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感動の再会と解放、そして帰還

「所で久しぶりのこっちの世界なんですけど何でわたしはこっちに呼び出されたんですか? まさかガゼルが寂しくなって……とか? だったら嬉しい、嬉しいですね! 今の時点でとっても嬉しいですけどもそれ以上に嬉しいですね、っていうかここはどこですかね?」


 巨眼の事など全く眼中になく、マリィはあっさりと私に向かって話を再開した。

 ここまで苦戦した巨眼が嘘のようにあっさりといなくなって、戦いは終わったのだ。

 そう思うと私の脳裏にマリィコールズとの長きにわたる因縁の記憶がよぎった。

 あの日、目覚めたマリィが世界全てを滅ぼしかけ、私がその時の仲間達と共に眠らせ、別世界へと送った時に全てが始まった戦い、いくつもの世界を旅する間に巨眼とは無数の戦いがあった。

 時に正面からぶつかり、時に姿も見えない世界を越えた距離をまたぎの超長距離での戦闘をしたり、一番厄介だったのは世界管理官統括長選挙の裏での謀略、騙し合いだったな。

 長きに渡る戦い、そのどれもが私を煩わせた。

 さて、後は後始末か。


「おかあ、さん、なんですね?」


 ココココ子の震える声、それはマリィの美しさに対する動揺ではなく、母親に会えた事への純粋な感動だ。

 マリィから生まれたココココ子はマリィの美しさでは終焉を迎えないのか。

 そういえばココココ子にはマリィを呼び出す事は一切言っていなかったな、そもそもココココ子がここまで追いかけてくる事自体が想定外であったからだが、後で会わせる予定だったので変わらないか。

 マリィはココココ子を見て首を傾げ、眉根にしわを寄せたようだがやがて手を叩いて目を見開いた。


「ああっ! ココココ子! 大きくなったのね! きれいになったわ! うふふふふ、おいで!」

「おかあああさん!!」

「ココココ子ぉ! ぐふっ!」


 マリィの広げた腕にココココ子が飛び込んでいく。

 感動の再会、だが勢いが強すぎてマリィが口から液体を吐く、感動のあまりに加減が出来ていないな。

 さて感動の再会を邪魔するのは悪いが、マリィの美しさが周りの世界に影響を及ぼす前に処理をしなければ。

 幸い頂上世界の上や横に並び立つ世界はない、下に世界が広がるのみだ。

 今の内に、私はビリゥヴァの中から一つの指輪を取り出した。


「マリィ、これを着けろ」

「へ? へぇ!? ガゼル、ガゼル? ガゼル! プロポーズ!? そんないきなりだなんて……」

「違う、お前が及ぼす影響を抑えることが出来る道具だ」


 このタイミングでプロポーズするヤツなんていないだろう。

 だが、マリィを見た人間は皆美しさに固まって死ぬか、多少耐えられたとしても賛美の言葉しか口を突いて出ないから、マリィ自身あまり人間の事を知る機会がないし、そんな反応になっても仕方ないか。

 これからは狙われる事なくこの世界で生きていけるのだ、学んでいけばいい。

 というかそもそも私には彼女がいる事は伝えてある筈なのだが。


「へ? なっなんだ、違うのですか、ですがそういう事ならはめます、ください」

「ほら、これだ」


 指輪を投げる。

 それをマリィはキャッチして右手の人差し指にはめた。

 すると世界を終わらせる程の美しさはすぐに一目見れば見惚れる程度の美しさになり、常人が直視しても死なない位にはなった。


「さて、マリィ、私が何故お前を呼び出したのか、だが、それはその美しさを抑える道具が完成したのと、お前を狙って世界達すら利用する奴を倒したからだ」

「え? じゃあわたしはこれから自由に生きられるんですか? やっと……わたしは寂しさから抜け出せるんですね?」

「そうだ」

「わたしを狙ってるとかいう気持ち悪い誰かを気にしないでいいんですね?」

「ああ、というかさっきお前が適当に散らしたあれがその誰かだぞ」

「へ? なんか拍子抜けでしたけど、あの程度の存在がわたしを向こうの世界に閉じ込めてた原因なんてあんまり信じられないんですけど、まあいいです、それよりも自由が……手に入ったのですから」


 はめた指輪を撫でて眺めて感慨深げにマリィは言う。

 そういえばマリィを隠してからどのくらい時間が過ぎただろう。

 まあ、今はそんな事いいか。


「こんな所で話してないで、一旦どこかに移動して落ち着くとしよう」

「そうですね、ガゼル、この辺りは何かじめじめしていますし、ほら、わたしの胸元、濡れていますよ」

「お母さん、それわたしの涙ですよ!」


 うながしてから私は気づいた、そういえばマリィのこちらの世界での住まいを準備していなかった事を。一時的であれば私の世界のすぐ近くでいいが、その後、マリィの性格からしてこちらの世界達を回りたいであろうし、個人的なしっかりとした住まいが必要であろう、そのために世界達の知識が必要となる。

 私の家は生憎と初希の部屋と私の部屋以外は共有スペースで場所がない。

 いや、そうか、その辺はココココ子に任せればいいか、一人前になった事だし、正真正銘の親子だ、その辺の機微も通じ合っているからわかるだろうし。

 私は帰る、世界へと。

 戦いは終わった事だし、もうそろそろ穏やかに暮らせる事を祈るとしようkか

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