に槍の柄の先を足で押し込み地面と縫い付けた。

 無茶をしたからかカナも両膝から地面に崩れる。


「ああぁぁ……だ、大丈夫です……か?」


 女の子が勇気を振り絞ったように心配するような声をカナにかけた。


「平気だよ、年下の子を守るのが年上の役目だからね☆」


 言うてただ猛烈に疲れてるだけだし。このくらい余裕余裕。

 それにしても今のわざわざこの娘を食べないで逃げればよかったのに。もしかして《暴食の魔眼》を使うためには人を食べる必要がある?


「ぐおぉぉぉぉっ!」


 雄叫びを上げながら男は槍の柄を握り潰してへし折ると槍をカナ達に向けて振り下ろして来る。


「しぶといんだよ!」


 平賀君にもらった手袋の手甲部分に仕込まれた金属を利用して右手で思いっきり槍を弾き返した。僅かによろけると男は出血を押さえながら立て直す。


「全力で体力を奪ったはずなのにまだ動けるのか」

「勝手に体が動いたんだって~の」


 今回は豪快に体力を奪われたからか女の子を離さないように抱えるのが精一杯だ。こんな男に体を傷付けられるのは可哀想だから。


「だが一つわかった事があります。貴様をここで殺しておかないと後々我々の計画に支障が出るだろうとな!」


 男の言葉が終わるとともに同じく黒ずくめの人間が二人現れた。その二人は男とは別の魔眼を所有していた。


「なんだよなんだよ、こんなギャル子ちゃんにいいようにやられてんのかおっさん」


 片方は倦怠感のあるギャルっぽい喋りをする女。


「しかし遠目から見る限り強さは化物だぞ」


 もう片方は無駄に声がいい男。


「命令です。この女を殺せ」


 女が銃を抜き銃口をカナに向けた。咄嗟に戻った体力で立ち上がり銃口を掴み反らす。新手の男が背後から首筋に刀を添えるがもう片方の手で白刃取りで止める。人食いの男が槍で刺そうと突いて来るが女を銃ごと引き男と激突させる。刀を持った男を蹴り飛ばして女の子を再び抱え、人食いの男に踵落としを決めて女の顔を蹴飛ばす。

 こんないたいけな女の子相手に三人がかりとか頭おかしいんじゃないのこいつら?

 女の方から銃声が響いた。だがどこを撃たれたわけじゃない。外した?

 その時、首筋に心地いい温かい感覚を覚える。


「え?」


 女の子の目に女と同じ紋様の魔眼が浮かび上がっていた。女の子は困惑した様子で自分の手元とカナの顔に視線を動かす。そして子供とは思えない力でカナの首を絞めていく。


「何、やめて!」

「手が……手が止ま……らないの」


 人間の力じゃない。女の子の両手から何かが切れるような音が聴こえた。


「手が痛いよ。うあぁぁぁぁ」


 たぶん腕の筋肉とかが切れたんだ。以前、痛みなど知らないとばかりに女の子の手の力は弱まらない。

 これじゃカナはともかくこの娘の体がもたないよ!

 きっと女が持ってた魔眼の特殊能力なんだろうけど、女の子に気を取られている間に遠くに逃げていた。

 同時に身体中から力が抜ける。人食い男の魔眼が開眼していた。足下にはじいさんの体っぽいのが無惨に横たわっている。女の子の体からも力が抜けている感覚がある。カナは女の子を庇って背中から倒れる。だけど女の子の顔面は蒼白になっていてぶっちゃけやばい。さらに言えば体力抜けた状態で無理矢理体を動かしている。カナの首から手を離さない。

 カナは後悔している。こんな事なら無理にでも引き離すべきだった。

 刀を持った男が刀を振りかざす。女の子ごと切るつもりだ。


「ごめんね。カナがもっと早くこうしとけばよかった」


 言いながら女の子を気絶させた。気絶して今はせめてその痛みを忘れて。首を絞めてる女の子の手が緩む。

 カナは素早く立ち上がり男の持ってる刀を折り、手刀で側頭部打ち込む。刀を持った男が気絶する。


「あのギャル子ちゃんマジぱねぇ。まだ動けるとか」

「言ってる場合か! 早く増援を呼んでください」

「はいよ~」


 女がスマホで電話をかける。ラインじゃないのか。


「おっさん達死にそうだから増援寄越せって、じゃ。…………は? 何が起きてるかって? ヒマワリよくわからないんだけどおっさんがギャル子ちゃん殺せって。…………いや、よくわかんねーけどそれでいいんじゃね? ギャル子ちゃんマジ強いから、今度こそぶちするから」


 自称ヒマワリという女が仲間にそう連絡をとっていた。


「おっさ~ん、増援来るって」

「でかしました」

「って事でギャル子ちゃん、ちょっと大人しくしててね。そうしないとこの姉さん撃っちゃうよ」


 ヒマワリが倒れている攻略者と思わしきお姉さんに銃口を突き付けるが手に石が当たり銃が弾かれる。


「ギャル子ちゃんマジぱねぇ鬼マジぱねぇ」


 それに気を取られている間にカナの膝蹴りが顎に決まる。気絶しながら宙を舞い地面を転がる。

 しかし今はカナも体力が奪われ続けている状態、足がおぼつかない。


「大丈夫か!」


 施設の出入口からがやがやと声が聴こえる。


「どうやら鰐の自警団がやってきたらしいですね」


 自警団? こいつの増援とは違うのか?


「た、助けてください! あの金髪の女がいきなりこの部屋の方達に攻撃を加えて女の子を拐おうとしています!」


 人食い男が布を取り顔を出す。人畜無害むしろ紳士みたいな初老の男だった。


「そこの女を取り押さえて少女を保護しろ!」


 首領らしき男が部下達に指示を出す。


「は?」


 屈強な男や剣を持った女などの戦士達が女の子を引き離しカナを取り押さえようと乗り掛かる。


「あんたら目玉曇ってんのか!? 犯人はあの男だって!」

「どう見てもお前の方が犯人だろ! あの人は腹に怪我してんだぞ!」

「いいから離せ!」


 普段ならこの人数ごときどうとでもなるのに体に力が入らない。あえて言うなら不幸中の幸いというべきか、女の子は女の人に治療されていた。さらにカナの体から体力が抜ける感覚が消えている、あの男の視界の外らしい。


「ならせめてあの男も捕まえろ!」

「静かにしろ!」


 男がカナの顔を地面に叩き付けた。お前後でぶっ殺すからな!

 カナが人間団子の拘束から抜け出そうと足掻いていると、部屋のどこかから声が響く。


「糞自警団が! 金髪の女じゃなくてそっちの男を拘束しろ!」


 息が絶え絶えだ。どうやら力を振り絞ってカナの無実を証明しようとしているようだ。


「どういう事だ?」


 自警団首領が首を傾げる。


「キャーーー!」


 女が叫ぶ。カナの視界の端で赤の液と肉が空で踊る。


「何だ!?」


 自警団首領が困惑した声で剣を構える。


「ふふふ、鰐の自警団の皆様お疲れ様でした。おかげでそちらの女の身動きを封じる事ができました」


 明らかに全快している感じ。不味い、たぶんこの自警団とやらが束でかかっても傷一つ付けられない。


「お前、俺達の仲間を殺したのか!?」

「あなた達だって牛や豚を殺して食べてるではないですか」


 人食い男が殺気が放つ。怒濤の展開に呆気に取られたのかカナを拘束してる奴らの拘束が緩む。その隙に拘束から抜け出して自警団首領とやらに放たれた人食い男の拳を受け流す。


「す、すまない」


 自警団首領を蹴飛ばす。


「あんた邪魔! これ以上被害増やしたくなければ倒れてる奴ら避難させろ!」

「わかった! 先程はすまなかった」

「いいから早くしろよ! だけど、自警団共は後で覚えてろ。後その女の子ちゃんと治療しとけ」


 人食い男は腹の傷も回復して余裕満々な笑みを浮かべている。

 さっさと目の前の人食い野郎を倒そう。


「小賢しいね」

「この化物が……」


 体力が奪われ切る前に。

 一気に距離を詰めて刹那の間に一撃必殺をいっぱい打ち込む。力が入らないなら数で潰す。反撃の隙を与えない。


「凄……」


 自警団の誰かがそう呟いた。

 人食い男は白目を剥いて地面に倒れた。万全なら死んでる。

 カナも疲れで尻餅を付く。自警団首領が近寄って言う。


「大丈夫か? 君もどこか怪我してない? 治療を――――」

「カナの事は良いから早くここの人達を避難させろって言ってるじゃん! ここは危険なの!」


 ヒマワリとかいう女は増援を呼んでいた。下手したらここは戦場になる。


「団長、空から魔機械が向かってきます!」


 外から首領の部下が血相を変えて室内に入って来た。


「魔機械だと……どういう事だ!?」


 魔機械は知ってる。かつて世界大戦で日本が投入し一方的に大勝利へ導いた魔宮兵器、日本史どころか各国の歴史の教科書にも載る程有名な話だ。


「それでどの魔宮兵器だ!」

「《空魔機械鷹乃女神》です!」

「そんなのに攻撃されたらこんな施設簡単にお陀仏だぞ。団員に告ぐ! 妖術使いと発明家、射程武器を持つ者達は臨戦体制、時間稼ぎだ! 他の者達は怪我人を魔宮の中へ運び入れろ!」


 部下達がてんわやんわしている。中には恐怖で震えている奴もいる。それどころか倒れてる人も怯えている。


「《空魔機械鷹乃女神》ってのはそんなにやばいの?」

「君は上位魔宮に入った事はないのか? かなりの実力者とお見受けするが」

「カナは今日魔宮に初めて入ったんだ」

「なんと……デビュー日だったか。それなのにこんな事に巻き込まれるとは災難だったな」


 正直この惨状は一割くらい大神院家のせいだけど。


「とりあえず君も魔宮へ入りたまえ」

「いや、カナも手伝うよ。ちょっと体力が回復してきた。そういえばさっきの女の子は大丈夫なの?」

「命に別状はない。言っちゃ悪いがこの食い荒らされた惨状に比べればマシな方だろう」


 でもあの女の子はこの場に一方的な被害者じゃない。女の子は自分の意思じゃないとはいえ殺す気で人の首を絞めた。カナは気にしないけど、罪悪感に苛まれきゃいいけど。


「そうださくちゃん達に魔宮から出ないように連絡しないと」


 そういえば荷物は全部あっちだった。


「まったく、世間では華音様が誘拐されて、同じ日にこんなしがない魔宮にテロリストが現れるとは」


 まあその二つの事件は繋がってますけどね。

 外から轟音の音圧が鼓膜を圧迫する。すると天井が瓦解して崩れ落ちて来る。


「何だと! 防御役の妖術使いはどうした!?」

「団長、報告です! 鷹乃女神に乗っていた魔眼所有者の能力で団員達の動きが封じられて応戦できませんでした!」


 それって実質全滅なのでは? 待って待って! こっちはまだ半分も魔宮の中に患者を運んでないんだよ。それに華音の手がかりの三人もいる。あっちはこっちに仲間がいるのわかってて攻撃してるの!?


「あなた達は怪我人を運んで! ここはカナが魔眼野郎と鷹乃女神を止める」

「無茶です。魔眼の方は睨んだだけで金縛り、鷹乃女神は上空で一方的に攻撃して来ます」


 そんな事をしている間にも瓦礫が落ち続けている。カナは瓦礫を弾き飛ばす。


「そんな事より早く逃げるんだ。このままじゃ全員死ぬぞ!」


 そう言って鰐の自警団とやらは首領改め団長が炎の力で瓦礫を破壊しながら団員達と怪我人を魔宮に誘導していく。

 カナは人食い男の仲間を回収しようとする。華音の手がかりだ。せめて一人くらいは確保しとかないと。

 悠長に探していると鰐の自警団の集団から断末魔が聴こえた。そっちを見やると光線の集中砲火が襲っていた。


「嘘でしょ!?」


 見事に広がる素晴らしい青空の中、鳥形の機械が凶悪な砲口を見せ付けている。団長が剣から雷を打つが光線がそれを飲み込み団長に直撃する。爆風で見覚えのある女の子が投げ飛ばされた。

 カナは女の子をキャッチする。もう華音がどうこう言ってる段階じゃない。これは完全に虐殺だ。

 カナは瓦礫、爆弾、光線の雨霰の中女の子を抱えて魔宮を目指した。

 そこから先の事はよく覚えてない。


 ☆☆☆


 ある魔宮攻略者がその時の事を語っていた。


「私は孫と一緒に魔宮周辺の準備施設でご飯を食べようと来ていたの。昼ご飯まで少し時間があったから色々見学してた時、《暴食の魔眼》を持った男がその場にいた私達を……。これでも私は名のある攻略者なの。抵抗するための体力も妖力も奪われて他の攻略者……主に人間が捕食されるのはただ見ているだけしかできなかった。正に文字通り地獄変ともいうべき光景だった。そのすぐ後、女の子が魔宮から出てきて孫が食べられそうになったところを助けてもらいました。女の子は人食い男とその仲間を退けましたけど……本当の地獄はここからだった。人食い男の他の仲間が魔宮兵器でここを空襲。妖怪の私は幸いにも命が助かった。孫も女の子に抱えられて魔宮に逃げ延びていたみたい。でもねぇ……まさか他の場所でもここにも負けない事件が起こっていたなんて。そういう意味ではあの女の子がいたのは不幸中の幸いだったかな……感謝しなきゃいけないわね」


 後に第六地獄変事件と呼ばれる地獄変事件、その被害者の言葉。

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