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作戦と闇、そして撃退

 肉の盾から帰ってくる痛みに耐えながら、私はオンジェヤにマリィコールズを倒す方法を話す。

 時間はあまりないので少しに早口になってしまったがオンジェヤはしっかりと私の話を聞いて、うなずき、理解してくれたようだ。

「さぁ、やるぞ」

「はい、やります!」

 伝え終え、互いに気合を入れる。

 オンジェヤの顔は覚悟をしているいい顔だ。

 私は残った左腕をビリゥヴァに突っ込み、先程出し入れした歪な丸石を再び取り出す。

「行くぞ!」

 オンジェヤにそう言って私はその石に自分の意識を集中させた。

 すると、そこらへんの河原にいくらでも転がっているような丸石の表面から黒く細かいミミズのような何かが無数に這い出し、暖かな金色の空を覆い尽くし、白い草原へと降り注ぎ始める。

 求めに応じて永遠の闇を生み出す石「チョブォプ」、それがこの石。

 何もかもが虚無へと変える原始の世界に落ちていたチョブォブは最初はなんとなく拾ったものだったが、マリィコールズに対して有効な道具として機能する。

 白く穢れを知らない草たちを、闇は黒く染めていく。

 美しい景観が壊れてしまうが、そんな事は気にしない。

 侵食していく闇は草原全土におよび、全てを染めてしまうかに見えた。

 しかし、その中にいつまでも消えない白い草がある。

 いや、それは草ではない、輪郭は無く、ゆらゆらと揺れながらも私たちの元に向かってくるそれは、霧のように音もなく、それでいて素早く動いている。

 あれがマリィコールズに与えられた力の二つの内の一つ。

 中に入ることで外からのあらゆる影響を受けず、しかも移動することが可能で、大きさも自由に変える事ができる、通称、白い闇と呼ばれる霧状の物体だ。

 その数はおよそ百。

 あの白い闇はこの白い草原に見事に同化し先程まで私は全く気付かなかった。

 だが、辺りを違う色に染めてしまえばはっきりとよく見える。

 奴らはあの中に入ってしまうと外を見る事は出来ない、その代わりに外の生体反応を探るセンサーのようなものを持っているので私達の反応へ向かって容赦なく攻撃を加えることが出来る。

 そうして動きを封じておいて近づき、囲んで抹殺する。

 それが奴らのやり方。

 辺りが白いままだったらその作戦はかなりの成果を上げただろうが今は格好の的だ。

 とはいえこのままだとこちらからの攻撃も通らない。

 ならばどうすればいいか。

「生まれいでよ、生きる力よ、脈動せよ、我、詠唱す」

 私は次に詠唱をする。

「疾風よ、光よ、集え、我が身へ、我、詠唱す」

 オンジェヤも続いて詠唱をした。

 私の詠唱によって闇の中に小さな肉の塊が生み出される、いくつも、いくつも。

 オンジェヤの周りには風が渦巻き、さらに光の球がその周りを回っていた。

 私が生み出した塊は全て生きて、脈打っている。

 マリィコールズは生体反応を探るセンサーを持っている。

 そのセンサーのみを頼りにしているのが奴らの弱点だ。

 突然無数に反応が増える、当然何事が、と外を見るだろう。

 マリィコールズの内の大半が白い闇から顔を出す。

 幼い、中学生から小学生程度の驚いたような顔。

「行け、撃滅せよ、我、詠唱す」

 その顔に向かってオンジェヤの周囲を回る風が、光が、降る。

 風は刃となり標的を切り裂き、光は目に留まらぬ速さで呆然とする顔を焼き消していく。

 降った光に焼かれた仲間の反応が消え、様子を見るため顔を出し、風に引き裂かれる。

 風に引き裂かれた同胞を見て呆然とする間に何も分からないまま光によって同胞と同じ運命をたどる。

 続けて何度も、連鎖する。

 愚か者の群れの数は、この攻撃でかなり減った。

 残った奴らは不利を知って、一時撤退とばかりに引き返していく。

 同時にこちらに飛んできていた溶解液も止んだので、私は術を解き、盾にした右腕の残骸をビリゥヴァにしまう。

 奴らが消えるのを待ってから私たちは緊張を解き、一つ息を吐いた。

「何とかなったようだな」

「はい、よかったです、ガゼル様のおかげです」

 オンジェヤは安心して力が抜けたようで、空に身をゆだねている。

「いや、君の詠唱のおかげだ、それと様付けはやめてくれ、私は偉い人物ではないからな」

「ガゼル様、いえ、ガゼルさんの詠唱がなければこの作戦は成り立たなかったんです、だからガゼルさんのおかげです、私の詠唱なんて微々たるものです」

「そんな事はない、オンジェヤの詠唱も同じくらいに必要だったワケだからな、ありがとう」

 謙遜するオンジェヤに私は心から礼を言った。

「お礼を言われる程の事はやっていませんよ、でも一応、どういたしまして、そして、わたしからもありがとうございました」

「どういたしまして、では行くか」

「はい」

 一度微笑みを交わした後、その顔を引き締め、私たちはマリィコールズが退いて行った方向を見る。

「行きましょう、あともう少しで着きます」

 私はオンジェヤの言葉にうなずきを返した。

 さて、邪魔が入ったがやっと久しぶりの故郷か。

 あのマリィコールズの数からするとあの世界の中にまだかなりの数がいるはずだ。

 奴らはいったい何を企んでいるのか。ど

 オンジェヤの後に続いて飛び始め、私は思考を再開する。

 もちろん今度は周りに警戒しながらな。


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