初めての仕事②
頭から湯気を立たせたアルバニアが、ふてくされた様子で朝食を取っているのは、それから僅かに十分後の光景である。体中から石鹸の香りが立ち上ってきて、それには何故か耳朶が赤くなる思いである。
アルバニアは朝だというのに疲れ切った顔をしていた。
「はあ、なんつう起こし方よ……」
ベーコンにナイフを刺し、そのまま齧った。
「でも、あんたを起こすのにはちょうどいい」
一仕事終えたアレッサンドラは心地よい笑みを浮かべている。
今は女給が、僕とアルバニアの分の昼食を作ってくれているところだった。森での作業は一日仕事になるだろう、とアレッサンドラは言うのだ。
「たかがキノコよ?」
とアルバニアが口を尖らせると、宿の女将が肩をすくめた。
「今年は不猟らしくてね。森の奥深くまで行かなきゃならないだろうさ」
アルバニアは苦々しい顔をしたが、もはや口を尖らせるつもりはないようだった。
何だか分からないが、僕の方を見て口をへの字に曲げ、そのまま深々と溜息をついたのである。
「この坊ちゃんを連れて、森の中を彷徨わなけりゃあいけないわけね?」
「そうさ。でないと、あんたは早晩、あの快適な部屋を追い出されて固い石畳の路地で眠る羽目になる」
アルバニアは、その光景に身震いをし、それから僕の方にナイフの先を向けた。
「こいつはどうなのよ?」
「あんたよりもずっと真面目だから、もう少し猶予がある」
「ちっ! ブランドがいればこんなことにはならないのに」
「あんたは弟に頼るのを止めな」
「馬鹿ねえ、アレッサンドラ。ブランドが勝手に世話を焼くの。私は何も言っていないわ」
まるで救い難い者でも見るかのように、アレッサンドラは半眼を向け、そして僕の肩を叩いた。
「人間、こうなったらお終いだ。あんたは気を付けな」
僕が頷くとアルバニアは肩をすくめた。
結局、僕達が都市を出たのはアルバニアを起こしてから二時間も経った頃であった。
日は南中へ向けて勢いよく駆けあがっているところで、猛烈な白光が差しこんでいた。
「うわー。帰って良い?」
「アレッサンドラが見ていますよ?」
「…………じゃあ、出る」
アルバニアは深々と溜息をついて、渋々といった感じで歩きだした。
僕もその後を追う。今日も天気がいいからか、大通りには沢山の人出があった。
アルバニアはそれらを簡単にすり抜け、僕はもみくちゃにされながら、やっとの思いで正門に至った。




