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奇妙な成り行き③

 宿屋へ帰る途中で、ガルデリオ・クーランセンが都市へと入ったという報告を受けた。

 どうやら西側の出入り口を使ったらしい。正門から続く大通りには沢山の人出があったが、彼らは揃って西側の通りへと向かっていった。

 その群れをなす獣みたいな人の流れをぼんやりと追っていると、またしても声を掛けられた。

 振り返るとそこにはブランドがいた。彼の怪我は大分良くなっているらしい。彼自身の生命力というところもあるし、見目ほど怪我が大きくなかったということもある。

「なんだ、怖い顔をして」

 ブランドは柔和に笑っていた。そういうところは姉のアルバニアに似ている。頭二つ分は大きな彼を見上げて、僕は溜息をついた。

「何でもありません」

「拗ねているのか? どうせ難しいことばかり考えているとでも言われたんだろう?」

 僕はむっとしながらブランドを睨んだ。彼は、そんな程度では怯んでくれず、逆に慈しむようにして頭を撫でてきた。

「下手に知恵が回るから不安になるんだろうな。まあ、気にするなよ。俺達が何とかしてやるから」

 それでは困るんだ、とは口が裂けても言えない。アルバニアみたいなものぐさ相手ならばともかく、ブランドみたいな人間に下手なことを言ったら、それこそ魔女狩りみたいに問いただされる可能性もある。

「そうですね」

 だから力なくそう呟いて、さっさと宿に戻った。食堂では傭兵達が怖い顔をして議論をしている。その様子を呆れた顔で見ていたアレッサンドラは、僕に気が付くと手招きをした。傍らではブランドが眉間にしわを寄せていた。

「楽しい返済の時間だよ」

「楽しいのはあんただけだろう?」

「黙っていな、ブランド。楽しくないと思うなら、さっさと借金を返しちまえばいい」

「そうして無鉄砲な奴が死んでいくんだ。あんた、いずれ破産するぞ」

 このブランドの提言を、アレッサンドラは笑殺した。

「馬鹿を言え、私だって貸す相手くらい見ているよ。こいつはそんな無茶はしない。地道に、真面目に生きる男だ」

「ふん、どうだかな。そんな奴が一人で森の奥深くに入るものか」

 二人はじろじろと睨みあっていた。

 その様子を怖々と僕が窺っていると、寝起きです、と言わんばかりのアルバニアが寝癖たっぷりに食堂へと現れ、内部の喧騒に目をぱちくりさせていた。

「何? 戦争?」

「違いますよ、アルバニア。公爵様の御嫡男が、さっき都市に到着したんです」

「ああ……、なるほど。神経尖らせてるのね。アレッサンドラ、今日は二日酔いだから、弱めのお酒をちょうだい」

 アルバニアは欠伸をしながら言った。

 僕はかぶりを振り、彼女を引きずって浴場へと向かった。

 幸いにも人はいない。そのまま、彼女を湯船に投げ入れる。数秒の間があって浮かびあがった時、アルバニアは恐ろしい顔を僕に向けていた。

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