全裸と不調、そして洞窟
人形達の名前は後でつけると約束して、山の中の情報を受け取る。
かなり広い山だが、その分人形も出したし、使い魔も放っていたので、山の中の事は大体網羅できた。
私達はあまり会わなかったが、この山に住む生物の情報もしっかりと人形達が記録してきてくれたので、これで危険は減っただろう。
そして、情報の中にこの山にはいくつか洞窟がある事が分かった。
外側を一通り探してもいなかった、だとしたら内側しかないだろう。
「なので洞窟を目指す、わかったか?」
「わかりました! どうくつかぁ~なんだか探検って感じがするなぁ」
これからの行き先を話すとココココ子がワクワクした様子で答えた。
先程まで死にかけていたのに大した精神だ、ここで逃げるとか言い出さないのはココココ子のいい所だな。
となると人形はあまり必要なくなるな。
洞窟までの情報はもらったし、出しておくと魔力を消費する。
一人くらいは出しておいてもいいが、それ以外はしまってしまおう。
「アアル以外は戻れ」
私が思念でそう告げるとアアル以外の人形は皆頭を下げ、
「「「「「わかりました、おやすみなさい、ご主人様」」」」
と大体そんな意味の言葉を言って、私からの魔力の受け取りを止め、目を瞑る。
人形達を片っ端からビリゥヴァにしまい込み、これで準備は整った。
「さあ行くぞ、ココココ子、アアル」
「かしこまりまっした、ご主人様」
歩き出す私の言葉にアアルが一礼して続く。
「いや、ちょっと待ってくださいガゼルさん!!」
しかし、ココココ子は待ったをかけた。
何だ?まだ何かあったか?
振り向くとココココ子がしゃがみながら私を上目遣いで見ていた。
その姿を見て私は思い出した、ココココ子は先程のドラゴンのブレスで一度ただの焦げた肉片になって、それから身体を再生している、という事は、
「その……服を貸してください」
今、ココココ子は一糸まとわぬ姿、つまりは全裸だった。
私は親代わりで彼女を育てたため、少し大きくなったな、程度にしか思っていなかったが、その豊満な肉体は世界の人々をさぞ魅了する事だろう、親のマリィみたいに。
私は娘の成長を感じて、嬉しく思った。
「何ですかその顔? お~~いガゼルさん! 聞いてますか? ちょっと!」
・
洞窟にはもちろん灯りなどなく、妙に赤いもやに包まれていた。
「照らせ、世界を、我、詠唱す」
そう唱えて光の球を生み出し、辺りを照らすと赤いもやの向こう側が多少は見通せるようになった。
「うっぷ、おええええ、ガゼルさん、ちょっと休ませてください」
後ろをかなり調子の悪くなったココココ子がついてくる。
それもそうだ、ココココ子のつけていた仮面もドラゴンのブレスで吹き飛んでいて、今、ココココ子を守るものは私が貸したジャージしかない。
貸したはいいが、前のチャックを占めているので胸のあたりがすさまじく伸びているから、私はもう使えないだろう。
そんなココココ子が未開領域の空気を吸い続けたら調子が悪くなるのは当然だった。
私がつけていた仮面もドラゴンのブレスのダメージでかなりひびが入って上半分くらいは崩れ落ちているが、まだ口元部分の機能は使えている。
仮面のストックが私の見当違いでこれきりだったのは痛い。
体調が悪化しないように詠唱で回復させているが、未開領域の空気は思った以上にココココ子と相性が悪いモノだったようだ。
「少しこのあたりで休むか、ここならドラゴンに見つかる事はそうないだろうし」
「はい、ありがと……うぶるぉえええええええええ」
その場で盛大に胃の中の物を戻すココココ子のあまりの女らしさのなさに私は思わず苦笑いする。
しょうがないので洞窟に少し入ったところで休憩することにした。
アアルにココココ子の介護をさせて、私は探知の範囲を洞窟の奥の方へと伸ばす。
かなり奥の方に何個か生物の反応があるので、この洞窟の中へ行ってみることにしよう。
目を向けると未だに調子の悪そうなココココ子がまた胃の中の物を外に出していた。
そこで私はおかしなことに気付く。
ココココ子は体のほとんどを焼き尽くされ、体の外側の服どころか体の内側までだ。
ではあの口から吐き出されたものは何だ?
それにいくら空気が気持ち悪いからと言ってもあそこまで体調を崩す事は無い。
まさか、ココココ子の身に何かが起こっているのかもしれないのか?
思わず立ち上がり、ココココ子が口から戻したものを見てみる。
そこには胃液と、色とりどりのぐちゃぐちゃに混ざり合った何かが飛び散っていた。
「な、んだ、これは」
明らかに口から出てはいけないようなそれにをみて言葉を漏らし、私はココココ子の顔を見た。
これは本当に危険な状態ではないのか、そう思ってだ。
しかし、ココココ子は自分の吐き出したものを見た私を見て、
「いやぁ、胃の中の物が何もなくなっちゃったんで落ちてたおいしそうな果物食べてみたんですけど失敗しましたねぇ」
と言いながら、あはは、と笑う。
その顔を見て、私は無言でココココ子の脳天に拳を振り下ろした。




