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「脳人間経 名品(めいぼん)」

作者: 頼春彦

目覚めたる人は、弟子の空樹一人を伴い

西遊された折り、大須観音に立ち寄られた

参詣を終えられ、手近な喫茶店で小倉トオストを頬張り

一息をつかれると仰った

「空樹よ、釈尊は誕生された時

七歩歩かれて天と地を指し

天上天下唯我独尊とのたまいて

人間の尊厳を宣し給うた

されどこの地に生まれた赤子は皆

天上天下唯我独尊と泣いて

おのれの文化が万国共通であると宣言しているのだ」

「まことに尊者よ、彼らがメイダイと言うと

明大を言わず、名大を言うのです」

「まことにそうであろう

彼らは赤味噌は味噌であるが

白味噌は赤味噌で無いが故に

白味噌は味噌では無いと言う

かくも先験的推論過程を無自覚に破砕するは

甚だごう深き者どもと言わざるを得ない」

空樹は尋ねた

「尊者よ、天麩羅にソオスを掛ける

この罪深き人々に一条の救いなりとも有るのでしょうか」

尊者は答えて言われた

「されば空樹よ

東西の大都市の狭間に没したりと言えど

ナゴヤは都会なり

彼らは独自の作法を持つナゴヤダギャアなり

彼らはおのれの文化を至高とし、正義と見なす

彼らの自文化至上主義は文化相対主義の対局なり

されば我らにとっては些細な差違も

彼らにとっては驚天動地の災難となる

もし大日如来が彼らを哀れみ給い

彼らが文化相対主義に開眼する時

彼らは我らにも増して

真の文化相対主義者に変貌するのだ

テキサスでもシリアでもアマゾンの奥地においても

彼らは宇宙より飛来せる異生物の如く

何事にも囚われず異文化を観じ

慈悲の行いを行うであろう

この末法の巷にあって苦しむ衆生に対し

菩薩の行いを行うであろう

大日如来の光はナゴヤダギャアを菩薩に変えるのである

ナゴヤはナゴヤダギャ菩薩の涌き出ずる泉となるであろう」

そう言い終わると、尊者は真言


ギャアミャア ミャアギャア ナゴヤダギャア ボサツダガヤァ


をそっと唱えられ、空樹もそっと唱和した


                 了

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