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第零話《魔眼の者達》

 魔宮。

 それは戦国時代に突如日本中に現れた迷宮。そこには魔を有する物達が闊歩し時折魔宮から出現しては人里に下りて害を与えた。

 そして現代日本、確認し得る限りの魔宮は出入口に不可視の障壁を張り魔物達の侵入を防いでいる。

 しかしこちらの世界にも魔宮を根城にする者達がいる。それは富豪かはたまた悪人か……。


「それで首尾はどうだ?」


 言葉を発した黒髪の男は少年とも青年とも取れる風貌、長身だが細身、よく見れば顔立ちはとても整っている。しかし、それ以上に目を引くのはその眼。


「はっ、例の少女の件ですが……はっきり言って難航しております」


 部下の言葉に男はぎょろりと部下を見る。

 その眼には白がない。万物より黒いのではないのかと思わせるような黒い眼がそこにある。白はない、あるのは黒の世界と赤の紋様だけ。

 部下はびくりとして焦るように現状を報告する。


「やはりあの五大公爵家の令嬢だけあって護衛も強く拉致するのは難しいです」


 黒眼の男は落胆するように溜め息を吐く。


「そんなの殺せばいいだろう」

「殺してよろしいのでしょうか?」

「当たり前だろ。《運命の神眼》を持つ大神院華音以外は僕にとって価値はない。そして君もね」


 男の黒眼はさらに深く闇に落ちる。


「ひっ!」


 部下は男同様自分も魔眼を発動する。男の魔眼に対抗しようと視界を炎で真っ赤に染める。しかし炎が闇に呑まれ、部下の視界は黒に染まる。


「君ごときのただ視界を燃やすだけの魔眼で僕の闇を生む《暗黒の魔眼》に勝てるわけないだろう」


 部下は「うぅぅああ」と呻き声を上げる。


「仏の顔も三度まで。残念ながら僕は仏じゃないから一度だけしか許せないんだ。と、言っても君はもう全ての感覚が闇の中だろうけど」


 男の前にいた部下は床に倒れる。受け身を取れず打ち所が悪かったのか血が流れる。


「君は六人目だ。一人目は目、二人目は感覚、三人目は運命、四人目は感情、五人目は記憶、そして君は魂だ。地獄にも天国にも行けず転生もできない、永遠にその魂を闇の中でさ迷う事になる。そして邪魔だ、消え失せろ」


 部下は闇に吸い込まれ消えて行く。するとどこからか初老の男が現れ男にワイングラスを渡す。


「ありがとう、執事さん」


 男はソファに座り背を預ける。


「一つよろしいでしょうか?」

「なんだい?」

「なぜ会長は大神院のお嬢様を捕らえようとするのですか? 彼女の眼がなくてもあなたならば日本を支配できるはずです」


 男は無邪気に笑う。


「大神院華音は僕の《暗黒の魔眼》に唯一対抗し得る眼《運命の神眼》を所有しているんだよ? それに彼女の眼が運命も魂も闇に染まった僕を止められるか興味沸かない?」

「残念ながら私はそんな酔狂に付き合ってはいられません」


 初老の男の眼が赤く渦巻く。


「はははは、本当に君は真面目だな。じゃあ真面目な君に命令だ。大神院華音を捕まえて来い。君なら余裕だろう。失敗はしないでくれよ? これでも罰を考えるのに結構四苦八苦してるんだからさ」


 初老の男は片膝を着いた。


「かしこまりました、エンペラー」


 そう言い残し初老の男は部屋から消えた。

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