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最初の身体と創造、そして脱出へ

 背中からココココ子がエヂィペンを背負いながら飛び立ち、距離を取る。

 それを確認し、私は一つ深呼吸をした。

 正直に言うとかなり疲れているのであまりやりたくはないが、やらざるを得ない。

 空気を大きく吸い、吐き出し、目を瞑り、脳内に映した探知のマップを一度消す。

 できれば障壁の方も消したいが、それは危ないのでやめておく。

 集中して、私は私の中の世界へと入る。

 少しして、いわゆる精神世界と呼ばれる風景が私のまぶたの裏に現れた。

 と言っても殺風景な青い部屋だが。

 そこに一人の人間の身体を確認して、私は手を触れる。

 この身体は私が長い時を生きる中で移り住んできた体の中で一番最初の、他の身体を作り、移る前の原形の身体だ、今の身体と全く見た目は変わっていないが、世界から作り出されたこの身体は、私が作った身体をはるかに超える力を持っている、しかもいろんな場所を旅するうちに様々な力を吸収し、表に出すにはかなり危険な物となっている。

 私が普段この身体を使っていないのは、世界に及ぼす影響があまりにも大きく、さらにマリィコールズや他の私を狙う連中やら探す人々に容易に見つかりやすいからだ。

 なので普段は自分で作り出した身体を器とし、その中に隠している。

 乗り換える時に作った身体を捨てなければいけないのでいちいち作り直さなければいけないうえに、精神に負担がかかるので、使いどころが難しいのだが、今はその時だろう。

 自分の身体に吸い込まれる感覚の後、再び目の前が暗くなり、体に力がみなぎって来た。

 いや、力が戻って来たというべきか。

 目を開ける、そして私は目の前にいるであろう気配を見据えた。

 詠唱を使わずともそこにいることが分かる、六感が鋭敏になっているためか、知覚能力が高まっているためか、おそらくどちらもあるだろうが。

「久しぶりに来たっ! ガゼルさんのちょっといいとこ見てみたい!!」

 興奮した様子でココココ子が意味の分からないことを言っているが無視しておく。

 この身体に戻ること自体がかなり久しぶりの事だ、ココココ子の前でも一度くらいしかなっていない。

 さて、感慨にふけっている場合ではないな、私が元の身体に戻った事で、ただででさ崩壊により乱れている世界がさらなる混沌を呼ぼうとしているのを感じた。

 具体的に言うなら空間に歪みが生じてあちらこちらに異空間への穴が開き始めている。

 早く済ませよう。

「その姿を我が目に映せ、肉体を形作れ、平伏し服従させよ、我、世界に要求し、詠唱す」

 長めの詠唱を放ちながら私は目には見えない気配を感覚で範囲を把握して捉える。

 すると、世界が崩壊しながらも私の詠唱に答え、私の前に肉体を作り出し、その中に大きな気配を閉じ込めてゆく。

 その肉体は私が要求したわけではないが幼い子供の姿を形作り、気配を吸い込み、命が吹き込まれたかのように動き出す。

 浅黒い肌、それと対照的に白い髪、肉体は幼く、性別は判別しない。

 気配を吸い込みながらも断続的に痙攣し、その肉体の中の心臓が動いている音が私の耳に届く。

「あの気配から新たな生物を創造するなんて、あの力……お父さんは何者なのかしら?」

 何者、も何も長く生きた元世界探索者で今は穏やかな生活を送るただの人間だ、とエヂィペンの呟いた小さな声に心の中でそう返し、気配を吸い込みきった肉体に近づき、その体を抱く。

「さあ行くぞココココ子、エヂィペン! 脱出だ! 掴まれ!」

「さすがガゼルさん! さあエヂィペンさん、行きますよぉ!」

 呼ぶとココココ子はエヂィペンを小脇に抱え直し、こちらを吹き飛ばしかねない勢いで衝突し、私の首に腕を回してくる。

 そんな勢いでぶつかられてもこの身体はびくともしないので、勢いそのままに出口へと急ぐ。

 後ろで響く、ドラゴンの憎悪がこもった咆哮を聞きながら、私達は未開領域と世界の狭間の境界の黒いもやの中へと突入した。

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