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初めての仕事⑥

 その時だった。夜霧を切り裂くように二つの小さな光が僕の視界に映ったのは。

「アルバニア」

 と同行者の名を呼ぶと、彼女は気のない様子で振り返り、そして顔色を変えた。

「あんた、こっちに来なさい」

 そう言われて、ある倍なの傍らによる。見れば、光が四つに増えていた。それが六つ、八つと数を増していく。

 あれは一体何だろう?

 その疑問に答える間もなく、アルバニアは突然、僕の手を掴んで駆けだした。

 引きずられるようにして足を動かす。木の根っこに躓きながら振り返ると、小さな光は今や十六を数えるほどになっていた。

「あれはなんです?」

 息を切らしながら尋ねると、汗一つ掻いていないアルバニアが、指笛を吹きながら喉の奥から絞り出すような声を上げた。

「狼よ!」

 また振り返る。光の数は二十に増えている。二つ一組で微かな残光を伴いながら、僕達とほぼ同じ速さであとについてくる。その光の軌跡が闇の中にうっすらと残っているような気がする。

 けれども狼の声は未だ聞いていない。

「馬鹿! 足を動かしなさい。追いつかれたら餌になるわよ」

「でも、狼は鳴くものじゃないんですか?」

 そう返すと、アルバニアは切羽詰まった顔を僕に向けた。足は動かしたままだ。つまずこうと転ぼうと、彼女がものすごい力で引き上げてきて、後方を気にしながら再び駆け出すのである。

「あいつらに常識は通用しない。この森の狼は魔物との混血種なんだから」

 魔物、という言葉が出て、腹が冷える思いがする。

 東の騎士領でも魔物は問題だった。若い騎士達が必死で戦っていたのを思い出す。

 こと魔物退治にかけては奴隷を肉の壁にするような暴挙もなく、真摯に打ち込んでいたのではないだろうか。

 何故かといえば、今のところ魔物は何らかの要因で突然変異を遂げた生物のなれの果てだと考えられているからだ。

 人の死体だって放っておけば魔物になる可能性もある。だから奴隷達を戦いに連れて行かないのだ。

「ちっくしょう!」

 アルバニアが叫んだ。何かと思って振り返ると、二十ばかりの光が徐々に近づいてきていたからだ。

 どうやら狼達は本格的に距離を詰める気になったらしい。その獣の息遣いが僅かに聞えてくる。それで僕も相手を確信した。

 狼の息遣いが近付いてくる。徐々に足音も聞こえてくるようになる。地面を蹴り、跳躍するその音が。

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