洗脳解除と絆、そして心配
脳に刻まれた刻印をどうするのか、そんな事は簡単だ、クォリョはワンパターンな攻撃をただただ続けているだけなのだからそれを防御しながら脳をいじくってやればいい。
いじくるといっても実際に頭を切り開くわけではない。
解析で見える頭の中の図を脳内に映しだし、ちょちょっとシワを整えてやればいい。
詠唱を使うまでもない、念力で十分だ。
意志の力で事象を改変する念の力、これは思念体達の世界で学んだ技だ。
という事で私は詠唱で障壁に強化を加え、また、余計な邪魔が入らないように私たちを包むように障壁をもう一つ張り、撃ち続けるクォリョをじっと見つめながら脳内の解析結果の脳の図の刻印を消そうと試みる。
「こぉここををんんあああ!!」
「クォリョ! 頑張ってください! 気をしっかり持って!」
効果は目に見えて起こる。
念力の介入を拒絶するように体を震わし、人ならざるモノのような咆哮を上げるクォリョは私に向けていた銃を振り回し、めちゃくちゃにまき散らす。
「きゃ!」
不可視の銃弾は私達を包むように展開された障壁に当たり、爆発し、障壁の中は爆音で揺れに揺れる。
耳障りだが我慢できないモノではないので私は無視したが、モーピォンォは悲鳴を上げて耳を塞ぐ、しかし、この轟音の中でもモーピォンォの視線はクォリョの方を向いて心配なようだ。(透明だがなんとなくわかる) 例え呼びかけが届かずとも叫ぶのをやめる事は無かった。
記憶を覗いたからわかるがこの二人は本当に長い間、世界の間を共に旅してきたようで、その分築いてきた絆も相当なモノだ。
「クォリョーーーーー! 頑張ってーーーーーーー!」
一応あんな様子だがクォリョの脳にはあまり負担はかかっておらず、見た目に比べるとあまり危なくないのだがモーピォンォはとても必死なのでそれを言う必要はないだろう。
さて、刻印も方はゆっくりと綻び、洗脳は解けていく。
このまま、解くだけでもいいがそれだけではまたやられる確率もある、
ここはこの狂った発想に対しての意趣返しに私からの贈り物だ。
まだまだ未熟で生意気なクォリョへのプレゼント、とでも言っておこう。
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静かになったクォリョは少しの間完全に動きを止め、死体のように震えていたが、やがて何度か大きく痙攣した後、ゆっくりと目を覚ました。
「あれ? あたしは確か……」
「クォリョ? クォリョ! クォリョおおおおおおおお!!!」
「ぐぉ! ぷうぇっ!」
喜び抱き着くモーピォンォにクォリョは目を白黒させてまだ状況が分かっていない。
ちなみにモーピォンォを束縛していた生き縄は先程外して、エサをやって少し撫でた後、ビリゥヴァの中にしまっている。
今はこの喜び、目に涙さえ浮かべているモーピォンォの好きにさせよう。
「おういガゼル、来たよ、どの辺?どの辺?」
「来たか、今座標を送る」
と、ここでソゥヲバーリュからの通信が入ったので私の居場所を知らせた。
先程組織について調べてくれると言っていたが、直接来てくれたようだ。
ちなみに私がモーピォンォの記憶を探った時に見つけた組織のシンボルと思われるペンダントの模様や情報も送っている。
それも含めて分析した結果、どうやら直接来た方がいいと判断を下したようだ。
それほど厄介な組織なのだろうか、私はソゥヲバーリュを待ちながら思考を巡らす。
あの不思議なそれでいて何も思う所を何も起こさないように作られているであろうあの模様を意図的に作ったのだとしたら相当大きい組織だろうな。
まだまだ終わりが見えそうにないので私は唐突に初希の事が心配になった。
書置きすら残さずに出てきてしまったが、これだけ時間がかかるなら何かで知らせておけばよかった。
初希は私の事情を知ったているが、それでも心配には思うだろうから。