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爆破と山、そしてコィモ

 謎の生物においしく頂かれたココココ子を助けるために、私はあらかじめ発動手前で止めておいた詠唱を発動した。

 といっても起こすのは足元からの小規模の爆発。

 それでも怪物一人吹き飛ばすには十分なくらいの威力だ。

 腹の中のココココ子にももちろん爆発は及ぶが、やはりそこは普通の人間と違うので傷一つつかない、なのでためらわなくていい。

 それに勝手に突っ込んで食われたのだから、少しは反省してもらわなければならない。

 仕置きの意味を込めて、私は詠唱を発動した。

 軽い爆発が起き、怪物は、ぎゃひぃ、と悲鳴を上げあっけなく四散した。

 飛び散る蛭のような物の張り付いた肉片と緑色の液体を服につかないように詠唱で風を吹かして軌道をそらし、生命反応が消えたか、一応脳内に展開された探知詠唱のマップで確認すると、消えていた。

 爆発で舞い上がった砂埃は、爆発の規模が小さいこともあってすぐに収まる。

「けほっ、けほっ、ああ~びっくりした~」

 そして中から傷一つないココココ子が出てきた。

 傷はないが、怪物の体液やら肉片やらでかなり汚れている。

「不用意に飛び出すからそうなるんだ、もっと警戒しろ」

「ごめんなさい、雑魚そうだったからこれならわたしでも余裕かな~と思って」

「……お前はよく今まで生きてこれたな」

「へへへ、しぶとさがわたしの取り柄だからね」

「褒めてない」

 呆れてため息をを一つ吐いた。

 こいつは私の元を離れてからどんな生活を送って来たんだ?

 より一層教育の必要が出てきたことに、頭が痛くなった。

 怪物の残骸をお土産として瓶詰にして、ビリゥヴァにしまってから私達は山に向かう。

 遠くから見ると扇形に見えた山は、ひっくり返した山の形をしていた。

 重力に逆らったような形の山はどうしたらこんな形になるのか大いに気になる所だが、今は未開領域の捜査ではなくてマリィによく似た怪物探しが目的なので、調査はしない。

 帰ったらこんな場所にもう一度来ようとは思わないので、調べる機会は実質もうないが、特に調べる事をお願いされているわけでもないので、別にいい。

 さて、山に入っていくワケだが、この反転した山は、完全に植物で覆われていて、さらには角度九十度以上の地面にかなりの数の生物の反応がある。

 人の立ち入らない山は当然道は無く、密集して生える木のようなものは人の侵入を拒んでいるようにも見え、実際に人の足で歩いていくのは困難そうだ。

「この中に入っていくんですね。うわ~うっそう~」

「どのへんで見たとか聞いているか?」

「いや、そこまでは、話す前に力尽きてしまったので」

「う~んなら反応をしらみつぶしに探すしかないか」

 頭の中の反応はかなりの数なのであまり気は進まないが、行くしかないか。

 その前にある程度の準備は必要だ。

「ココココ子、障壁を張っておけ、あと身体能力強化もな、そのくらいは出来るな?」

「もぉ、子ども扱いして、そのぐらいできますとも、わたしだって成長したんだから」

 仮面の向こうでおそらくむくれた表情をしながら、ココココ子は私に言われた通りにしていく。

 成長した、というならあんな不用意に突っ込まないでほしいのだが。

「堅牢な壁よ、我が身を守り給え、ガーディアブル!」

 どこぞの世界で習ったのであろう呪文を唱えてココココ子は障壁が展開していくのを見ながら、ビリゥヴァの中から大きめな瓶を取り出す。

 山に生えた木のようなものを少し採集してみようと思ったワケだ。

 世界管理官の中に友人が、そちらに回して未開領域の解析に役立ててもらい、恩を売っておこう。

 という事で木のようなものを触ると同時に解析の魔法を使って調べてみるつもりだったが、がりがりと障壁を削られるような感覚が伝わってきた。

 構わずに魔法を行使すると、この木のようなものの表面に露出している所は全て口であり、触れた物が何であれ噛みつき貪り食うらしい。

 だとしたら山の中の生物はどのように生活しているのか。

 それはともかくこの山の中に入っていくには、人の足ではこれらに常に貪られながら進まなければならなそうだ、となると魔力の消費が激しくなるな。

 この未知の場所で魔力切れになるのはかなり危険なので、これらを先に何とかしなくてはならないな。

 とりあえず、木を枯らす薬でも撒いてみるか。

 私は障壁を貪る木のようなものから手を放し、ビリゥヴァの中に突っ込み、目当ての薬を探す。

 そういえばこの木のようなものにはまだ誰も名前を付けていなさそうだな。

 なら私が名付けてもだれも文句を言わないだろう。

 そうだな……コィモ、でいいか、これからこれをコィモと呼ぼう。

 貪り食われないようにコィモを一本異空間に収納した。

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