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邂逅④

 すぐに森への捜索隊が組まれた。

 あまりにも急だったから十人ばかりしか集められなかったのだそうだ。それでも皆が皆、仰々しい武具に身を包み、物々しい雰囲気で僕の先導に付き従っている。

 森の前まで来ると、すでに森を管理する傭兵達が怖い顔をして待ち受けていた。あとのことは彼らが引き継いでくれるらしい。

 みすぼらしい僕は、森の深部へと入っていく傭兵達の列を見送ることしか出来なかった。

「御苦労だったな」

 そう肩を叩いてくれたのはブランドだった。彼はいつになく真剣な顔をして、森の深くを見つめている。光が差し込む余地もないほど鬱蒼と枝葉が茂っていた。

 また、死んでしまったかのような静けさが戻ってきていた。あの熊の咆哮も、大地を揺さぶる衝撃も見出すことは出来そうになかった。

 枝葉の影を見ているうちに、あの傭兵の男の姿が思い浮かんだ。彼はどうなったのだろう? 彼を見つけられるだろうか。

「あの、僕は……」

「森に入って何が出来る? その格好で」

 僕は、自身とブランドの格好を見比べた。

 僕の方は亜麻の上下を身につけているだけだ。

 これに対してブランドは鈍色の武具を全身に纏っている。武器だって持っている。

 他の男達も同様である。慎重な様子で森へと入る男達も金のかかった格好をしている。未だに借金を返せずにいる僕とは、何もかもが違うのである。

「お前は先に帰っていろ。しばらくは忙しくなるだろうから、アルバニアのことは頼む」

 そう言い置いて、ブランドも森の中に入っていく。僕はその背中を見つめるばかりだ。

 彼は誰と比べても背も高く、そして筋骨隆々な戦士だ。僕の方はその日の飯も食うや食わずで、元奴隷らしい貧相な体をしている。比べるのだっておこがましい。

「そうだ、僕は無力だ……」

 自らに戒めるため、口に出した。出した途端、無念に包まれた。

 傭兵達の列が影に紛れて見えなくなるまで、僕は日差しのあるところから彼らの背中を追った。

 きっとどれだけ頑張っても、彼らのようにはなれない。人から見上げられるような、立派な戦士には近づけないだろう。

 僕は元奴隷だ。それくらいの分別はある。彼らが修行を始めた頃、僕はどこの誰とも知らない騎士の元で地獄の生活を送っていたのだから。彼らと同じような、武芸の達者な人間になれると思う方が、よほどおこがましい行為なのであろう。

 結局、夕暮れ時まで近くで薪を集めて、僕は都市に戻った。

 まだ傭兵達は帰ってこない。あの熊は、それほど強大で、そして狡猾な生き物なのだろう。どうか一人も欠けることなく――それは僕を助けてくれた傭兵も同様だ――帰ってきてほしいと思う。

 僕にはそれしか出来ないのである。月を見上げて祈ることしか……。

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