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私の故郷と拾い物、そして探知

「見えてきました、あれが入り口です」

 闇に包まれた白い草原をひたすら飛び、やっと世界の入り口が見えてきた。

 その入り口は、巨大な石の門だ。

 ところどころに劣化によってか、ひびが入っていて、かなりの年季を感じさせるが、それで崩れる事は無いとこちらに確信させるくらいに弱さは無く、こちらを圧倒する迫力を放っている。

 その表面には私がこの世界にいた頃に使われていた文字が刻まれ、闇の中でもその文字のところだけは薄く光を放っていた。

 この門は私がこの世界を出た時と変わっていないのか。

 遠い記憶の中にある門と目の前にある門を照らし合わせ、少し懐かしい気持ちになる。

 楽しんでいる暇はないので鑑賞はまた今度にしておこう。

 門の前でオンジェヤが止まったので私も一緒に止まる。

「開け、門よ、世界へと、世界達へと、つながれ、我、詠唱す」

 オンジェヤがそう唱え、巨大な門に触れる。

 すると門に刻まれた文字の光が増し、とても直視できないほどの輝きを放つ。

 と同時にゆっくりと、重く、腹に響く音を立てながら、巨大な門の戸が、向こう側へと開き始めた。

 戸の隙間から暖かい何かが出てきて私たちを包み込む。

 いよいよ私は久しぶりの故郷と対面となる。

 白い草原にチョブォブで撒いた暗闇はしばらくすると消えるので、放っておき、私は世界へと入った。

                       ・

 次の瞬間気が付くと、そこはとても高い場所だった。

 強い風がビリゥヴァを引っ張り、思わずよろけるが、体勢を立て直し、辺りを見渡してみる。

 すぐ近くに広がるのは植物が生えていない灰色の地面、しばらく不毛の地が続き、かなり離れたところに自然の緑色が見える、その先に複数の家の屋根が見えた。

 普通の家の屋根以外に背が高く四角いビルも見える。

 あんなビルを建てる発想は私がこの世界にいた頃にはなかったな。

「それで、ここからどうしますか、ガゼルさん」

「ふむ、まずは情報収集だな」

 故郷の技術の進歩を感じながら、私は風にはためくビリゥヴァを手繰り寄せて手を突っ込む。

 右腕がないので少し面倒くさかった。

 無くなった右腕は血を止めて、修復の詠唱をかけておいたが、すぐに回復するわけではない。

 がそれを言うとオンジェヤがまた責任を感じてしまいそうなため、口に出さず、態度にも出さない。

 ビリゥヴァの中を探り、私は目当ての物を取り出す。

 物、というより者だが。

 取り出したのはオンジェヤの攻撃を受けて瀕死状態のマリィコールズの一人。

 どんなふうに当たったのか四肢がなくなっているが奇跡的に生きている。

 今のところショックで気を失っていてその口から微かに息が漏れていた。

 見た目は幼く中性的だが、胸部が少し服を押し上げているのでおそらく女だ。

「そんなのいつ拾ったんですか?」

「オンジェヤの攻撃中に偶然発見してな、転移の詠唱でビリゥヴァの中に回収しておいた」

「ちゃっかり何をやってるんですか、さすがガゼルさんですけど、それで何に使うんですか?」

「このマリィコールズから他のマリィコールズの居場所を探知する」

 私はマリィコールズの頭に手を置いた。

 マリィコールズに与えられた二つの力、その片方は白い闇だが、もう片方が創造魔法と呼ばれるものだ。

 その名の通り使い手のイメージ通りの物を作りだすというすさまじい魔法だが、魔法というだけあって魔力と呼ばれる人の身体に宿る力を使う。

 私はその力をたどることが出来る。

 色んな世界を巡ってきたが、その中でも魔法と呼ばれる力を使っている世界は多い。

 何故かわからないが世界を構築する段階において魔法の概念が組み込まれることがよくあるからだ。

 そのため、世界を飛び回っていると嫌でも魔法に精通するようになる。

 これはその時に編み出した探知魔法だ。

 かけた相手と同じ魔法を使った者、または同じ魔法を使えるものを世界の中のどこにいても見つけることが出来る、同じ魔法しか持たないマリィコールズには有効な手段になる。

 ちなみに詠唱と魔法は違うので詠唱者には反応しない。

 他の世界から見たら詠唱も魔法みたいなものだがな。

 という事で私はマリィコールズの場所を検索した。

 手を置いたマリィコールズの中に沈んでいくのような感覚の後、中に存在する魔法の形というか気配というかが識別できるようになる。

 そして、それと同じものを探してみる。

 すぐに反応は返ってきた。

 ここから少し離れた場所に密集した気配。

 数はおよそ九十人くらいだろうか。

 その反応が私たちのいる場所から遠ざかっていく。

 おそらく私たちを警戒して距離を取っているのだろう。

 それにしても奴らはこんなに数をそろえて何をやるのだろうか。

 マリィコールズの数は多いが基本十人くらいで組んで行動していることが多い。

 それなのに今回はその基本を大幅に飛び越している。

 人数が多いという事はそれだけ大きな事をしようとしているのだから、今回のこの人数は相当大変なことをしでかそうとしているに違いない。

 そうとなればすぐに追撃しなければなるまい。

「場所はわかった、すぐに行く、オンジェヤはどうする?」

「もちろん行きます、ついて行きますよ!」

 結構飛んで、先程かなり大規模な詠唱を行使した後なので疲れてないかと心配したがオンジェヤはそんな疲れを全く感じさせない態度で私の質問に答えた。

「よし、なら行こうか、とその前に……縛れ、止まれ、何もかも、我、詠唱す」

 連れてきたマリィコールズを置いていくわけにはいかないので私は詠唱をする。

 与えられた能力を使えなくして、四肢はすでにないが動けないようにし、時を止めておいた。

 これだけやれば心配はないのでビリゥヴァの中にしまう。

「そんな詠唱初めて見ました、えげつないですね」

 見ていたオンジェヤが唖然としていたが、これは私がこの世界にいた時にはよく使われていた詠唱だ。

 この世界の凶悪犯罪者への罰として、また危険な生物を捕獲するため、使っていた。

 時代の流れを感じながら、今度は私が案内するためにオンジェヤの前を飛び、マリィコールズがいる場所へと飛んで行った。

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