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邂逅⑤

「何か元気ないじゃん」

 その夜、僕はブランドの言いつけどおり、アルバニアの世話を再開することにした。

 ここ数日というもの避けていたから、僕の方は気まずい思いをしているのだが、アルバニアは一向に気にしていない様子である。

 今などベッドの上に胡坐を掻いて、夜空を見ながらぼろぼろと夕食のパンをこぼす有様だ。

「アルバニア、食事に集中してください」

「ええ? してるわよ。今食べているのはパン。これまでオリーブの塩漬けと、干し肉、それから野菜を何種類か食べた気がするわ」

「そういうことではなく。これから寝るんでしょう? ベッドの上に食べかすを落としたら、掃除が面倒ですよ」

「そんなの気にしないわよ。あなたがやるんだもん」

 こんな状態である。僕は溜息をついた。確かにアルバニアの世話とは、そんな感じだったな、と僅か数日のサボタージュを悔いる羽目になった。

 僕は急いで部屋を出て、一階の洗濯場から乾いたシーツを持ってきた。帰ってきた頃にはアルバニアの食事も終わっていて、彼女は食べかすをシーツの上に落としているところだった。

「ほら、アルバニア、どいてください」

「えー、抱っこ」

 と手を伸ばしてくるアルバニアを払いのけ、半ば引きずり倒すようにしてベッドからどかせると、そのままシーツごと取り換える。

 何というか老人の介護をしているみたいだ。床に直接寝ころがったアルバニアは、ぼんやりと天井を見上げている。

「どうかしましたか?」

「ううん、……ブランド、遅いなって」

 僕の心に鋭い刃が付きつけられたようだった。心臓が高く跳ね、呼吸が浅くなった。なるたけ平静に見えるよう手だけは止めなかったが、視線は純白のシーツに落ちた。

「嫉妬?」

 アルバニアが、にやにや笑いながら問いかけてくる。途端に顔が熱くなって、僕はかぶりを振った。

「違いますよ。あの熊、大きかったし、危険じゃないのかって思っただけです」

「ふうん……大丈夫じゃない?」

 早速ベッドに寝転がって、この怠惰なアルバニアはそっけなく答えた。

「あいつら、結構腕が立つもの。熊くらいなら問題ないわよ」

「でも、凄く大きかったんですよ」

「ああ、聞いた聞いた。たぶん魔物になりかけているんでしょうね。良くあることよ。あの森、結構物騒な場所だし」

 アルバニアはなおも関係ないというそぶりである。昼間も寝ていたというのに、今だって暖かな羽毛の布団に包まれて、心地よさそうに目を瞑っている。

「出て行くならカーテンと消灯よろしく」

「出て行かなかったら?」

「別にいいけど、アルバニアちゃんの寝顔を見て喜ぶ、変態だっていう謗りは免れないでしょうね」

 それだけは避けねばなるまい。アルバニアなんかに発情した日には、それこそ神からそしりを受ける羽目になるだろう。

 僕は首を振り、カーテンを閉め、部屋の中央に置かれていた小さなランタンの火を消した。

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