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邂逅⑦

 ブランドの話が終わるや否や、傭兵達は弾けるようにして宿屋を飛び出していった。

 彼らが言うには、早晩、森の近くへ行く仕事が停止されるだろうというのである。もっと酷い時は都市の外に出ることさえ許されないかもしれない。

 そうなればお手上げだ。その日暮らしをする者も多い傭兵にとって、稼ぎ時に稼いでおくのは当然の成り行きだ。

 特に腕の立つ連中は。僕みたいにドブさらいだのゴミの管理だのということばかりにかまけている、腰抜けにとってはあまり関係のないことであった。

 だから僕はしばらく食堂の、長机の表面に残った傷に視線を落としていた。それで、こちらに近づいてくる者に気が付かなかった。

「お前には世話になったな」

 顔を上げるとブランドがいた。彼は水の入ったグラスを片手に僕の真ん前に座ると、両の肘を机につき、組んだ指の上に額を乗せた。

「いえ、僕は出来ることをしたまでです」

 僕の方も、ブランドから視線を逸らした。しばらく微妙な沈黙がたゆたった。食堂の中はすでに閑散としていて、女給がぶつくさ文句を言いながら、傭兵達がちらかしたあとを片付けている。

「運が良かった」

「え?」

「お前は運がいいと言ったんだ」

 そこでブランドは初めて顔を上げた。その碧眼は真っ直ぐ僕を捉えている。

 怒っているようにも見えるし、悲しんでいるようにも見える。僕はその視線にたじろぎながら、緩く首を振った。

「そんなことはありませんよ」

「……たぶん、こう考えているだろう。自分が代わりに死んでいれば、と」

 それは半分当たりだった。半分どころか九割は当たりだ。

 確かに、そう思わない部分もあるにはある。が、それは些細なことだ。大部分はあの傭兵の勇敢さと、僕の憶病さに嫌気が差していた。

 あの時、あの傭兵が僕を助けようとしなかったら、彼は生き残ったことだろう。

 彼は立派な武具を身につけていた。僕なんかよりもよっぽど都市に貢献していたに違いない。

 僕は口をつぐんでいた。その沈黙が何を意味するのか、ブランドははっきりと理解したようだった。

「馬鹿なことを言うんじゃないぞ。お前を殴らなければならなくなる」

「でも――」

「お前がどう思おうと、お前は生きていて、奴は死んだ。あまり死んだ人間を侮辱してくれるな」

 何とか弁明をしようと口を開きかけたその時、アレッサンドラに呼びつけられた。

 アルバニアをさっさと起こして来いというのだ。ちらとブランドを見ると、彼は無表情で顎をしゃくっていた。どうやらこの仕事は、まだ僕の物であるらしい。

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