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奇妙な成り行き⑥

 翌日、早速傭兵達が集められた。傭兵会所の目の前にある広場に。

 今回は十人ほどだ。それにクーランセン公爵家の兵士が二十人つく。

 厄介なのは熊が森の中にいるということだ。森の中にいる限り、多くの人員を要することが出来ないのだ。死体を回収するのも一苦労であるから。

「森の外に引きずり出せると思うか?」

 完全武装をしたカッサーノがブランドに尋ねた。鈍色の鎧が曙光に晒されて輝いていた。

 若き傭兵は、少しだけ考えるそぶりを見せてから首を振った。

「よほど上手くやれれば。ただ、この人数でそういう余裕があるかどうか……」

「だろうな。我々で片を付ける必要がありそうだ」

 東の空がやや白み始めた時刻であった。

 広場にはガルデリオ・クーランセンの率いる一隊の他、カッサーノの率いる傭兵の一団がいる。辺りは物々しい雰囲気に包まれ、今はガルデリオが森に入るか否かで喧々諤々の議論になっていた。

 激しくやり合うガルデリオを横目に、僕は背負ったアルバニアに鼻先を寄せた。

 当然のこと、彼女が夜明け前に起きるというような殊勝な行為をするはずもなく、風呂に叩きこむのも可哀想なので、僕が背負うことになったのである。

 ブランドは甘やかしすぎだと言うが、たぶん、僕がいなかったら彼がそうしていただろうという気はする。

 やがて結論が出たらしい。ガルデリオも行くことになった。さらに十人の兵士が追加されて、カッサーノが眉間にしわを寄せた。

「雑魚を何人集めても邪魔なだけだ」

「公爵家の精鋭が雑魚だと言うのか?」

 彼の言にガルデリオが鼻白んだ。この傭兵会所の主は勇ましい顔で腕組みをし、公爵家の兵士達を睨んだ。

「そこまで言うのなら、一番強い奴を出せ」

 カッサーノが如何に強靭な戦士であるといえども、もはや壮年に足を掛けた人間であることに相違はない。往年の力強さはとうに失われている。

 その老いた体を見て、若い公爵家の兵士達が鼻でせせら笑った。

 中でもひときわ体の小さな兵士が出てくる。筋肉の鎧を身に纏っているようで、見るからに鍛え上げられていると分かる。背丈は僕とそう変わらないだろう。カッサーノと比べれば頭二つ分は小さい男だ。

 しかし、公爵家の兵士達は皆、その男に敬意を表していた。それほどの実力の持ち主なのだということが、はっきりとする。

 その男が鞘に収めたまま剣を握った。カッサーノも同様に剣を鞘に収めたまま構える。

 二人の男が対峙する。傭兵達は、にやにや笑いをしていて、それはもちろんのこと相手方も同じだ。どちらも、この男が負けるはずがないと思っていたのだ。

 勝負は一瞬だった。

 ガルデリオが合図を出した途端、二人が激しくぶつかり合った。

 ふっ飛ばされるんじゃないかと思った小柄な男は、物凄い膂力でカッサーノの体当たりを受け止め、傭兵会所の主はそれにちょっとだけ眉をひそめた。

 ただ、互角だったのはその一瞬までだった。

 小柄な男はカッサーノの体を受け止めるので精一杯だった。受け流そうと巧みに体を動かすが、壮年の傭兵は強引に押しこみ、がら空きになった下半身を足で払った。

 小柄な男がすっ転ぶ。張り詰めていた息が弛緩し、ああ、という溜息が漏れた。

 これにて勝負はついた。傭兵二十人に対して公爵家の兵士は十人という割合で決まった。

 先頭に立つのはブランドである。隣にはガルデリオが陣取ったものの、居心地は悪そうだ。

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