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怖気を震う戦い④

「距離を取れ!」

 先ほどとは一転して、カッサーノが切羽詰まった声で指示を出した。傭兵達は一斉に熊から飛びのく。 それを臆病者の成れの果てだと嘲弄したガルデリオが、部下に命じて弓を射させた。

 焦燥に縁取られたガルデリオの表情が一変した。鋼鉄の矢じりが熊の肉体にはじき返されたのである。 熊は涎を垂らしながら公爵家の兵士達に襲いかかった。カッサーノはじっと睨んだままだ。攻撃する隙を探している。

 不意に、アルバニアがむくりと起き出した。額についた土を払うと、完全に魔物と化した熊を見て肩をすくめた。

「やれやれ、もうどうにもならないじゃない」

 彼女はそう呟くと、再び不明瞭な言葉を並べたてた。白色の燐光が体にまとわりつく。

 怒れる熊は公爵家の兵士の首を、その自慢の牙で引き千切っていた。激しい痙攣と共に哀れな犠牲者の体が動かなくなる。

 アルバニアは熊が死体に気を取られた一瞬のうちに攻めかかった。反対側からは足を引きずりながら、ブランドが距離を詰めている。

 熊が顔を上げた。真っ先に見たのはアルバニアの方である。

「やばっ!」

 と叫んだ彼女は白色の燐光を両の腕に集中させた。

 両の腕が濃い白色に包まれる。彼女はそれで顔面を守った。熊の腕がアルバニアの腕に直撃し、彼女は再び地面に転がった。

 だが、ブランドが剣を突き立てた。今度はより深く、そして強く。

 さしもの熊の毛皮といえども、ブランドの全体重を乗せた突きを防ぐことは出来なかった。刀身が半分ほど突き込まれ、切っ先が内臓をえぐった。

 熊が悲鳴を上げながらブランドを薙ぎ払った。傭兵達が次々に攻撃を加える。カッサーノが冷静に左目を剣で突き刺し、他の傭兵達はブランドの剣にしがみつき、喉元に飛びかかり、熊に打撃を与えていく。

 けれども、完全に魔物となった熊は、なお一層の精力を以ってこれらの攻撃を全て弾き返した。

 傭兵達は地面に叩きつけられ、さすがのカッサーノとて、すぐには身動きを取れなかった。もがくようにして地面をはいずり、がっくりと頭を落とした。

 死屍累々、という言葉がまさしくだろう。動けそうな者は誰一人としていない。倒れている者、恐怖に震えている者、様々だ。

 へたり込んでいたガルデリオが情けない声を上げた。

 熊がその黒々とした瞳で次期公爵を睨む。彼は悲鳴を上げながらあとじさりをして、すぐに木にぶつかった。僕の右手前方に彼の姿がある。

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