奇妙な成り行き⑤
僕とブランドが連れ立って外に出た時、辺りはすでに真っ暗だった。
家々から漏れる明かりで夜の帳がより深く、濃くなっている。
残念なことだけれど、僕がアルバニアの部屋から戻ってきた時、使者は宿の傭兵達に小突かれ、しこたまお酒を飲まされて、酩酊状態だった。
とてもじゃないが傭兵会所に戻れるような状態でなく、仕方なしに僕達二人だけで行くことになった。
「ああ見えて、カッサーノは優しい男だよ」
ブランドが苦笑しながら言った。僕からすれば、あの厳格な会所の主には畏怖しか感じないわけだけれど、それはただの勘違いだというのである。
「人が死ぬことに敏感なだけだ。若い奴が無鉄砲なまま死んでいくのを、何よりも嫌うんだ」
「……それ、僕は嫌われていませんか?」
「内心では苦虫を噛み潰しているかも知れん。ただ、お前みたいな奴は嫌いじゃないと思うよ」
何という詭弁だろう。慰めにもならない言葉を聞いたって、僕の心は焼けつくような感覚に苛まれるだけだ。
すぐに広場へと至った。夜は人通りが少なくなる。今みたいな時は特に。
広場の内部だって閑散としていた。昼間はあれだけいた傭兵の見張りも、今はその姿を三分の一にまで減じている。
傭兵会所の方へと回ると、夜だというのに男が一人立っていて、鬼の形相を辺りに向けていた。きっとお化けや強盗がいたとしても、今日は表に出るのを憚ったことだろう。
僕達が近付くと、ジェラルド・カッサーノは恐ろしげな視線を僕に向けた。無視されたブランドはちょっとだけ眉をひそめつつ、この傭兵会所の主に頭を下げた。
「仰せの通り、ブランド・メルザリオ、他一名参りました」
「三名呼んだはずだが?」
「生憎姉は一杯ひっかけて眠っておりました」
「そんなことはないはずだ。あの女が酒を飲む前に呼びに行かせた」
カッサーノは冷淡に言い放った。そういうところまで計算づくなのか、と驚いていると、彼の視線が僕を貫いた。
「どこの誰の入れ知恵かは知らんがな」
そのまま傭兵会所の中に通された。
応接室は別にあるはずなのだが、何故かエントランスに巨大な円卓が置かれ、そこに十人ばかりの男が腰を下ろしていた。
カッサーノが、ぽっかりと空いた一角に座ると、男達の目は揃って僕達に向いた。
「前回熊と戦った中で、今回参加できそうなのはお前達だけだ。……あの女はおまけみたいなものだがな。これから話し合いをする。何か気になることがあれば言え」
そうカッサーノが告げると、円卓の一角に座っていた目の覚めるような美貌の青年が、くつくつと笑う。その様子に、何となくだがメッキを施された、張りぼての姿が思い浮かんだ。余裕のない人間にありがちな、忙しなさが目についた。
「なあに、たかが熊だ。まだやりようはある」
それがガルデリオ・クーランセンであると知らされたのは、話し合いのあとだった。




